ongaku

No Picture

レディオヘッドが生んだ20世紀最後の名盤『KID A』。なぜ時間とともに評価されたのか?

イギリスのロックバンド「Radiohead(レディオヘッド)」が2000年に発表したアルバム『KID A』誕生の背景に迫った書籍『レディオヘッド/キッドA』の日本語訳が発売された。 

20世紀最後の名盤にして問題作とも評されるアルバムが社会に与えた影響を、政治・経済・メディアなどの側面から多角的に捉えた一冊だ。

ロックにとどまらず、今なお現行音楽シーンに多大な影響を与えている『KID A』は、なぜ批判され、時間とともに評価されたのか。訳者の島田陽子氏と、担当編集者であるP-VINE大久保潤氏に話を聞いた。(記事・星久美子/編集・石戸諭)

レディオヘッドはイギリスの5人組バンドだ。1985年に結成し1992年にデビュー。ファースト・アルバム『Pablo Honey(パブロ・ハニー)』のシングル曲『Creep』が世界的にヒットすると、1997年に発表したアルバム『OKコンピューター』でグラミー賞を受賞し、人気を不動のものとする。

フジ・ロック・フェスティバルやサマーソニックなど、日本を代表するロックフェスにもたびたび出演している。とりわけ2003年のヘッドライナーを務めたSUMMER SONICのステージは、伝説のライブとして今も語り継がれている。『KID A』の収録曲は現在のライブでも度々演奏され、ファンも多い。

編集者の大久保さんは、邦訳刊行の理由をこのように語る。

「原書は2011年に出版されたものです。なぜこのタイミングだったかというと、一つはボーカルのトム・ヨークが映画『サスペリア』のサントラを手がけたのをはじめ、メンバーの活動が活発になってきたこと。

もう一つは、レディオヘッド自身はコンスタントに活動しているわけではないのですが、音楽記事を見ていていると彼らに言及していることが多い。特に『KID A』は、2000年以降の音楽シーンに大きな影響を与えた作品です。今改めて彼らについて捉え直す必要があるのではと思い、出版に至りました」 

 『KID A』が世界に与えた衝撃

『KID A』はレディオヘッド4枚目のアルバムとして2000年10月2日にリリースされた。英ロックバンドの地位を確立させた彼らが満を辞して発表した一枚は、リスナーの期待を大きく裏切るものだった。

前作までのギターサウンドは影を潜め、実験音楽のような電子音とリズム、メランコリックで難解な歌詞――。たちまちメディアや音楽評論家の間で論争が巻き起こる。これは“ロック”ではない、と。

当時のレビューからもメディアの酷評ぶりがよくわかる。

「これほど完璧に、これほど優しく、とっとと失せやがれ、と告げたアルバムは、最近の記憶では皆無」(ヴィレッジ・ヴォイス)

訳者の島田さんはリリース当時の衝撃を振り返る。島田さん自身、以前から海外公演にも足を運ぶほどのレディオヘッドファンでもある。

「『OKコンピューター』の次がこれだったのが衝撃でしたよね。前作はギターロックとして聴きやすかったけれど、私自身、『KID A』は初めから受け入れられる作品ではなかった」

政治、音楽業界に対する反抗

「『KID A』では政治に対するメッセージ性を強めています。そして彼らがいる音楽業界に対する反抗でもあった」と大久保さんは語る。

当時のブレア政権は“ブリット・ポップ”と呼ばれたポピュラー音楽、映画やファッションなどカルチャーの輸出を国家ブランド戦略として位置付ける「クール・ブリタニア」を提唱した。ブレアはオアシスのノエル・ギャラガーを始め、若手アーティストを首相官邸に招くなどして親交を深めていく。

しかし、レディオヘッドは彼らとは距離を起き、政治に対しても批判的な姿勢をとった。グローバリゼーションを否定するメッセージを込め、ライブツアーの会場からはスポンサーのロゴや広告が一切排除された。

同時に彼らは、音楽業界のメインストリームにも反逆を企てる。

CD発売と同時に大量の広告を投下する従来の宣伝方式を嫌った彼らは、『KID A』では一切公式シングルを出さないことに決めた。ミュージックビデオの代わりとして、10秒から40秒程度の短い(そして難解な)アニメクリップをウェブサイトに公開すると、ファンを媒介にして瞬く間に世界中に広がった。

従来の配給方式に変わる新たな方法も模索していた。今でこそ一般的になった、オンラインでのサブスクリプション方式、いわゆる“サブスク”を採用するアイデアもあったという。

アップル社が「iTunes」「iPod」を発表し、音楽産業に大きな革命が起きたのは翌年の2001年。そのことからも、非常に早い段階からデジタル・メディアへのシフトを意識していたことがわかる。

違和感から共感、そして賞賛へ

既成の枠にとらわれない表現は、しばしば人々の理解を超え、違和感として受け止められることがある。しかしトム・ヨーク自身、『KID A』にリスナーの期待を覆そうという意図はなかったと説明している。

「自分たちが(音楽から)受けた影響を混ぜ合わせ、目を見開いて賛美するような理想主義に凝り固まった麻痺状態に一撃を与えようとした」

彼らの作品をいち早く賞賛したのは音楽界だった。当時活躍するミュージシャンたちがこぞって公の場で『KID A』を絶賛し、2000年のベストアルバムに挙げた。

問題作は話題を呼び、発売約1ヶ月前にはファイル共有サービス「ナップスター」に違法アップロードされ、すでに数百万回もダウンロードされていた。セールスに大打撃を受け、彼らの反抗は失敗に終わるだろう。これが大方の予想だった。

ところがリリースされるやいなや、アメリカ、イギリスほか数カ国のチャートで初登場1位を記録する。セールスは全世界で400万枚にものぼった。

 やがて2000年の終わりには、評論家もほぼ満場一致で彼らのアルバムを賞賛する(発売当時酷評していたメディアさえも)。年末には数えきれないほどのメディアで「今年最も優れたアルバムに輝いた。そして、この年の第43回グラミー賞で「最優秀オルタナティブ・アルバム」を受賞する。

『KID A』は、メインストリームに対する反抗がアーティスト自身の力で可能であることを証明した。作品の根底には、過去の成功にとらわれず自分たちの音楽を表現したいという純粋な動機があった。これこそが20世紀の終わりに起こった大事件だったのだ。

ロック模索の時代、変わり続けるレディオヘッド

90年代の終わりにはブリット・ポップブームも急激に衰退していく。フレッシュなイメージで人気を博したブレア政権も、政治情勢への不安や収入格差の拡大とともに支持率が下落していった。「クール・ブリタニア」はもはや死語となり、幻想のうちに終焉を迎えた。

『KID A』が与えた衝撃は今も衰えることなく、ローリングストーンズ誌では「2000年代のアルバム・ベスト100」の1位に、TIME誌は史上「最も偉大で影響力のある」アルバム100枚のうちの1枚に選んでいる。

大久保さんは現在の音楽シーンを「ロックが模索している時代だ」と指摘する。

「最近はヒップホップの勢いが増していて、海外でもポップスのメインストリームになっています。最近『新しい』と感じるロックバンドはしばらく見ていない気がします。

『KID A』が出た後、日本でもエレクトロニカを取り入れるミュージシャンが増えました。やはりそれくらい影響力があるバンドです。彼らほどビッグなバンドがガラッと新しいことをやるって、なかなかない気がします」

レディオヘッドの活動を追い続けてきた島田さんは、「彼らは今も進化をつづけている」という。

「最近では、トムがソロで映画音楽を手がけたり、ギターのジョニー・グリーンウッドはインド音楽やクラシックなど違うジャンルの人と組んだりと、まるで細胞を増殖させていくみたいにどんどん新しい作品を作り続けています。

一方で、どう進化するか全く予測がつかない。いつ突然『すべてやりきった』と言って活動が終了してもおかしくない。不思議ですが、これも彼らの魅力なんだと思います」

レディオヘッドはこれからどこへ向かうのだろうか。現在、今年7月に開催されるフジ・ロック・フェスティバル2019にトム・ヨークのソロバンド「THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES」の出演がアナウンスされている。しかし、バンドのリリースやライブの予定は発表されていない。

同じく今年、レディオヘッドはロック音楽に優れた功績を残したアーティストに与えられる「Rock & Roll Hall of Fame(ロックの殿堂)」を授賞した。しかし3月末の授賞式は欠席すると明言している。欠席理由について、トムは米バラエティ誌のインタビューに答えている。 

―I can’t. I know I can’t, because of these piano pieces that I’ve written. There’s the Paris Philharmonic, so I have to be there for that. 

