owarai

No Picture

女性の芸人への「エロいじり」、直面した相方が感じた「なぜ個性ではなく、『女』をキャラにされるのか」

お笑いコンビ「カフカと知恵の輪」

若手芸人の小保内太紀(おぼない・たいき)さんが6月15日にツイッターに投稿した文章が話題になっている。

小保内さんは芸歴4年。今春からは知恵の輪かごめさんと「カフカと知恵の輪」というコンビを組んでいる。

ツイッターに投稿したのは「ある日起こったこと」という文章だ。

その文章は、複数の芸人が登場する舞台にコンビで出た際、女性の相方に対して複数の男性芸人から「エロい」という「いじり」が続き、それに怒った小保内さんに対し、他の芸人から「人によって色んな価値観がある」「NGなら最初に言っておくべき」などと反論が出たという内容だった。

文章が拡散されると、小保内さんの考えに否定的な意見から、「色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならない」という小保内さんの発信に共感する声なども寄せられた。

今回のことで何を感じたのか。小保内さん本人に聞いた。

ある日起こったこと pic.twitter.com/V8NA3yJfTD

— t.obonai カフカと知恵の輪 (@twobonai) 2019年6月15日

■「女である」ことが「キャラクター化」されてしまう

小保内さんは、この「ノリ」のきっかけは、他の芸人から「(小保内さんの相方が)頭いいと思ったらエロく見えてきた」というような発言があったことだったと振り返る。相方は京大生で、小保内さんも同大院の卒業生だ。

そこから7人ほどの男性の芸人から相方への、「エロい」「エロく見える」などという発言が続いていったという。

「セクシャル」なふりをした訳でもないのに、こうした「いじり」が続くことは「ハラスメントだ」という憤りがあったが、怒った理由はそれだけではなかった。

小保内さんはこう説明する。

「芸人って『〜〜に詳しい』『神経質』とかキャラクター化されることも多い。それは分かりやすいし、面白いと思っています。でも、今回はなぜ、相方の個性の部分じゃなくて、『女』としてくくられたのか」

男女コンビを始めてから感じていたこともあった。

「女性が舞台に上がると『女芸人』とくくられてしまうんですよ。お笑いにおいて女性が少ないという男女比率的なこともあって、『女である』がキャラのように扱われてしまうと感じていました」

小保内太紀さん

 ■「色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならない」

Twitterでの小保内さんの「色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならない」という発信に対しては、そういった笑いを望む共感の声が上がっている。

「人によって色んな価値観がある」「エロいじりがNGなら最初に言っておくべき」など(共演した芸人から)反論されましたが全部大きな間違いです。色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならないし、エロいじりをするなら事前に許可を取れ、が正解です。

(小保内さんのツイートから)

「この時に言われた『色んな価値観がある』というのが、『俺と同じ価値観になれ』という意味だと感じたんですよね」

「様々な価値観がある時に、他の価値観の存在を受け止めた上で、互いの自由のスペースを調整していくことが大事だと思います。なので、そこで『相互承認』につながらない『他者の尊厳を傷つける自由』は存在できないはずなんです。例えば、『人を殴りたい』という自由が『殴られない私をくれ』という自由に優先することはないんじゃないでしょうか」

「カフカと知恵の輪」のロゴ

 ■お笑いの技術の問題なのか?

小保内さんの発信に対して、「エロいじり」がダメなのではなく「いじる際の、技術不足だったのでは」という指摘もネット上で出た。

そこにも小保内さんは疑問を持っている。

「ウケる角度を探す視点も技術じゃないですか。安直な下ネタを続けるとお客さんは引いてしまうので、そもそも『エロいじり』を続けるというのはお笑いの技術として違うと思ったんです」

「笑いを取ろうと思って、何かに踏み込んでいくことは絶対必要なことだと思うんですよね。色んな方法や話題を試してみて、ミスったと思ったら下がることが大切だと思っています。僕も過去にやり過ぎてしまったことはあるので…撤退する勇気みたいなものも大切だと感じました」

ただ、今回のことで実感できたこともあるという。

この出来事を友人の芸人たちに話した際、そういった「いじり」について、「まだやんねんや」「さすがに引く」などという反応が上がり、変化を感じた。

「『これを言ったらウケない』『立場がなくなる』というラインは存在する。そこで『昔は良かった』じゃなくて『今のニーズはこっちだ』とかじを切れるのが大切だと思いました。そういった構築主義的な姿勢によって、時代を変えるスピードを速められるんじゃないかと感じました」

 ■賞レースに刺激を受け、志した

小保内さんは、「M-1グランプリ」などのお笑いの賞レースに刺激を受け、芸人を志したという。

「色んな芸人さんが毎年、工夫をして新しいものを生み出して競っている感じにクリエイティビティを感じました」

まだ若手の芸人だ。これからどう活動していきたいのか。

「意図と目的とやる意義がある、自分でなければできないお笑いをやりたい。お笑いというジャンルに対して、何らかのオルタナティブとなるものをやっていきたいと考えています」

小保内太紀さん

■小保内さんの発信の全文

 

 

Read More

No Picture

平成のお笑いシーンを振り返る。令和に活躍する芸人は? ドキュメンタル最新シーズン開始!

