kosodate

娘はかわいいし、幸せ。なのに苦しい。 産後うつと強迫性障害に苦しんだ2年半の記録

「生き地獄みたいなところで、ひとりで戦わないといけなかった」

長女を産んでからの約3年、産後うつと強迫性障害に苦しめられたイラストレーターの藤田あみいさんは、当時のことをそう振り返る。藤田さんにとって初のエッセイ集となる『懺悔日記 子どもの愛し方を知るまで』(マガジンハウス)は、壮絶な戦いの記録だ。

彼女は何と戦い、どんな風に苦しみ、どうやって平穏な日常へと戻ってくることができたのか。藤田さんに話を聞いた。

産後うつ:出産後2~3週間、または数カ月経ってからイライラ、疲れやすさ、無力感、不安発作、食欲不振、不眠などの症状が継続するうつ病の一種。

強迫性障害:自分の意思に反して湧き上がる強い不安について「考えずにはいられない」「しないではいられない」とこだわり、同じ行動を繰り返してしまう不安障害の一種。

「人見知りしない」の一言が不安を引き起こした

藤田さんは「懺悔中」のブローチをつけていました

――日常的にあまり使わない「懺悔」をタイトルに選んだのはなぜでしょう。

私、「懺悔」って漢字で書けないし(笑)。使わないですよねぇ。

そもそもは昔、妹が子どものときに書いていた日記から取ったんです。「お姉ちゃんとケンカした」とか書いてあるだけの普通の日記なんだけど、タイトルが「ざんげ日記」。

入院中に一気に(原稿を)書き上げたときに、そのことを思い出して「あ、懺悔日記ってぴったり」と思ってそのままつけました。死にそうになっていたのに何言ってんの、って思われるかもしれませんが。

――2歳の娘さんと離れて、ストレスケア病棟に9日間入院していた時期ですね。藤田さんが、産後に精神的な「しんどさ」を感じたのはいつ頃からだったのでしょうか。

娘が生後8カ月になった頃です。それまでは頑張って「いいお母さん」になろうとしていた。

でも見学に行った保育園で園長先生に言われた「この子、人見知りしないね」いう言葉に引っかかって、ネットで調べたら「発達障害」「自閉症」という検索結果がたくさん出てきて。

そこから悩みすぎて、どんどん苦しくなっていきましたね。

――保育士の「人見知りをしない」という何気ない一言が、結果的に強迫性障害と産後うつのトリガーになってしまった。

でも、きっかけはなんであっても結局はそうなっていたんだと思います。私の場合は「娘が発達障害かもしれない」という不安の形をとったけれど、もしかしたら他の誰かにかけられた別の一言がきっかけになっていた可能性もあります。

いずれにせよ、8カ月で心の限界が来たんでしょうね。よく8カ月もった、ともいえるかもしれないですが。

ポジティブなように見えて縛りつけてくるもの、が世間にはたくさんある

――不安に飲み込まれて、抜け出して、また飲み込まれて。今ふり返って、強迫性障害や産後うつの頃は、どんな心境でしたか。

先が見えないというか、真っ暗闇でした。地獄。生き地獄みたいなところで、ひとりで戦わないといけなかった。つらかったです。

娘はかわいいし、幸せ。なのに苦しい。いつ壊れるかわからない幸せを手にしているから、壊れたらどうしようという不安がずっと消せない。

壊れるかもしれない幸せを持っていることが怖かった。この幸せがなくなったら、自分が自分ではいられなくなるんじゃないか、って。

――初めての子育てで、同じような不安を感じている人は多いと思います。

取り込まれますよね。不安に。「子育てはこうあるべき」とか、「こうしたら子どもは幸せになれる」とか、ポジティブなようで自分を縛るだけのものに、すごく影響を受けてしまう。

こっちは親をやるのは初めてだから、どうやって育てたらいいかわからない。だからとりあえず、よくある「型」に自分も子どもも何とかはめようとするんだけど、うまくいかなくなって、うわーってなるという……。

――藤田さんの場合、産後うつと強迫性障害が絡み合って併発したのでしょうか。

強迫性障害が先でした。その症状が酷くなって、ちょっとよくなってきた後にうつが残った、という感じですね。

死にたいわけじゃなく、思考をやめたかった

――心療内科に相談し、精神安定剤を服用することで症状は快方に向かいます。けれども再び大きな不安の渦に飲み込まれてしまう。母娘ふたりで自宅での夕飯を終えたある日、日常の延長線上のように、藤田さんが大量に薬を飲むシーンが淡々と描写されています。

読んでいる人にとっては、いきなりと感じますよね。あれは自殺未遂って言われたら確かにそうなんだけど、私としては、とにかく良くなりたくて色んなことを試してみて、その中の1つだった、という感覚なんです。過激な方法ですけど、そういうやり方しかあのときはできなかった。

――「死にたい」のではなく、苦しさから逃れたかった?