「無理なんだ。(授賞式には)行けないんだ。(自分が曲を書いた)フィルハーモニー・ド・パリの公演があるから、そこにいなきゃ行けない。」

Read More

No Picture

「女性への勝手なジャッジや期待は本当にイヤ」 CHAIのパンクマインドは愛せる自分になること

左からマナ(Vo,Key)、ユナ(Dr,Cho)、ユウキ(Ba,Cho)、カナ(Vo,Gt)

「コンプレックスはアートなり」をコンセプトに掲げる4人組のバンドCHAI。

2015年より本格的に活動を開始し、その個性的な音楽とビジュアルは多くのメディアで話題となった。

そんな彼女たちが先月発売した2ndアルバム「PUNK」のテーマは、「なりたい自分になる」。そこに込められた思いについて聞いた。

 

いろんな顔があって当たり前なんだから

ーー「ブス」という言葉について皆さんはどんな印象を持っていますか?

ユウキ:私たちこの言葉を使わないよね。そもそも存在を消してしまっているから意識もしない。この言葉を使ったり使われたりして幸せになれる人なんていないと思う。

ユナ:本当に言葉の暴力だっていう感じがするね。無差別に暴力を受けるような気持ちになる。ブスだとかそうじゃないとか、一体何が基準で決めるんだろう。

マナ:「ブス」も「かわいい」も、褒めるか、けなすかっていう、女性だけに向けられた言葉だという気がしてしまう。なんで女性だけが勝手にジャッジされなきゃいけないんだろうと思うし、かわいくいることへの勝手な期待も本当に嫌。いろんな顔があるなんて当たり前なんだから。その疑問とか憤りを私たちは歌詞にしてる。ちょっぴり皮肉も込めて。

「かわいいひとは

すぐにみあきてしまうものよ

かわいいひとは

すぐにみあきてしまうものよ

だからこそではないけど

ちょっとブスなひとのほうが

かわいいぶぶんをみつけるのに

じかんがかかるからみあきない」

―CHAI「かわいいひと」 

「つまんないなんて変じゃない?

全部同じ顔なんて変じゃない?

キレイキレイしすぎ

個性はどこにある?

 

つまんないなんて変じゃない?

全部同じ顔なんて変じゃない?

そのままがずっと

誰よりも可愛い」 

―CHAI「N.E.O.」

 

男性基準の美意識への反発とモテたい気持ち

――モテたいという気持ちから、男性基準の美意識を完全に無視できない女性もいると思います。どう折り合いをつけていますか?

マナ:もちろんモテたいっていう気持ちもめちゃくちゃよくわかるけど、それを一番にしてしまうと、自分の人生なのに常に他人に左右されてしまって、それが本当に自分の気持ちなのか見失ってしまわないかな? でも、男性にモテる自分が好きだっていう女性もいると思うから、それはその道を突き進んでいけば素敵だと思う。

ユナ:モテるモテないって、顔面のことについての基準だという固定概念がどこかある気がして。でも、そこじゃないよねって思うんだよね。内面でモテるとかもいいんじゃない? って。モテるにもいろいろあるから。もはや、そこを見てくれない人は恋愛対象外でもいいくらい。

 

 

「かわいい」という言葉にも、日本の女の子は苦しんでいる 

ーー最新の2ndアルバム「PUNK」は、CHAIのパンク精神がテーマになっていますが、ここで掲げたパンク精神とは何か、聞かせてください。

ユナ:自分の気持ちに正直に、なりたい自分になるっていうこと。決して音楽ジャンルの話じゃない。でも、それがすごく難しいことだということはわかってて。私も今まで、学校とかバイトとか、組織の中に入る度に、そこにはすでに模範解答やお手本が用意してあって、それに従っているうちに自分の気持ちを曲げたり無くしたりしてきた経験はたくさんあるから。そんな中でも、まずは自分の気持ちに素直になることから始められたらいいなって思ってる。

カナ:私たちはやっぱりライブの時が一番パンクだと思う。4人でしか出せない音と、歌えない歌があって、唯一無二の存在でいられる。私たちの好きなウルグアイ代表のサッカー選手、ルイス・スアレスは、試合中、闘志のあまり敵に噛み付いちゃうぐらいなんだけど、その噛みつきたいくらい勝ちたい、という気持ちには愛も感じるし、すごくパンクだと思っていて、ライブの度に彼を思い出すんだよね。

 

 

ーーそんなパンク精神があれば、女性たちはこれからより自分らしく生きることができるでしょうか?

マナ:女性も男性もみんな生きたいように生きてほしいって思う。だって、人生は一回しかないから、なりたい自分にならなきゃもったいない。でも、私たちは普段、人生が一回しかないってことをつい忘れてしまっているんだよね。

カナ:生まれた時から絶対みんな強さを持ってると思うんだよね。時間はかかるかもしれないけれど、自分のしたいことや、好きなことをやっていくうちに「私って強いんだ」ってことに必ず気づけると思う。

ユナ:私たちはいつも何かに比べられて生きているじゃない? だからありのままでいられなくなって、自分の気持ちにも素直になれなくなっちゃう。まずは自分を一番最初に認めてあげてほしい。誰とも比べずに、自分で自分を愛せたら幸せに生きられると思うな。

ユウキ:もしもブスという言葉に傷ついてしまった時には、私はブスじゃない「NEOかわいい」だよって思って欲しい。

日本の女性たちは、「ブス」と同じくらい「かわいい」に苦しむと思う。その言葉は魔法みたいに嬉しいけれど、同時にもっとかわいくならなきゃ、かわいくなくちゃいけない、という呪いになって私たちに付きまとってくる。CHAIが作った「NEOかわいい」という言葉は、生まれた姿そのままの個性がかわいいんだよっていうこと。それがずーっと私たちを守ってくれる本当の魔法の言葉になると思ってる。 

 

 

自分のコンプレックスを褒めてあげることが大切

 

ーーそうはいっても、自分に自信を持つということはなかなか難しい。どうすればいいでしょうか?

カナ:CHAIはみんなやっているんだけど、毎日鏡を見ながら「私はここがかわいい」とか、「自分の顔が好きだ」とか、おまじないみたいに言い続けていると、だんだん勘違いできてくるんだよね。そうやって毎日自分を肯定し続けることで、少しずつ自信がついてくるんじゃないかな。

ユナ:自分を褒めてくれる人を周りに見つけることも大切だと思う。日本人は他人を褒めるのが少し下手なところもあるから、そういう人を見つけるのは苦労するかもしれないけれど……。

ユウキ:自分が褒める人になったらいいよ。褒められたら誰でも嬉しい。まず他人を認められたら、自分も認めてもらえるんだと思う。

マナ:コンプレックスを自分で認めたり、口に出したりすることって、なかなかできないよね。「私、目が小さいんだよね」とか。

ユウキ:だからやっぱりまずは鏡に映る自分に向かって口に出してみる。それで「私の目、すごいかわいい」とか「私の眉毛、今日も素敵」とか、そのコンプレックス一つ一つを自分自身で逆に褒めてあげる。

もちろん私たちも完璧にコンプレックスがゼロになることはないし、むしろこれから歳を重ねていけば、違うコンプレックスもどんどん増えてくると思うし、でもそれをちゃんと自分で認めたいと思ってる。

 

 

「俺の彼女は、NEOかわいい」海外で感じた個性を認めない日本

ーー昨年は、海外に行かれる機会も多かったかと思うのですが、日本と比較して感じるルッキズムなどはありましたか?