YouTubeの登場や各種SNS時代の到来により、お笑い芸人をとりまく環境が変わった平成の終わり。令和時代には、どんな笑いがもてはやされるのだろうか。

『教養としての平成お笑い史』を上梓したお笑い評論家のラリー遠田氏、多くのバラエティ制作者を取材するマイナビニュースの中島優氏、様々なお笑い芸人のパーソナルインタビューを担当している編集者の小沢あや氏による、鼎談を実施し、平成のお笑いシーンを振り返る。

左から小沢あやさん、ラリー遠田さん、中島優さんラリーさんは昭和54年、小沢さんは昭和62年、中島さんは昭和58年うまれ

バラエティ番組の変遷

ラリー遠田
平成が始まってしばらくは、ネタ・コント番組が主流だったんですよね。それがだんだん終わって、『めちゃ×2イケてるッ!(平成8〜30年)』のようなロケバラエティが出てきた。そこから、お笑いバラエティの作りがちょっと変わったんですよね。

中島優
『めちゃイケ』も、初期はコントやってたんですよね。でも、鉱脈はそっちではなかったことに気がついてやめた。ドキュメントバラエティの代表格である『電波少年』の土屋敏男さんが「フジテレビのコントのDNAにうまくドキュメント性を合わせた番組」だと話していました。テロップや効果音を使った、スタッフから演者へのツッコミも新しく、『アメトーーク!(平成15年〜)』『ロンドンハーツ(平成11年〜)』の加地倫三さんなど、多くの制作者が影響を受けたと言っていました。

小沢あや
岡村さんがわちゃわちゃしているところにBGMが流れて「ここ、面白いところ!」って強調してくるのもよかったですよね。小学生でもわかりやすかった。

中島優
僕とラリーさんはダウンタウンさんに衝撃を受けた世代ですけど、小沢さんは何の番組が好きでしたか?

小沢あや
『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!(平成8〜14年)』が印象的でした。芸人さんが、社交ダンスとか演奏、別の領域でチャレンジする企画が多くて、芸人さんを人として好きになれる番組でしたね。今はSNSがあるけど、当時はネタがメインの番組が多くて、パーソナルな部分が見えてこなかったんですよね。『ウリナリ!!』で、それまではスターだった芸人さんへの「共感」「応援」が広まったような気がしています。

ネタの尺とテンポの変化

小沢あや
ネタ番組でいうと、2000年代に短いネタでポンポン見せていく時代がきましたよね。

中島優
お笑いの尺を変えたという意味では、『爆笑レッドカーペット(平成19〜26年)』の影響が強いですよね。やっぱり。

ラリー遠田
原点は多分『エンタの神様(平成15年〜)』。編集でネタをぶつ切りにして面白いとこだけ繋いだり、笑いを足したりとか、従来だったらできなかったようなことをやって。それで視聴率取ったから、どんどんネタのテンポが上がっていった。『M-1グランプリ(平成13年〜)』など賞レースは、その反動でじっくりネタを見せたいというとこから生まれた番組ですよね。

SMAPがつくった新たなジャンル

アイドルと芸人はライバル関係にあった

ラリー遠田
平成のお笑いで欠かせないのは、SMAPの存在。バラエティやるアイドルって初めてで、当時はすごい衝撃的でした。

中島優
『ダウンタウンのごっつええ感じ(平成3〜9年)』が終わる頃って、ほとんどコント番組はなくなっていました。その中で『SMAP×SMAP(平成8〜28年)』がコントやったらウケたっていうのは、すごいことですよね。

ラリー遠田
ジャニーズタレントって、総合力高いんですよね。演技もできるし歌もできるし、ばかなこともできる。たけしさんも、すごい昔から警戒心を抱いていたらしいんですよ。たけし軍団にも「ジャニーズがお笑いやり始めたら、太刀打ちできない。今のうちに芸を磨け」って言ってたみたいで。

小沢あや
逆に、お笑い芸人さんたちが俳優や歌手として活躍することも増えましたよね。『人生は上々だ(平成7年)』では浜田さんと木村さんが共演して。

ラリー遠田
さんまさん、たけしさんが先駆者で、平成に入って「お笑い第三世代」とんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンが出てきた。その辺の人たちの特徴って、とにかくみんなビジュアルがかっこいいんですよね。それまでの芸人のイメージを覆した。

中島優
ダウンタウンさんなんて、大阪時代に歌だけでお笑いを全然やらないライブがあったそうですから(笑)。

小沢あや
思えば、みんなCD出してましたね。とんねるずも、野猿で連続ヒットを飛ばして、ウンナンもブラビとポケビをやって。全部買ってました!