ユウキ:どんな国の人にもコンプレックスはあるし、それぞれの国の価値観があった。日本は、女性に対してのわかりやすい褒め言葉の一つとして「かわいい」があるけど、アメリカだったら「ビューティー」とか「セクシー」とか。そしてそれに対しての苦しみがやっぱりあって。

でも、特に日本は個性を認めない国という気がする。ライブのノリ方にしても、みんな同じがいい、という感覚があると思う。

マナ:アメリカで、自分の彼女を「俺の彼女はNEOかわいい」って褒めてる男の子がいたよね。彼女は隣でそれをとても嬉しそうにしていて、日本ではなかなか見られない光景だなと思った。

ユナ:そんな彼氏、本当に素敵だよね。

ユウキ:でも、最近は日本も「多様性」ということが浸透してきていると思うから、これからどんどん変わっていくといいなと思うな。

(取材・文:秦レンナ 編集:泉谷由梨子)

 

女だから。男だから。

性別を理由に、何かを諦めた経験はありますか?

女だから。男だから。 闘わなければならなかったこと、自分で自分を縛ってしまった経験は?

ハフポストは、平成が終わる今だからこそ、女性も男性も、みんなが性別にとらわれずに自由に生きられる未来を語りたいと思います。 

性別を理由に、何かを決め付けたり、自分で自分を縛ったりしないで。

みんなが自分の可能性を信じて、自由に選べるように。

ハッシュタグ #わたしを勝手に決めないで をつけて、みなさんの声を聞かせてください。


No Picture

還暦のギャルベーシスト、ラウドロック、日常すぎる歌詞。異色バンド『打首獄門同好会』が、「好き勝手」を貫いた方法。

打首獄門同好会:大澤敦史(ギター・ヴォーカル、中央)、河本あす香(ドラム・ヴォーカル、左)、junko(ベース・ヴォーカル、右)

「打首獄門同好会」を、あなたはもう聞いただろうか。 

ゴリゴリのロックなのに、「はたらきたくない」「布団の中から出たくない」、あるいは「日本の米は世界一」「スマホの画面が割れた日」というタイトルで日常すぎる歌詞。「生活密着型ラウドロック」と称する独特のスタイルで、武道館ライブも成功させた人気バンドだ。

実は独特なのはそれだけではなかった。2018年末には、金髪ロングを振り乱し、メンバーでも最も激しいステージングで沸かせるjunkoが還暦を迎えたことを明かした。世間をアッと言わせただけでなく「生涯ギャル」を宣言し、女性たちに勇気を与えた。

キャリアは間もなく15年。「中堅」に至るまで3人はライブシーンだけでなくネットも駆使してファンを増やし続けてきた。唯一無二すぎる音楽の裏あったのは、「好き勝手」を貫く方法論だった。【打首獄門同好会:大澤敦史(ギター・ヴォーカル)、河本あす香(ドラム・ヴォーカル)、junko(ベース・ヴォーカル)(文中敬称略)】

  

 

 

還暦発表で「世界が広がった」ベーシストjunko

――2018年末、junkoさんの還暦発表がものすごく話題になりました。皆30代ぐらいと思っていましたから…。未だに「ウソじゃないの?」と。

junko:ウソってことでいいならそうします?(笑) 2人にも、実は数年間は黙っていたんですよね(経緯はマンガを参照)。親子ほども歳が離れていますから、「この人、体力大丈夫?」って思われるかもしれないっていうのが不安だった。今回も、女性の歳を世間にバラすってことには、躊躇したんですよ。ラウドロックバンドで、ガーッていく感じなのに、還暦以上のメンバーがいるって、世間でどういう目で見られるんだろう。ドン引きされたらどうしようって。発表が「バンドにとって本当にいいことなのかな。悪い方に転がらないかな」って不安もあったんですけど。でも公表したら世界がとっても広がりました。

 

「打首獄門同好会のベースjunkoさんが還暦に」のニュースが想像以上に世間に衝撃を与えているようで

それに伴い
「なぜ20以上も歳が離れてる3人が組むことになったのか」
「ていうか他2人はいつからこの事実を知っていたのか」

という疑問がけっこうあるようなので、我々の歴史を描いてみました。 pic.twitter.com/k404Xske2i

— 打首獄門同好会 (@uchikubigokumon) December 23, 2018

 

――年齢を公表したら、世界が広がったんですか?

junko:言ってみれば「たかが歳」なのに、言っただけでお友達が増えたし(笑)こちらから声をかけづらかった先輩の皆さんもすごく親しく声をかけてくださるようになって…。

大澤:思ったよりスケール小さい話だった(笑)でも、先輩バンドの方が実は年下で、「今まで呼び捨てにしてスミマセンでした!」って言ってきたりして。面白がってね(笑)。 

――ライブでの「ヘドバンし続けるし、金髪も切らないし、いつまでもギャル服を着続ける」というjunkoさんの宣言はTwitterでも拡散されて、特に女性から「憧れる」という声がたくさん届いていました。

大澤:そうですね、ネガティブな意見は本当に来なかったです。そのかわり、「勇気づけられた」っていう人が多くて。

河本:音楽ファンも歳を重ねると「私みたいな歳で、ライブハウス行っていいんだろうか」っていう悩みがあるんですよ。

大澤:そういう人が結構多かったですね。「私ぐらいの年齢で何言ってるんだろう、って反省しました」「ライブ行きます!」みたいな意見がたくさん届きました。

junko:私自身は「この歳だからこうしなきゃ」というマインドが今まで1つもなかったんですよ。あったら、どこかで音楽は辞めていたかもしれない。「親が心配するだろうな」とか「結婚もしないとな」とか、そういうことは何も考えてなかった。でも、世間では色々心配するじゃない?「60ならこれぐらいの感じであるべきだ」って。でも発表しても大丈夫だった。そう考えると、私は今までこういう感じでやって来られたから、今からも多分倍ぐらいまでやっていけそうな気がするよね。この感じで。

――120歳まで…。junkoさんの全然年齢を感じさせない激しいステージングがまた素敵です。

大澤:やんちゃするのを俺がたしなめる係ですから。「こういうタイミングでお客さんのところに飛び込んだらダメです」って。2年前にも骨折してますからね。

junko:足折ったのが2年前で、流血したのが3年前。今日はチークで隠してますけど顔にあざがあります。格闘技を習ってて(笑)。

 

 

「若者に共感する歌詞を頑張って作っている大人が多い」

ラウドロックでありながら、歌詞は食べ物のこと、ダイエットのこと、「風呂入ってすぐ寝る計画」のこと。それが「生活密着型」と称される理由だ。

3月6日に発売されミニ・アルバム『そろそろ中堅』に収録される「はたらきたくない」も、すでに代表曲になりそうな人気ぶりだ。激しいロックサウンドで始まった曲は、デスボイス、あるいは寝起きのような「バイトだるい」「起きたくない」という大澤の声が乗った後、一気に展開。河本、junkoがヴォーカルを取った「はたらきたくないねー」という痛快なメッセージで駆け抜ける。(意味がわからない方、まずはYouTubeを見てください)

Nintendo Switchのゲームソフト『WORK×WORK』のテーマソングであるこの新曲が、2018年9月、ツアーのファイナル公演で初披露されると、会場は笑いと感動に包まれた。

 

 

 

 