ラリー遠田
平成は、アイドルが芸人化し、芸人がアイドル化した。よりボーダレスになってきたっていうことですよね。

女芸人のあり方も変わった?

F-1層に支持される女性芸人は?

小沢あや
平成の間に女芸人のあり方も変わって、多様化してきましたね。

中島優
平成の女芸人で一番成功したのは、山田邦子さんですよね。『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ(平成元年〜4年)』とか、いわゆる総合バラエティで冠を持った女芸人は、後にも先にも邦子さんしかいない。

ラリー遠田
祭り上げられてたから、不倫報道後は反動もすさまじくて。一時期好感度1位まで行ったのが、どん底まで落ちた。やっぱりガラスの天井があるのかな。女性は男性の中に1人だけいると紅一点でちやほやされるんだけど、ある程度まで出てくるとめちゃくちゃ叩かれる。今もまだそれがあるから、ガンガン出てくる人っていないですよね。

小沢あや
つらいですね……。今は、女性に好かれる芸人が活躍しているように思います。光浦靖子さんとか、渡辺直美さんとか。

ラリー遠田
生き方自体が憧れの存在になると、バッシング受けにくいですよね。昔のバラエティって、結局男が作って男が見てたんですよ。今は女性側の視聴者のほうが分厚いから、制作サイドも「女性に共感してもらえる存在」として女芸人が重宝されてる。僕は最近はAマッソが好きなんですけど。

小沢あや
私も大好きな女芸人さんいっぱいいるんですが、声を大にして推したいのは阿佐ヶ谷姉妹です。ネタも、自虐はしつつも周囲を攻撃せず、自分たちの生活を肯定していて上品。彼女たちが「安心しておばさんになってください」と言ってくれることが希望というか、すごく今っぽいなと。ちょっと先を行く女の先輩として、私にとってスターなんです。ロールモデル。

ラリー遠田
女性芸人がテレビに出ると、「ブス」「モテない」とか、分かりやすい役柄をやらされるんですよね。でも、阿佐ヶ谷姉妹はそういう圧から自由になってる。

小沢あや
そうなんです。他の芸人と過激にやりあうこともなく、ありのままの彼女たちが受け入れられていることに、安心感があるんです。スピード勝負の最近のお笑い界の中では異質で、テンポもおっとり。『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝して、ちゃんと結果も出している。かっこいいです。

令和時代の笑いはどうなっていく?

芸人の働き方も多様化するのでは? と盛り上がる

ラリー遠田
平成は、ネットメディアやYouTube、BSやCSなどいろんな場所ができて「自分の好きなフィールドで戦えばいい時代」になったと感じます。令和時代は、それぞれのメディアに合わせた新しいコンテンツがいろいろ生まれて、お笑いの土壌としては、かつてないほど豊かになると思いますね。

小沢あや
マスに向けた笑いではなく、狭いジャンルでウケる人がたくさん出てくると思います。活躍の場が細分化して、今よりもっとプロアマの境目が薄くなると思うんです。芸人が複業をやるんじゃなく、複業で芸人をやる人たち。「情シスあるある」みたいなネタをやるエンジニア芸人とか、出てくるかも。

中島優
しゅんしゅんクリニックPさんみたいな感じですね。僕は、芸人さんになるハードルが下がるんじゃないかなと思うんです。今はお笑いの養成所に行くのが定番パターンだけど、YouTubeとか、見つけてもらえる機会がたくさん出てきたじゃないですか。学費のハードルもないし、仕事しながらでもできる。それに、タモリさんとか所ジョージさんみたいな、弟子入りでも養成所出身でもない異質な存在が出てくると面白いですよね。

テレビからインターネットへ、は本当?

中島優
「若者のテレビ離れ」というけれど、結局YouTubeで違法アップロードされたテレビ番組を見てたりしますよね。だから、テレビもラジオにおけるradikoみたいにタイムシフトでどこでも楽しめるようなな無料アプリができたら、みんなもっと見ると思うんですよ。お金かかってて良質ですからね。

ラリー遠田
昔の地上波は、ゴールデンはみんなが見る番組、深夜は誰も見てない番組。深夜なら好きなことやっていいよって感じだった。今は深夜がゴールデン化してるから、過激な番組が押しやられちゃってるんですよね。それがウェブに流れてる。

小沢
ネット番組は、視聴者だけでなくスポンサーを意識しなくていいのが強みですよね。Amazon Prime Videoでやっている『戦闘車(平成29年〜)』も、自動車メーカーがスポンサーについている地上波ではなかなかできないですよね。ダウンタウン好きなおふたり、『ドキュメンタル(平成28年〜)』シリーズはどうですか?

ラリー遠田
ドキュメンタルという企画自体が、松本さんのこれまでのお笑いの集大成みたいなとこありますよね。松本さんは芸人としていろんな面がありますが、「笑い」自体を誰よりも考え詰めてる。人はどういうとき笑うんだとか、こういう状況を作ったらより笑えるのではないかみたいなのを、まるで科学者がビーカーで薬品を混ぜて実験するかのようにやってる。松本ラボですね。

中島優
スタッフの心意気もすごいですよね。春日さんが局部からミニチュアのカレーライスを出す場面があったんですけど、「どうにかカットせず使ってやろう」という気持ちが伝わってきました。「綺麗に隠すために、映像も軍事技術を使ったんだ」と、総合演出の小松さんに聞きました(笑)。

小沢あや
前シリーズは女芸人さんがいっぱい出ていて、どう戦うのかと思ったらまさかのゴリゴリの体張り芸で、ハラハラしながら見てたんです。でも、潔く体を出しちゃうゆりやんさんがいるなか、森三中黒沢さんは肌色のタイツを下に着用していたんですよ。体張るのも、それぞれ自由な範囲でやっていることがわかって安心しました。

新シリーズで活躍するのは誰?

ーー今回は雨上がり決死隊宮迫さん、たむらけんじさん、ハリウッドザコシショウさん、小籔さん、フットボールアワー後藤さん、東京ダイナマイトハチミツ二郎さん、ザブングル加藤さん、千鳥ノブさん、トム・ブラウンみちおさん、霜降り明星せいやさんの10人が挑戦します。どなたに期待をされますか?

ラリー遠田
やっぱり、ルーキーとして期待するのは霜降り明星のせいやさん。

小沢あや
いま一番の注目株。せいやさん、基本スタイルは漫才ですけど、ネタの中でとにかくボケまくりますからね。動きも派手ですし、短い時間でどんどん仕掛けてきそうな気がします。

ラリー遠田
せいやさんは、笑いのポテンシャルがとにかく高い。僕の中ではポスト岡村隆史です。器用なのに、ちょっと抜けてる感もあるんですよ。逸材です。

中島優
僕は、ザブングルの加藤さんかな。『さんまのお笑い向上委員会』で独特の存在感を放っていますが、周囲を巻き込む感じがあるんですよね。宮迫さんも、扱い方慣れてると思うんで。無理に絡もうとしないとは思いますが、楽しみです!

10人の芸人が繰り広げる笑わせ合いバラエティ『HITOSHI MATSUMOTO Presentsドキュメンタル』。参加費1人100万円、制限時間6時間。優勝賞金1000万円の基本ルールは変わらず、シーズン7ではまた新たなルールが追加される。初出演となるのは、昨年のM-1チャンピオンである霜降り明星 せいや、同じくM-1で爪痕を残したトム・ブラウン みちお。そして、「くやしいです」でおなじみのザブングル加藤、さらに吉本新喜劇の人気座長である小籔千豊までもが満を辞して登場する。Prime Video随一の超人気バラエティ番組、最新シーズンは4月26日より配信開始。


No Picture

『M-1グランプリ2018』決勝進出者9組は? 優勝候補の筆頭は和牛とスーパーマラドーナ

「M-1グランプリ2018」決勝進出者9組

12月2日(日)午後6時34分から、漫才日本一を決める『M-1グランプリ2018』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の決勝戦が放送される。

エントリー総数4640組のうち、予選を勝ち抜き決勝に駒を進めたのは以下の9組。さらに敗者復活戦の勝者1組を加えた10組が決勝で争うことになる。

霜降り明星
スーパーマラドーナ
トム・ブラウン
和牛
ギャロップ
見取り図
かまいたち
ゆにばーす
ジャルジャル

(エントリー順)

ファイナリスト9組を紹介しながら、決勝の見どころを紹介したい。

『M-1』決勝進出者は?