――「はたらきたくない」は最初から大盛り上がりでしたね。

大澤:うちのライブってVJ(映像効果を担当するヴィジュアル・ジョッキー)が歌詞を後ろに出しながらライブを進めるスタイルなんで。初めてでも何を歌っているかわかる。だから、ライブで皆が手を叩いて笑ってたんですよ。

河本:あんまりないよね、新曲を披露して爆笑される(笑)。

――その反応を聞かれて、ステージでは。

大澤:ステージでは音楽に集中しているので、「変なこと言ってる」っていうのは自分たちも忘れてるんですよ。一回我に返っちゃうと、こっちも笑ってできなくなるから。我々の課題は、「やってる途中で我に返らない」。何を言っているかを考えるなっていう。でも、たまにツボ入るよね。

――でも曲はものすごくかっこいい、疾走感がすごいです。

junko:デモで曲を貰った時点から、これは雰囲気がすごく良くて、瞬時にかっこいいって思ったんですよ。その時から気に入ってました。曲と歌詞のギャップは毎度のことなので、あんまり意味は考えてないよね(笑)。

――面白いけれど、ちょっとホロリとくる歌詞もあったりして。

河本:ゲームの主題歌でありながら、普通に働いている人にも心に響いた曲になって…。

大澤:響いちゃったね。

 

 

――「生活密着型ラウドロック」という独特のスタイルです。そういうスタイルで行かれるようになったのはどうしてなんでしょうか。

大澤:俺がギタリストから流れでヴォーカリストになってしまったので、世界観を歌詞で作り込む概念がなかった。楽器に目覚めた頃からずっと洋楽を聞いてきたんですが、さっぱり何言ってるかわかんないんですよ、英語だから。好きな曲9割ぐらい意味わかってないです。でも、曲は好き。そういう世界観で生きてきちゃったもんだから。だからこのバンドを組んだ時も、サウンドが先にできて、歌詞はどうしよう、っていう感じで。
――サウンドが大事で、歌詞は後からだったんですね。

大澤:色々試してはみたんですけど、一番自然体にできたのが、「朝ごはん食べる」っていう内容の歌詞(「Breakfast」)だったんですよ。ライブでも受け入れられて「こっちでいいなら俺は楽だよ」って。やっぱり、自然体が一番長続きすることだと思うんですよ。逆に、大変だなと思うのは、ラブソングが代名詞になってる人って、きっと恋愛中じゃなくてもラブソングを作らなきゃいけないと思うんですよ。それは大変だな、と。こっちは楽なんですよ。四六時中食事はするから。

――たしかに…。人間そんないつも恋愛はしていない。

大澤:だからそれが結果的にコツっていうか、秘訣になった。偶然なんですけど。長続きするものが勝手に見つかって、そいつらが勝手に導いてくれたので。音楽業界も、古今東西「若者向けにしないと売れない」みたいな風潮がある。それで、若者に共感する歌詞を頑張って作っている大人が多いと思うんですよ。でも、うちのバンドは、いい歳した奴が等身大で書いちゃってるから、若者に全然向けてないんですよね。だから結果的に、年齢が関係なく受け入れられる曲になっている。「布団の中から出たくない」が、ちびっこにも、中国でも大受け!みたいな。

 

 

「いたずら半分で色々やっちゃう」戦略

打首獄門同好会のもう一つの魅力は、活動の幅をどんどん広げていることだ。結成10周年を記念して始まったネット番組「10獄放送局」や、人気のクリエイターとのコラボで制作されたMV(ミュージックビデオ)も何度もTwitterなどを通じて「バズ」っており、そこからライブに足を運ぶ観客を増やしてきた。

――色んな手法を駆使して、お客さんを増やされてきたバンドというイメージもありますね。

大澤:そうですね。色々工夫や発明が多いですね。ライブハウスでもスクリーンとプロジェクターを持ち込んでVJをしているんですが「すごく曲と歌詞がシンクロしているのはなんで?」って聞かれるんです。でも実はOffice PowerPointを操作してますよっていう(笑)。普通は思いつかないでしょうけど、こっちは好き勝手やることに慣れているから、何の躊躇もないんですよ。「歌詞を見せるならパワポでやりゃいいんじゃね?」って言って、ほんとにやっちゃっう。いたずら半分で色々やっちゃうんですよね。

――MVのYouTubeでの展開だけでなく、ネット番組を自分で作ってしまうという発想も独特ですね。

大澤:インターネットの発達と共にバンドもありましたから。15年前にバンドを組んだ時は、BBS(掲示板)の全盛期。各バンドのサイトの掲示板を皆で行き来しあって、文字だけで告知を書いてました。だんだん、音楽もアップロードできる回線になって、MySpace、mixiというSNSが出てきて、今はTwitter、Facebook、YouTubeで動画も流せるようになった。でも予算はないから手作りで。最初のMVはうまい棒の歌(「デリシャスティック」)でしたけど、知り合いのカメラマンに撮ってもらった写真をPhotoshop elementsで一所懸命切って貼ってiMovieで繋いで。

 

 

――それも大澤さんが全部自作していた。

大澤:音楽は好き勝手やりたいですから。決して音楽では媚びない。だから、メディア戦略は時代に合わせて、武器やスキルを増やしていこうという心がけはありまして。今って昔に比べて、ライブハウスもバンドもすごく数が多い。悲しいことに、良いライブさえしていれば自然と売れてくるという時代ではなくなって、最低限の戦略性も必要になってしまった。でもそれでこのバンドを知ってライブ見に来た人は、「なんかかっこいいと思ったんだけどこの感情はなんだろう」ってなる。こっちは真剣に演奏はしてますから、そう感じていただけるのは自然なんですけど。 

――ライブに行けば決して「ネタ」のバンドではない、ことがわかる。

大澤:音楽家のプライドとしては、絶対に楽曲の構成と演奏の能力でちゃんと与えるものを与えるっていう方向に行かないと。音に関しては、誰でもできるような子供騙しに頼らず、演奏の上手さで感じられる重みとか、音色の良さで問答無用に与えられる迫力とか、ちゃんとそこはこだわりを持って作っています。

 

 

――歌詞をどんなに「面白く」されても、守っている部分があるからすごく愛されているんだろうなと感じます。

大澤:「言ってること面白いけど、音楽的に物足りない」みたいなバンドには絶対になりたくない。「このバンド面白い!」と評価されて、ちゃんとライブシーンで生き残っているバンドって、大体演奏もめちゃくちゃ上手い。きちんと「音めっちゃいいな!」そして「ライブ面白いな!」という二面性が、ないといけない。だから、ちゃんと音にこだわっていくというスタンスを今後も貫いていきたいと思ってますね。

河本:ライブで聴いた時に、ワアってくる衝撃はやっぱり演奏力。それがまず来てから、色んな部分が見られるんだと思うんです。だからやっぱ根本的なところ、しっかりした部分ってやっぱ大事かなと。

junko:ふふ、でもライブではお客さん煽ったりするし、わりとかっこつけるわけですよ。で、撮ってもらった写真を見ると自分の後ろに(VJで)「マグロ!」とか出てる…。マジで、こういうライブしてるんだよなって思う。

河本:アホやなあ〜。

大澤:自分たちで動画見て爆笑することあるもん。「何やってんだろこの人たち」って。

junko:お客さんはVJで歌詞も、ライブ全体も楽しんでくれてるし、我らながら、このバンドって盛りだくさんだなって思ってます(笑)。

 

名曲「私を二郎に連れてって」のライブ場面

女だから。男だから。

性別を理由に、何かを諦めた経験はありますか?

女だから。男だから。 闘わなければならなかったこと、自分で自分を縛ってしまった経験は?