9組の中で決勝進出経験があるのは、ジャルジャル、スーパーマラドーナ、和牛、かまいたち、ゆにばーすの5組。いずれも2017年の大会でも決勝に進んでいる。

決勝経験組の中でも優勝候補の筆頭と言われているのが、和牛スーパーマラドーナだ。

この2組は『M-1グランプリ』が休止期間を経て復活した2015年以降、3年連続で決勝に進み、常に優勝戦線に絡んでいる。特に和牛は2016年、2017年と2年連続で準優勝という結果に終わり、あと一歩のところで涙を呑んでいる。

和牛(2006年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

和牛

和牛は、理屈っぽいボケの水田信二と柔らかいツッコミの川西賢志郎のコンビ。それぞれの個性を生かした多彩なネタを持っている。

『M-1グランプリ』では序盤に伏線を張って終盤にそれを回収するような構成力のある漫才を見せることが多く、技術・発想ともに高く評価されている。ライブシーンの若手芸人の中では圧倒的な人気を誇っているのだが、決してその立場に安住せずにネタを磨き続けている。

スーパーマラドーナ(2003年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

スーパーマラドーナ

スーパーマラドーナの武智は『M-1グランプリ』に並々ならぬ情熱を燃やしている芸人の1人だ。

「誰よりも『M-1』のことを考えている」と公言し、ネタ作りに打ち込んでいる。一方の田中一彦は、『M-1』にもお笑いにも興味がなく、やる気ゼロ。この激しすぎるモチベーション・ギャップが彼ら独自の色になっている。

かまいたち(2004年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

かまいたち

優勝争いでこの2組に続きそうなのが、かまいたちとジャルジャルだ。かまいたちは2017年の『キングオブコント2017』でも優勝を果たしているため、『M-1グランプリ』で優勝すれば前人未到の2冠達成となる。

漫才とコントの「二刀流」を高いレベルでこなせる芸人はめったにいない。かまいたちは「感情を爆発させる」という賞レース向きの漫才を得意としているため、優勝も十分射程距離内にある。

ジャルジャル(2003年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

ジャルジャル

ジャルジャルは、2017年の大会でゲームのような掛け合いを演じる独創的な漫才を披露して見る人の度肝を抜いた。10組中6位という結果に終わったものの、審査員の1人である松本人志は最高点をつけていたし、「一番面白かった」という感想を残す視聴者もいた。

彼らは今年もセオリーにとらわれない革新的な漫才を用意している。勢いに乗れば優勝もありうる。

ゆにばーす(2013年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

ゆにばーす

ゆにばーすの川瀬名人も、スーパーマラドーナの武智と並んで、『M-1グランプリ』への情熱を公言する芸人の1人だ。「優勝をしたら芸人を辞める」と言っているほどだから、その熱量は桁違いである。『M-1グランプリ』の傾向と対策を徹底的に研究した彼の努力は実を結ぶのだろうか。

トム・ブラウン(2009年結成、ケイダッシュステージ)

トム・ブラウン

初決勝組の中では、トム・ブラウンに注目したい。

2人が一緒になってふざけて暴走する、実質的に「ツッコミ不在」の漫才が特徴的だ。幼稚園児がクレヨンで描いた落書きのような、自由奔放で力強い漫才である。型にはまったときの爆発力は他の追随を許さないだろう。

ギャロップ(2003年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

ギャロップ

見取り図(2007年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

見取り図

霜降り明星(2013年結成、よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

霜降り明星

もちろん、大阪の劇場では「スベリ知らず」と噂される実力派のギャロップ、とぼけた味わいのあるツッコミが魅力的な見取り図、よしもとの若手で期待度No.1の霜降り明星も、それぞれに強みを持っている。

 ◇

『M-1グランプリ2018』審査員は?

2018年の大会で審査員を務めるのは、オール巨人、上沼恵美子、サンドウィッチマン・富澤たけし、立川志らく、ナイツ・塙宣之、中川家・礼二、松本人志の7人(50音順)。志らくと塙が審査をするのは初めてだ。

この7人の顔ぶれを見ると、「東西の偏りをなるべく小さくする」「次世代のM-1審査員を育成する」という2つの意図を感じる。

東西格差の問題は特に重要だ。『M-1グランプリ』は吉本興業と大阪の朝日放送が主体となって行われるイベントであり、もともと関西色が強かった。決勝に進むのも関西芸人が圧倒的に多い。そこで審査員まで関西人で固められてしまうと、さすがに不公平だという印象を与えてしまう。そのため、今回は志らく、富澤、塙という非関西人3人が名を連ねているのだ。