ハフポストは、平成が終わる今だからこそ、女性も男性も、みんなが性別にとらわれずに自由に生きられる未来を語りたいと思います。 

性別を理由に、何かを決め付けたり、自分で自分を縛ったりしないで。

みんなが自分の可能性を信じて、自由に選べるように。

ハッシュタグ #わたしを勝手に決めないで をつけて、みなさんの声を聞かせてください。


No Picture

「打首獄門同好会」とはどんなバンド?『布団の中から出たくない』『ニクタベイコウ!』『日本の米は世界一』、日常を熱く歌い上げる

「打首獄門同好会」公式サイトより

打首獄門同好会という3人組バンドが注目を集めている。2004年に結成し、2018年3月にはインディーズバンドながら、日本武道館でワンマンライブを成功させた。

■打首獄門同好会とは?

打首獄門同好会はギターヴォーカルの大澤敦史さん、ドラムの河本あす香さん、ベースのjunkoさんから成る3人組のバンド。2004年に結成され、2006年から現メンバーとなった。

2018年12月に、メンバーのjunkoさんの誕生日を祝う「junkoさんお誕生日会」で、junkoさんが他のメンバーより20歳以上年が離れていて、還暦を迎えたことを突然発表し、世間を驚かせた。

音楽のジャンルは「生活密着型ラウドロック」と呼ばれている。

 ■「生活密着型ラウドロック」とは?

「ラウドロック」は、ロックの種類のひとつで、ヘヴィメタルのように曲調が激しいことが特徴。

打首獄門同好会は、ラウドロックとして、「米や肉を好きな思い」、「寒い日の朝、布団の中から出たくない感情」など身近なテーマを扱うことから、「生活密着型ラウドロック」と呼ばれている。

その歌詞は、「もう布団の中から出たくない 布団の外は寒すぎるから」や「風呂入って速攻寝る計画」という日常で誰しもが感じる「あるある」を歌にしたもの。

さらに、「日本の米 We want 米 至宝の愛 真っ白に炊きたてご飯が輝く」や「何食べたい?肉食べたい カルビ ロース サーロイン スネ ヒレ ハラミ レバー マルチョウ ハツ タン」という食べ物への愛を歌にしたものが多い。

 

■名前の由来は?

「打首獄門同好会」という印象的な名前はなぜ付けられたのだろうか。

先ずは、バンド名の意味を新明解国語辞典(第六版)で紐解いてみよう。

打首は、「昔、刀で首をきり落とした刑」。獄門は、「(牢獄の門の意)江戸時代、斬首された重罪人の首を一定の場所において、人目にさらしたこと。またその刑罰」。同好は、「趣味や興味の対象が同じであること(人)」となっている。

単純に考えれば、「刀で首をきり落としたり、その首を人目にさらしたりした刑罰へ興味をもつ人たち」と解釈できる。物々しすぎるバンド名だ。

名前の由来は公式サイトに記載されている。

バンド結成時に、ドラムの河本さんが「なんか和風な名前がいい・・・たとえばチョンマゲトリオとか」と言い、チョンマゲトリオだけは避けたいと考えた大澤さんが、「『打首獄門同好会と、切腹愛護団体と、終生遠島協同組合、どれがいい』と初代ベーシスト高山明に詰め寄って決まっただけの話である」とのこと。

大澤さんが、候補となった3つの言葉を思いついた理由は「和風な名前と考えて、大澤家の親父さんがよく見ていた遠山の金さんの台詞から適当に引用しただけ」と述べている。


No Picture

ナンバーガールがオリジナルメンバーで再結成 「RISING SUN」に出演決定

2002年に解散したロックバンドNUMBER GIRL(ナンバーガール)が、オリジナルメンバーで再結成する。2月15日、8月に開催されるロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」に出演すると発表された。

 

【お知らせ】
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZOへの出演が決定致しました。#numbergirl#ナンバーガールpic.twitter.com/BeB91y7kEV

— NUMBER GIRL (@numbergirl_jp) February 15, 2019

 

NUMBER GIRLは、向井秀徳(Vo,Gt)、田渕ひさ子(Gt)、中尾憲太郎(B)、アヒト・イナザワ(Dr)から成るロックバンド。2002年、札幌のライブハウス・PENNY LANE24での公演をもって解散した。

公式サイトには、活動再開に受けた向井秀徳のコメントも掲載されている。

▼向井秀徳のコメント

「2018年初夏のある日、俺は酔っぱらっていた。そして、思った。

またヤツらとナンバーガールをライジングでヤりてえ、と。

あと、稼ぎてえ、とも考えた。俺は酔っぱらっていた。

俺は電話をした。久方ぶりに、ヤツらに。

そして、ヤることになった。

できれば何発かヤりたい。」 

 

 

 

【お知らせ】
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZOへの出演が決定致しました。#numbergirl#ナンバーガールpic.twitter.com/BeB91y7kEV

— NUMBER GIRL (@numbergirl_jp) February 15, 2019


No Picture

「日本と韓国、異なるアイドル文化を合わせる」ソニー・ミュージック、韓国JYPと共同でガールズグループ結成へ

ソニーミュージックエンタテインメント代表取締役の村松俊亮氏、パク・ジニョン氏

株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントが、K-POPグループの2PMやTWICEなどを輩出した韓国の大手芸能事務所JYPエンターテインメント(以下、JYP)とタッグを組み、新たなガールズグループを作る。2019年夏に日本国内8都市のほか、ハワイとロサンゼルスで大規模オーディションを開催するという。

2月7日、JYPの創業者で、2PMなど数多くのアーティストのプロデュースを手がけてきたパク・ジニョン氏が来日会見を実施。流暢な日本語で、プロジェクトの全容をプレゼンした。

「Nizi Project」、応募資格は国籍不問。6カ月のトレーニング期間も

プロジェクト名は「Nizi Project(ニジプロジェクト)」

応募資格は、満15歳〜満22歳の女性。国籍は不問だが、「日本語でコミュニケーションが取れること」が条件として設けられている。ジニョン氏によると、より多くの日本のファンとコミュニケーションを取れるようにするため、言語能力を条件に入れたという。

2019年5月1日からエントリーを開始し、7月から8月までの1カ月間で、日本国内8都市(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・沖縄)、海外2都市(ハワイ・ロサンゼルス)でオーディションを開催するという。

ジニョン氏によると、このオーディションで20人の候補生を選抜。

その後、選ばれた候補生はJYPでデビューに向けた半年間のトレーニングを受け、2020年11月に日本でメジャーデビューを迎える。最終的に選ばれる人数は、現段階では決まっていないという。

さらに、オーディションの模様は2019年10月ごろ、リアリティー番組として放送する予定という。

「未熟さ」を見せる日本と「完璧な姿」を見せる韓国のアイドル 2つの文化を合わせる

近年、多国籍グループのTWICEやGOT7、EXOなどの活躍が目覚ましく、アイドルのグローバル化や多様化は加速している。

2018年には、韓国の音楽専門チャンネルMnetとAKB48グループがコラボしたオーディション番組「PRODUCE 48」が放送され、日韓合同ガールズグループIZ*ONEが誕生した。

ジニョン氏は「Nizi Project」の構想について、以下のように意気込みを語った。

「日本のアイドル文化は、準備する過程からファンたちが一緒に応援してくれる。成長する姿を共有するため、アイドルたちが完成されていない状態、つまり『未熟な姿』も気にせずに見せると思います。反対に、K-POPアイドル文化は長い間徹底的に企画し、準備して、ある程度『完成された姿』を見せます」

「今回のプロジェクトはこの2つの文化を合わせており、準備は長い期間徹底的にしますが、その過程をファンにお見せする計画です。日本だけではなく、世界中で勝負できることを目標に、みなさんが誇らしく思えるグローバルグループが誕生できるよう、最善を尽くします」

このプロジェクトが成功すれば、「男性グループ」を育てていく構想もあるという。

国境や文化の垣根を超えた、新たなアイドルグループの誕生へ━━。2019年、このプロジェクトに大きな注目が集まりそうだ。


西野カナ、無期限活動休止を発表 「日常の中で音楽を楽しみたい」

西野カナさん

西野カナ、無期限活動休止を発表「色々と挑戦したい」

歌手の西野カナ(29)が8日、自身の公式サイトで来月3日の横浜アリーナでのライブ終了後に活動休止することを発表した。期限を決めずに「色々と挑戦したい」としている。

「いつも応援してくれる皆さんへ」と題したメッセージで、2008年のデビューからこれまでを振り返り「もうすぐ、ずっと楽しみにしていた30代。 旅行が好きなので、行きたい場所もまだまだありますし、やってみたいこともたくさんあります」と思いをつづると「来月のライブを終えたら一度活動を休止して、期限を決めずに色々と挑戦したいと思っています」と報告した。

一方で「やっぱり私は歌が好きで、これからもきっと毎日のように歌を口ずさんでいる気がします。またいつか皆さんの前で歌える日が来るまで、日常の中で音楽を楽しみたいと思っています」と率直な思いを明かし、「最後に、こんな私をいつも応援してくれる皆さんに心から感謝の気持ちを伝えたいです」と呼びかけた。


No Picture

BTS原爆Tシャツ問題 「語られない」背景とは? K-POP研究、第一人者の分析

BTS

「日本と韓国、お互いのナショナリズムばかりが強調されて、BTS(防弾少年団)を通していまのK-POPを考える機会が失われた」――。こう語るのは『K-POP 新感覚のメディア』(岩波新書)などで知られる北海道大学のキム・ソンミン准教授だ。

ソウル生まれ、研究のため来日して日本の大学でメディア文化研究を続ける第一線の研究者である。彼の目にBTSの原爆Tシャツ問題はどう映ったのか? 韓国の視点、日本の視点、そしてK-POPの歴史が複雑に絡まりあう問題を聞いた。

経過を整理する

まず簡単に経過を整理しておこう。

11月9日に放送された人気音楽番組「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で、予定されていた韓国のヒップホップグループBTSの出演が直前にキャンセルとなった。

BTS についてメンバーが原爆投下を肯定するTシャツを着ていた、と一部メディアで報じられ、ネット上で「反日だ」などと批判の声があがっていた最中でのキャンセルだった。

問題とされたTシャツは「ourhistory」の商品で、原爆が落とされた直後のキノコ雲の写真と、解放、愛国心といった言葉や万歳をする人々が写っている写真がプリントされていた。製作者は「反日の意図はなかった」としている。

さらに過去にナチス親衛隊の記章をつけた帽子、ナチスを連想させるステージパフォーマンスを披露していたことも問題視され、アメリカのユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」も彼らに抗議をした。

BTSのメンバーが着用していたとして問題になった「原爆Tシャツ」。

彼らは反日でナチス支持なのか?

《これまでのBTSの発言やインタビューからも明らかですが、彼らが「反日」だとか「ナチス支持」というのはあり得ないことです。

日本だけでなく、グローバルにファンを獲得し、アメリカでもライブ会場を満席にし、チャートも賑わせています。音楽的にもブラックミュージックの強い影響を受けている。

ファンを傷つけるようなことをする理由がない。私はTシャツについては韓国と日本で歴史の受け止め方が違うということに尽きると考えています。》

韓国社会にとっての原爆とは何か。その背景にあるもの

韓国の歴史、特に近代以降の歴史は日本の植民地支配の歴史でもある。支配した側である日本とまったく同じような歴史認識ではない。

《韓国社会が原爆投下に対して、日本社会のように特別な思いを抱いているかと言えばそれは違います。

広島や長崎に人が住んでいたことへの想像力、原爆について日本に住む人たちがどう受け止めるのか。そこに対する感受性が足りないのは事実でしょう。当時、7万人以上とされる朝鮮人が被爆したことも十分に知られていないですし。

韓国にとって第二次世界大戦の歴史は、日本の植民地支配からの解放の歴史です。韓国は常に「被害者」だったので、他の社会からみてどうかと問われる機会が少なかったし、配慮が求められる場面も少なかった。

Tシャツをデザインした会社も「反日の意図はない」としていましたが、それは本当でしょう。

だから問題がないわけではない。K-POPはグローバルに広がっているため、これまでと同じではなく今まで以上に他の人たちからみてどうなのかを考えていく必要があります。》

K-POPが積み上げてきた文化

ナチスを連想させるパフォーマンスについてはどうか。

これは2017年9月に韓国のソ・テジさんのデビュー25周年記念ライブでBTSがゲスト出演した際に披露された。

《ナチスについても同じです。コラボ舞台を披露したソ・テジは、韓国にヒップホップやラップを定着させる一方でデビュー以来一貫して社会的なメッセージを発してきた韓国を代表するアーティストです。

今回のパフォーマンスで使われた「教室イデア」という曲も、全体主義的な教育制度や競争を促す社会を痛烈に批判した曲です。

つまり、ソ・テジからBTSまでの「文脈」を理解している人からすれば、彼らがナチスに賛同するパフォーマンスをするはずがないということは常識とも言えることです。

しかし、いまK-POPを受容しているグローバルなファンの大半は、当然そのような文脈を共有していない。

だから、本来なら当たり前のようにわかってもらえたはずのそのようなパフォーマンスをするときも、より多くのことを配慮しなければならなくなっているし、今後はそれがまた当たり前なことになっていくでしょう。》

吹き荒れる「ナショナリズムの政治」

ただし、とキム准教授が指摘するのが過熱化する社会の反応だ。

《本来なら、傷ついたり、戸惑いや違和感を感じた人びとに対して、BTSが丁寧に説明、謝罪して終わりの話です。

インターネットで「反日」だと批判されたからといって、テレビ朝日は出演中止をするべきではなかったと思います。

これによって「ナショナリズムの政治」が前面に出てきました。インターネットを含めたメディア上でも、日本からは「韓国の反日アイドル」というバッシングが吹き荒れ、韓国ではそれに反応して「日本人はBTSが日本のアイドル以上に活躍したことを妬んでいる」といった声があがる。

ナショナリズムの政治は「お前は韓国と日本、どっちの味方」なのかと問題を単純化します。BTSが生み出した音楽やカルチャーは議論されず、お互いのナショナリズムをぶつけ合うだけになる。

こうした単純なフレームの中では、今までBTSを応援してきたファンたちはほとんど何も言えずに沈黙するしかなくなるのです。

テレビ朝日の対応はこうした単純なフレームワークを強化するものだったと私は考えています。》

ナショナリズムが排した大事な論点

ナショナリズムが前面に出てくることによって失われてしまうのはファンの声だけではない。K-POPが積み上げてきた豊かな表現であり、日本のアイドルとは明らかに異なる社会に込めたメッセージも議論の対象ではなくなる。

《K-POPの世界では女性アイドルも男性に媚びるようなことはしない。ジェンダー問題も歌うし、社会に対して発言もする。BTSも社会に対するメッセージや彼らのアイデンティティを歌う。

K-POPは「アイデンティティの政治」が展開されるメディアであるとも言えるのです。K-POPは常に新しいものを取り込みながら、前に進んできたという歴史があります。

それはヒップホップやクラブミュージックのような音楽的要素もそうだし、例えばMeTooのような社会の変化も積極的に取り込む。

その中では当然だけどミスも起こるのです。BTSだってジェンダーの視点から問題がある歌詞ではないかと指摘されたこともあります。

彼らは問題をファンとのコミュニケーションで乗り越えてきました。ミスから生まれるコミュニケーションを大事にしてきたのです。日本のメディアの対応は過剰であると同時に、コミュニケーションの機会を奪ってしまっている。》

奪われた学び合いの契機

過熱するナショナリズムの政治は、アイデンティティの政治を飲み込んでいく。

《今回だって、BTSを通じて韓国のファンは日本の歴史にとって原爆はどのような意味があるのか、日本のファンは韓国の歴史がなぜ「解放」に重きを置いて語られるのかを理解しあう良い機会になったと思うのです。