塙が起用されたのは、これまでの漫才師としての実績が評価されたからだろう。『M-1グランプリ』や『THE MANZAI』での優勝経験こそないものの、何度も上位に食い込んでいるし、老若男女を笑わせる上質な漫才を作り続けている数少ない芸人の1人である。この世代でこれだけの実績を持っている非関西系の漫才師はそれほど多くないため、今後もお笑いコンテストの審査員として重宝されそうだ。

審査の傾向としては、志らく以外の6人が漫才師であるため、漫才の技術的な側面が主に評価されることになるだろう。過去の大会でも全体的にそういう傾向は見られた。

ただ、松本だけは漫才師としては例外的にやや発想力に偏った審査をする。志らくも、落語家の中では新しい笑いに対する理解があるタイプであり、自分が面白いと感じれば素直に高得点をつけるだろう。また、新しく審査員に加わる塙がどういう基準で採点をするのかも読めない部分がある。この3人の点数の付け方が勝敗を分ける鍵になるだろう。

「M-1グランプリ2018」決勝進出者9組

敗者復活組に注目

今回の大会では、敗者復活戦も例年にない激戦になりそうだ。本来ならストレートに決勝に行ってもおかしくないくらいの実力者がごろごろしている。

中でも、今年ラストイヤーを迎えるプラス・マイナス、若手でトップクラスの人気を誇るミキ、昨年の大会で上沼に酷評されたことでも話題になったマヂカルラブリーなどが最有力候補だ。

奇想天外なボケが光るからし蓮根、とぼけたキャラクターが魅力的なたくろう、圧倒的な勢いでボケを連発するインディアンス、歌舞伎調のツッコミが印象的な東京ホテイソンなどがそれに続く。

 ◇

「笑神籤(えみくじ)」の導入で、M-1はより「公平」になった

2016年までの『M-1グランプリ』では、決勝でネタを披露する順番が事前に決められていたため、それを元にして展開を予想する楽しみがあった。

だが、2017年には「笑神籤(えみくじ)」という新しいシステムが導入された。これは、くじ引きによって次にネタを披露する芸人をその場で決めていくというもの。いつ指名がかかるか分からないし、指名されたら心の準備をする暇もなくすぐに舞台に上がってネタを演じなくてはいけない。出場する芸人にとっては過酷なシステムだ。

今回もネタ順は「笑神籤」で決めることになっている。このシステムが導入された理由の1つとして「敗者復活組が有利になることを防ぐ」というのがあると思う。

2002年から2016年までの『M-1グランプリ』では、敗者復活組が最後に登場してネタを披露することになっていた。敗者復活組は当日行われる敗者復活戦で一度ネタを披露しているため、体が温まっている上に、最後に出てくるので観客の期待感も高まっている。そのせいで敗者復活組は点数が高くなりがちで、2007年以降は6大会連続で敗者復活組がベスト3に入り、最終決戦に進んでいた。

このように1組だけが圧倒的な優位に立ってしまう状況を是正するため、2017年大会では敗者復活組もほかのファイナリストと同列で「笑神籤」で選出されることになった。これによって「公平感」が演出され、見る側はよりフラットな目線で個々の漫才を楽しめるようになった。

 ◇

とはいえ、ネタ順が決まっていないので、当日の展開を予想するのは難しい。基本的には、「場慣れしている決勝経験組」と「新鮮さのある初決勝組」の対決という構図があり、そこに敗者復活組がどう絡んでいくのか、というのがポイントになる。

率直に言うと、実力や面白さではファイナリストの間にそれほど大きな差はない。勝敗は当日の空気で決まる。その時、その瞬間に一番面白いのは誰なのか。生放送でぜひ見届けてほしい。


「一発屋芸人には才能がある」 髭男爵・山田ルイ53世さんは断言する

「あの人、最近消えたよね」

「今テレビに出まくってるけど、すぐ消えそう」

ネットで、飲み会の席で、しばしばこんな風に話のネタにされる「一発屋芸人」たち。彼らの人生にスポットライトを当てた書籍『一発屋芸人列伝』(新潮社)が5月に発売され、反響を呼んでいる。

著者はお笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さん。自らも「一発屋芸人」の1人だ。貴族風の衣装に身を包み、「ルネッサ〜ンス!」とワイングラスを掲げる”乾杯ネタ”でお茶の間の人気者になった。

山田さんが筆を取るモチベーションになったのは、「一発屋芸人」と称される彼らが心ない言葉で評価されてしまうことへの「悔しさ」だったという。

ネットが普及し情報があふれる現代社会では、目まぐるしいほどのスピードでブームが移り変わる。一発屋芸人たちは、まるで突風を起こすかのようにテレビ界に颯爽と現れ、話題をさらい尽くしたあと、人知れずブレイクの波から去っていく。