それが彼らの音楽をちゃんと追いかけてきたファン以外の人の声によって、ナショナリズムの問題に押し込められてしまったことは残念としか言えないですね。》

それでも前を向くK-POP

K-POPは2000年代に入ってからも韓国政府が積極的に「利用」しようとしてきた歴史もある。K=韓国(Korea)の意味合いが強くなった時代だ。だが、今はどうだろうか。BTSに代表される新世代のK-POPはグローバルに消費され、世界から注目されている。

Kよりも、新しいPOPカルチャーという意味が強まってきているとは言えないだろうか。

《まさに今K-POPはPOPがKを乗り越えようとしています。韓国という国家、韓国人というナショナリズムを超えた新しいポップカルチャーに成長している。

韓国文化には立ち返るところがないのです。政治的にも戦後、南北分断と冷戦体制による緊張状態のなかで長く続いた軍事政権に立ち返るわけにはいかない。

前に向かうしかないのです。新しいカルチャーを取り入れ、グローバルに広がっていくK-POPはその象徴的な動きでしょう。

彼らがグローバルにメッセージを届ける。それが新しいポップとして受容されている。原爆、ナチスイメージの騒動は成長したK-POPは外からの視点を意識しなければならないという教訓になったと思います。

まだまだK-POPもBTSも成長の途上なのです。》


No Picture

「ベストアーティスト2018」 出演者は?(一覧)

音楽特番『ベストアーティスト2018』(日本テレビ系)が11月28日(水)、夜7時から9時54分まで、3時間にわたって生放送される。

総合司会は嵐の櫻井翔さん、司会は羽鳥慎一さんと徳島えりかさん。2018年のテーマは「いつもそこに歌があった」で、平成を彩るヒット曲が披露されるという。

出演者は以下の通り。(※50音順)

『ベストアーティスト2018』出演者一覧

E-girls

AKB48

EXILE

KAT-TUN

キアラ・セトル

Kiroro

King & Prince

欅坂46

コブクロ

ゴールデンボンバー

嶋 大輔

GENERATIONS from EXILE TRIBE

ジャニーズWEST

Superfly

Sexy Zone

高橋洋子

DA PUMP

西野カナ

NEWS

乃木坂46

Perfume

平井 堅

B.B.クィーンズ

Hey! Say! JUMP

星野 源

ポルノグラフィティ

WANIMA

2018年を象徴する楽曲を披露

番組では、「2018プレイバックメドレー」と題して、King & Princeの「シンデレラガール」やB.B.クィーンズの「おどるポンポコリン」など、2018年を象徴する楽曲も披露されるという。また、Kiroroやコブクロ、西野カナによる「ウェディングソングメドレー」も披露される。


No Picture

BTS(防弾少年団)の「原爆Tシャツ」と「ナチス」問題を、私たちはどう考えるべきか?

BTS(防弾少年団)

防弾少年団(BTS)の『ミュージックステーション』出演が見送られた11月8日、韓国の音楽ケーブルテレビ局・Mnetの『Mカウントダウン』では、IZ*ONE(アイズワン)が初登場で見事に1位を獲得した。

10月29日にデビューしたばかりのIZ*ONEは、音楽サバイバル番組『PRODUCE 48』から生まれた12人組のガールズグループだ。日本からはHKT48の宮脇咲良と矢吹奈子、AKB48の本田仁美が加わっている。1位獲得直後には、日韓台混成のTWICEから祝福されていた。

東アジアの音楽シーンが日本を中心に回っていた状況は、10年ほど前にすでに終わっている。かと言って、K-POPが東アジア全域を支配したわけでもない。支配-被支配といった単純な構図ではなく、さまざまな国のひとびとが、場所(国)にこだわらず流動的に活動するグローバル状況が訪れている。

IZ*ONEにしろTWICEにしろ、あるいはタイ出身のメンバーを含むBLACKPINKにしろ、そして欧米圏でも大ヒットしているBTSにしろ、K-POPと呼ばれるそれらの表象には韓国的なナショナリティはさほど見られない。

が、そうした状況にときおり反動的な力が生じることがある。今回のBTSメンバーの「原爆Tシャツ」騒動はその典型だ。

今回のような騒動は、これまでもしばしば見られてきた。ただその場合、たいていは「旭日旗」を連想させるデザインが韓国で問題視されるケースだ。K-POPだけでなく、きゃりーぱみゅぱみゅなど日本のアーティストもその対象とされたことがあり、また、サッカーの国際戦でも問題となってきた。今回のBTSの「原爆Tシャツ」騒動は、(意味は大きく異なるが)これまで韓国で見られきた「旭日旗」騒動と一見よく似ている。

こうしたとき常に失望を感じるのは、そこでコミュニケーションが幾重にも渡って断絶していることだ。それを理解するためには、主要な登場人物それぞれが現在置かれている立場を考えてみるといい。

どこまで明確な意図をもって着用していたか?

まず「原爆」プリントのTシャツを着ていたBTSは、11月13日現在この件について公式な声明を発表していない。今後なんらかのメッセージを発信する可能性はあるが、かなり難しい状況に置かれていることは想像に難くない。なぜなら、そのTシャツには、「原爆」写真だけでなく日本の統治から解放されて万歳をするひとびとの写真があり、さらに「Liberation(解放)」と「Patriotism(愛国心)」という単語もプリントされているからだ。

BTSのメンバーが着用していた「原爆Tシャツ」。

BTSのメンバーが着用していた「原爆Tシャツ」。

日本からの解放は、韓国におけるナショナリズムを形成する主要な構成要素である以上、BTSメンバーはこの件で簡単に謝罪することはできない。もし謝罪すれば、今度は韓国で強いバッシングにあうからだ。

つまり、BTSは謝罪をしてもしなくても、日本と韓国のどちらかでバッシングを受け続ける可能性がある。いまだに沈黙を続けるのは、板挟み状況にあると考えていい。

次に、あの「原爆Tシャツ」をどこまで彼らが明確な意図をもって着用していたか、ということを考えなければならない。業界的に考えて、芸能人が表舞台に出るときの衣装はおおむねスタイリストが準備する。彼らはそれを着ただけの可能性もある。これは、11月12日になって米ユダヤ系団体が非難したと報道された、過去のナチスを模した衣装(帽子)やステージ上での振る舞いについても同様だ。

KPOP Boyband BTS Holocaust Photoshoot from r/trashy

ナチスを想起させるパフォーマンスをしたとして、批判を浴びている。

たとえ私物だったとしても、Tシャツやナチス帽のメッセージをどれほど意識して着用していたかは不明だ。それは、一般的にTシャツにプリントされた英語やイラストをしっかり確認して購入するひとがどれほどいるか考えれば明らかだろう(なお筆者はちゃんと確認するが)。なんにせよ、日本でも活動するBTSメンバーが明確な意図をもってあのTシャツを着たとは考えづらい。

また、「原爆Tシャツ」やナチス帽の意匠に含まれるメッセージを正面から捉えれば、日本への原爆投下とナチスをともに肯定することは、きわめて両立しがたい。第二次大戦期に独裁政権下でファシズムを突き進み、イタリアを交えて三国同盟を結んでいた両国の片方を否定し、片方を肯定したことになる。明確にこれは矛盾する。つまり、本人たちにおそらく大した意図はない。

もちろん意図の有無が、かならずしも行為の責任を回避する理由とはならない。原爆は多くの犠牲者を生み、深い傷を残した。ナチスの行為は「人道に対する罪」であり、その反省から戦後の国際社会は出発している。「意図はなかった」ですまされるテーマではない。ただ、彼らが現在置かれている板挟み状況を冷静に考えることで、沈黙の理由と議論を前向きに進める糸口も見えてくるはずだ。