レイザーラモンHG、コウメ太夫、テツandトモ、とにかく明るい安村、波田陽区…。

『一発屋芸人列伝』の目次には、かつてテレビで脚光を浴びた芸人11組の名が並ぶ。

波田陽区(2015年撮影)

ハローケイスケ(2015年撮影)

髭男爵(2015年撮影)

「正統派漫才」とは一線を画するその芸風ゆえか、彼らは「嘲笑」の的になりやすい。テレビでも、Twitterでも、メディアでも、ブームが過ぎた後は「消えた芸人」として扱われてしまう。

「ネットでエゴサーチをしていると、誰かもわからない人に『おもんない』と言われたりして。『いやいや、おもろいから売れとんねん』とも思いますし、『なんでそんなこと言われなあかんねん』と。幼稚な怒りですけど、悔しさみたいな感情があって、根源的なところではその単純な思いがモチベーションになっています」

山田さんはそう話す。一貫して主張するのは、一発屋芸人は才能を持った人たちである、ということだ。

「みんな1回大きく売れただけあって、才能豊かで、しっかり芸の発明をしていたことが取材を通して再確認できました。全部に、みんなのギャグに理由があるというか。一発屋芸人はただ奇をてらってやっている、と思われがちなんですけど、実は全然違う。あまり芸人の立場からお客さんに向けて言うことじゃないんですが、まあ、僕1人ぐらい言う奴がいてもいいやろう、と思っています」

「売れるにはそれなりの理屈というか、ちゃんとした仕組みがある。それぞれの芸人の生い立ちから彼らが過ごしてきた人生、芸人になってから売れるまでの暮らしとか思いみたいなものが『フォー!』(レイザーラモンHGの決めポーズ)になったり、『右から来たものを左に受け流すの歌』(ムーディ勝山の持ちネタ)になったりするんです」

山田さんはそう話す。芸人が芸人について書くことの難しさはあったが、”傷の舐め合い”にならないよう、距離感に気をつけたという。

時にはツッコミを入れながら、フラットだが愛のある視点で芸人たちの個性とおもしろさをありありと映し出し、編集者が選ぶ「第24回雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。

レイザーラモンHG(2005年撮影)

ムーディ勝山(2015年)

『一発屋芸人列伝』が描くのは、テレビを見ているだけでは知ることができない、芸人たちの「素の顔」だ。ともすれば「イメージダウン」してしまうかもしれない一面ですら、赤裸々につづられている。

例えば、かつて「なんでだろう〜♪」のフレーズで一世を風靡したテツandトモ。現在は地方営業で大人気の彼らだが、作中には彼らのプロフェッショナルな一面を物語る、こんなエピソードが紹介されている。

テツandトモ含む一発屋芸人が出演するバラエティー番組の企画で、当時天才子役として注目を浴びていた芦田愛菜さんがゲストとして登場した時のこと。芦田さんが「なんでだろう〜♪」のリズムに合わせて番宣をするという内容だったが、こんなハプニングがあったという。

途中、愛菜ちゃんが上手くリズムに乗れなくなり、釣られて、テツも言い淀む。

次第に展開がグダグダになってきたその時、

「お前がちゃんとやれよ!!」

トモの、ツッコミと呼ぶにはあまりにも剥き出しの苛立ち……怒りが爆発した。

一気に緊張感を増す「旬じゃないルーム」(※)。息を呑む一発屋の面々。何より、天才子役の顔が引きつるのを筆者は初めて見た。

以来、トモがどれだけニコヤカに振る舞っていても、

(本当は”あれ”なんだ……)

未だに、あの空気が忘れられない。

P.78〜P.79より / ※編集部注:番組内の企画名

その後の山田さんのインタビューで、トモさんは当時の心境について、「ちゃんとしたかった」「営業でも、30分でと言われたら、30分で終わらせたい」と振り返ったという。プロ意識に徹するがゆえの、相方への厳しい叱責だった。

テツandトモ(2003年撮影)

プロの現場で起きたことだ。でも、もしこの一幕をお茶の間の子どもたちが見たり、知ったりしたら、どうなるのだろう…。こんな生唾を飲み込んでしまいそうなリアルな出来事も、山田さんはあるがままにつづっている。

「夢、壊れました?」と、山田さんはどこか”してやったり”の表情で笑う。

「本来、お茶の間の皆さんというか、お客さんでもある『視聴者』に伝えるべきではないことを書いてますからね」

「基本的に、ここに書いてる人たちの話は、全部芸人さんにも事務所にも原稿チェックをしていただいてます。でも『ここは切ってくれ』みたいのはなかった。テツトモさんも『大丈夫です、書いてください』というスタンスだったんで、逆に『すごいな、潔いな』というか。プロ意識が高いんです、テツトモさんは。特にトモさんは」