一件の中心はインターネットの言論にある

一方、今回の一件のもうひとつの当事者であるテレビ朝日の態度もいまひとつはっきりしない。公式には以下のように説明されている

「以前にメンバーが着用されていたTシャツのデザインが波紋を呼んでいると一部で報道されており、番組としてその着用の意図をお尋ねするなど、所属レコード会社と協議を進めてまいりましたが、当社として総合的に判断した結果、残念ながら今回はご出演を見送ることとなりました」

その原因がTシャツであることは明示されているが、この文章からはそれがなぜ問題であるかについては曖昧だ。

ただ、仮に、テレビ朝日側が出演見送りの判断をしたとすると、その理由は簡単に想像がつく。おそらく視聴者からのバッシングを恐れている。しかもそれは局に対してだけでなく、スポンサーへの抗議も彼らは意識している。実際、2011年のフジテレビへの「韓流への偏重」抗議デモではそうした動きも生じた。

今回の一件の中心は、やはりインターネットの言論にある。

「原爆Tシャツ」のBTSメンバーが確認されるのは、昨年7月の有料動画サイトだったが、それが10月になって急激にネットで問題視され拡散した。その際、BTSを批判する言葉として頻繁に付記されたのが「反日」という言葉だ。拡散しているのは、ネット右翼と見なされる一部の嫌韓層とみられる。

辻大介氏など複数の調査では、こうしたネット右翼はネットユーザーの1~2%ほどでしかない(※1)ことが報告されている。また、田中辰雄氏と山口真一氏のネット炎上の調査によると、炎上の参加者もネットユーザーの1%ほどでしかない(※2)という。

つまり、非常にごく少数のネットユーザーの声に、多くのひとびとが翻弄されていることになる。にもかかわらずそれが社会的に目立つのは、彼らの声が大きく、同時に過激であるためだ。ネットでは声の大きさが、人数の多さと混同されがちになる。

少数者の声だからかならずしも無視していいわけではないが、彼らによる「反日」という非難は当然のことながら状況を(おそらく意図的に)単純化しているにしか過ぎない。

多くの韓国人は、73年前に日本の統治から解放されたことを喜んでいる。しかし、同時に多くの韓国人が日本文化に親しみ、日本人と交流を持っているひとも少なくない。100%日本を否定するひとも、100%日本を肯定するひとも、筆者の感覚だと、おそらくそれぞれ数%しかいないだろう。もしそうだとしたら、日本のネット右翼層と同じくらいの割合だ。

BTS

マスコミの力で「社会は極性化していく」

ここでの問題は、こうした説明するまでもないごく単純な状況に、日韓両国が大きく左右されてしまうことにある。なかでも、マスメディアがそれを増幅している側面は否めない。

今回の一件も、ネットの騒ぎにテレビ朝日が過剰に反応してしまい、結果的に事態を大きくしてしまった。こうした防衛機制が、ごく少数の者による大きな声の「反日」批判を、形式的に追認してしまうことにつながる。

このテレビ朝日の反応は、他のマスコミによってさらに増幅される。たとえばスポーツニッポンは、11日10日付で「BTS ”原爆T”で年末音楽特番全滅も」と煽り立てた。こうした展開こそがネット右翼の思う壺であり、そして社会は極性化していく。

むしろ今回の一件によって想像できるのは、『Mステ』スタッフやテレビ朝日の幹部に、現在の深刻なネット状況を読める存在がまるでいないことだ。アメリカ社会の分断とトランプ現象がネットによって引き起こされていると報道しているテレビ朝日が、まんまとネット状況に引きずられてそれに加担しているのは、非常に残念な状況と言える。『報道ステーション』で今回を一件をしっかりと検証すれば良いだろうが、おそらくそんなことはないだろう。

もちろんこれと同様のことは、韓国側のマスコミにも言える。たとえば「旭日旗」騒動において、ネットから発せられた極右の声を大きく増幅させているのはマスコミだ。「旭日旗」デザインの洋服を着た日韓の芸能人に、明確な意図があるケースはほとんどない。芸能人のちょっとしたミスを大騒ぎする一部ネチズンの声を、国際政治の問題に増幅させてしまう。それは報道姿勢としてやはり次元が低いと言わざるを得ない。

「原爆」について考えてほしい──広島出身の私からの希望

最後に今回の一件の幕引きについて、提案をしておく。

まずBTSは謝罪をする必要はない。なぜなら、炎上目的のごく一部の存在の行為をより激化させてしまうことに繋がりかねないからだ。彼らの目的は原爆について是非などではなく、ただの差別でしかない。

本当に彼らが熱心に原爆の是非を考えているならば、安倍総理がノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の事務局長との面会を拒否したこと(2015年)や、安倍政権下の日本政府が核兵器禁止条約交渉に不参加だったこと(2017年)も強く批判してきたはずだ。だが、むしろネット右翼はそうした安倍総理や日本政府の対応を強く肯定してきた層だ。よって、本気で議論をするつもりがあるとは思えず、謝罪をする必要はない。

だが、そうではないBTSやK-POPのファンに、「原爆」についてどう考えているか話すことはあってもいいだろう。彼ら自身の言葉で、その思いを丁寧に説明すればいい。

この「原爆」とは、単に広島・長崎に原爆が投下されたという事実だけではない。その犠牲者には、当時日本国民であった約4万人の朝鮮人が含まれていたことや、今年になって急展開した朝鮮半島の南北融和のなかで北朝鮮の核が主要議題であることも含まれる。「原爆」について考えてほしい──それは平和公園近くの高校に通った広島出身の私からの希望でもある。

BTSのリーダー・RMは、9月に国連で演説した。そこでは印象に残るこうした一節がある。

「昨日、私は間違いを犯してしまったかもしれません。でも、昨日の私は私です。今日の私も、過ちや間違いをともなったままの私です。明日は、ほんのちょっとだけ賢くなっているかもしれませんが、それも私です。これらの過ちや間違いが、私という人間であり、私の人生という星座の中で光り輝く星なのです。私は、ありのままの自分、過去の自分、そして将来なりたいと思う自分を、愛することができるようになりました」

ひとは間違うこともある

日本も韓国も「一発レッド社会」であってはならない。ミスをしたひとを容赦なく叩き続け、倒れてもさらに蹴り続けるような社会はだれも望んではいない。

日本と韓国の学校では常にイジメが大きな問題となっており、自殺率も先進国のなかで長らくトップ3に位置し続けている。そして、そんな緊張した社会に身を置いて、いつか自分や自分の愛するひとがミスをしたときに標的となる可能性について、少し想像してみるといい。

ひとは間違うこともある。BTSは「原爆Tシャツ」で失敗をした。国際的には決して許されない「ナチス」を連想させる衣装を着た。立ち止まって原爆やナチスについて考えて、自分の言葉で日本や韓国のファンに語りかけ、明日はまた一歩を踏み出せばいい。それでいいじゃないか。

 ◇

※1:辻大介「インターネット利用は人びとの排外意識を高めるか──操作変数法を用いた因果効果の推定」  『ソシオロジ』63巻1号(通巻192号)2018年

※2:田中 辰雄、山口 真一『ネット炎上の研究』(2016年/勁草書房)

 ◇

【UPDATE 2018/11/14 01:30】

BTSが所属するBit Hit Entertainment(ビッグヒットエンターテインメント)は13日夜、公式FacebookやTwitterを通して、「原爆Tシャツ」やナチス風のパフォーマンスに関する見解と謝罪文を発表。「傷ついたすべての方々に丁寧に謝罪いたします」とコメントした。

■松谷創一郎氏 プロフィール
1974年生まれ、広島市出身。商業誌から社会学論文まで幅広く執筆。得意分野は、カルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネス業界について。現在、『Nらじ』(NHKラジオ第1)にレギュラー出演中。著書に『ギャルと不思議ちゃん論』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)、『文化社会学の視座』(2008年)等。社会情報学修士。武蔵大学非常勤講師。


CLOSE
CLOSE