同著は月刊誌『新潮45』の連載を書籍化したものだ。「子どもは読者のターゲットと考えていない」と前置きしつつも、山田さんはこう話す。

「ただ、僕はそういうところも大人は子どもに見せるべきやな、とも思っていて。たとえば、今は何でも『0か100か』、わかりやすい味しか子どもに教えない。大人ですら、それこそネット空間とかでは、本当に『勝ちか負けか』みたいな、この2つしかない状況が多いですよね」

「いずれにせよ、みんなで叩いたり持ち上げたり、不気味なほどに二極化しているというか、単純な味しかみんな理解しないようになっている。そういう意味では、この本に載ってる人たちの人生は非常に複雑で、芳醇で、発酵食品のような味わい深いものだと思います。それがいいな、と思いますし、伝わってほしいと思うんです」

世間から「消えた」と言われる一発屋芸人たちの”その後”の人生は多様だ。

ラップ芸のジョイマンは、Twitterで「消えた」と呟く人たちに「消えてないよ!」と次から次へとメッセージを送ったり、お客さんが1人も来ないサイン会の様子をツイートしたりして、話題を呼んだ。波田陽区は福岡で再起を図っているところだ。キンタロー。さんはテレビ番組の企画で社交ダンスに打ち込み、日本代表に選ばれた。

ジョイマン(2015年撮影)

キンタロー。(2014年撮影)

「一発屋」として一世を風靡した彼らは、また大きな花火を打ち上げるために、今もしのぎを削っている。

芸能人に向かって、大上段に構えて『お前なんかおもんないわ』というのは自由ですけど…その意見に対して『そういうお前は何様やねん』と心の中でツッコんでいる人もいるはずで。去年テレビ番組で、その厳しい目を自分自身に向ける勇気はあるのか、みたいなことを言ったんですが、そういう意味でこの本に登場する人たちは、その厳しい目をみんな自分に向けています。本当に、1番厳しい目を自分の人生とか芸に向けている人たちですから

最終章では、自らのコンビ・髭男爵について書いた。

担当編集者から「最後は髭男爵で」と言われていたが、半年間は拒み続けたという。「相方のことをちょっと悪く書いて逃れるっていう迂回の仕方をしてます」と言いつつも、悩んだ末につづった自らの「列伝」には、まさしく「発酵食品のような味わい深さ」がつまっていた。

相方・ひぐち君との哀愁入り混じった「コンビ仲」が特に印象的だ。「コンビを組んで2、3年は、『どうせ樋口は帰る場所がある人間だ』と余り信用もしていなかった」(P.221)とドライな本音も赤裸々につづられた。

山田さんは中学生から芸人になるまでの6年間、引きこもりを経験している。これは2015年に自伝『ヒキコモリ漂流記』が出版され、広く知られたことだ。

「追い詰められていましたから、やっぱり。20歳まで6年間引きこもっていて、本当に社会の一員でも何でもなくなっていた状況でずっと生きていたもんですから。もう誰の言うことも信用できない、みたいな感じになっていたんですね」

その追い詰められていた時期に「髭男爵」の一員としてスタートを切った、10年後。”挫折”の日々を微塵にも感じさせないような、明るい「ルネッサ〜ンス!」のかけ声で、山田さんとひぐち君はブレイクした。試行錯誤し、笑いを追求した結果の大ヒットだった。

髭男爵(2009年撮影)

「視聴者」である私たちは、テレビに映る芸人たちの「本当の顔」を知らない。テレビの向こう側にいる彼らが何を思っているのか、本当はどんな人でどんな人生を送ってきたのか、「表」を映し出すだけのバラエティー番組を見て推し量ることは難しい。

だからこそ、「消えた」なんて後ろめたさを持たずに言えるのかもしれない。けれどもう少し、その前後のドラマにも、思いを馳せてみたい。

「ここまで来たらね。50歳とか60、70歳ぐらいになっても、シルクハットをかぶってひぐち君もあんな格好して、『何とかかーい』とか言うてたら、逆におもしろいかな、ということで。今はコンビとしてはそこを目指してます」

ひぐち君はワイン道を極めるために、「ワインエキスパート」の資格を取得した。髭男爵の2人のコンビとしての活動は、今は地方営業が主だという。数ある「一発屋芸人」たちと同じように、もちろん、山田さんの芸人人生も続いているのだ。


CLOSE
CLOSE