はい。死んじゃったら気持ちはなくなるじゃないですか。そうなれたらどんなに素敵だろうか、とそのときは考えていて、その思考をやめたかったんです。

頭が考えることに疲れちゃってたんですね。

だから、「寝たい」という気持ちと一緒くらいの感覚だったんです。寝て起きたら目は覚めるじゃないですか。そしたらまた不安について考えてしまう。もう目が覚めないようになりたかった。

死にたいわけじゃなく、思考をやめたかった

――2度の自殺未遂を経て、症状は悪化。それでも「娘のために絶対に治したい」という希望を原動力に、「認知行動療法」というカウンセリングを自力で見つけ出します。

「強迫性障害には認知行動療法が効く」っていう情報をネットで見つけたので、調べてみたら偶然、近所にそういう病院があったんです。早速そこに駆け込んで。

最初は(これまでの経緯をお話するだけだったので)「なんでこれでお金取られるんだろう」って思ったんです。でも3回目くらいのときに、ちゃんとバチッと答えを導いてくれることがあって、「これはすごい。カウンセリングってこういうことなんだ」って初めてわかった。

いい先生に出会うことができれば、カウンセリングはすごくいい治療法だと私は思います。

あとは「書く」ことによって消化できた部分も大きい。出版のお話をいただいたものの、すごく嫌な思い出だったので本当は本にしたくなかったんです。それでもあの苦しい経験を少しでもプラスに働かせたいっていう気持ちもあって、入院中に一気に書き上げました。

正直に言うと忘れたい記憶だし、今も忘れつつあるんですね。だから、今まさに産後でつらい思いをしている人たちに、今の私が完全に共感できるか、っていうと多分できない。

でも、この本の中の「私」だけは誠実だと思うので、この本が誰かの助けになれば、という気持ちです。

――あとがきの最後に書かれている「娘へ」のメッセージからは、いつかこの本を読む娘さんへの愛と配慮が言葉を尽くして語られています。

娘がいつ読むのか、そのタイミングは慎重に考えようと思っています。「好きだから苦しかった」ということが、ちゃんと伝わるように書いたつもりだけど。伝わるといいんだけどな。

※後編は近日中に公開します。

(取材・文:阿部花恵、編集:笹川かおり)

藤田さんの新著『懺悔日記 子どもの愛し方を知るまで』はマガジンハウスから発売中。

Read More

No Picture

赤ちゃんの検診から離婚の相談まで。家族のことは「ネウボラおばさん」に任せよう

8月8日、フィンランド滞在4日目。フィンランド外務省主催の、世界16カ国の若手ジャーナリストがこの国について学ぶプログラムに参加している。

今日は「ネウボラ」を訪問した。

ネウボラは、フィンランドの育児支援の拠点だ。地方自治体が設置、運営し、妊娠中から出産、子供が学校に入るまでの間、子どもとその家族を支援する。日本でも一部の自治体が、この制度を取り入れているところがあるが、まだ「知る人ぞ知る」という段階だろう。

この人たちなしには、ネウボラが回らないと言われているのが、「ネウボラおばさん」だ。

子どもや母親の健康状態を定期的に検診でチェックするが、フィンランドでは、この仕事をすべてネウボラが担う。日本でいえば、保健師のような仕事だ。専門学校を卒業して資格もある専門職だ。

施設を案内してくれた、「ネウボラおばさん」の統括、ヘレナ・ミークライネンさん

私たちを案内してくれた「ネウボラおばさん」の統括、ヘレナ・ミークライネンさんによると、ネウボラは1922年に始まり、今では98%以上の親が利用している。すべて税金でまかなわれているため無料で利用できる。フィンランド語が話せない場合は、通訳も無料でつけてくれるのだという。

親は「ネウボラおばさん」に育児や家族のことで、気になることを質問し、相談にのってもらっている。その相談は、多岐にわたる。匿名のチャットを使えば、面と向かっては言いにくい内容も相談できる。

若い人でも「ネウボラおばさん」と呼ばれている。日本で呼ばれる「おばさん」のように、ネガティブな意味はまったくなく、むしろ若いことを馬鹿にされないため、ポジティブに捉えられている

「子どもが生まれた後の夫婦生活も相談できますよ。もちろん、離婚の相談も」と、ミークライネンさん。

「そんなことまで聞けちゃうの?」とびっくりするばかりだ。

フィンランドは離婚率が50%を超す。家族の問題は、様々なことがすべてつながって出てくる。「離婚相談所」ではなく、子どもや親の健康状態や生活を見守る延長で、専門家に相談できるのはどんなに心強いことだろうか。

フィンランド在住のライター、靴家さちこさんは、1人目と2人目の子どもを産んだ際、ネウボラを利用している。そのときの様子を聞いた。

ーー最初に利用したのは?

1人目の子どもを日本で産んで、2004年3月の7ヶ月検診の時からネウボラにお世話になりました。

ーーどんなことを相談しましたか?

まず、受けておくべき予防接種の種類が日本とフィンランドでは違ったので、フィンランドで受けておく予防接種の種類について説明を受けました。

我が家の場合、父親がフィンランド人で母親が日本人だったので、子どもに対して親がどの言葉を使えばいいのかも聞きました。

ーーえ!国際結婚カップルの育児も相談できるんですか?

はい、すぐに答えてくれました。

実は、日本でも同じ質問を医師に尋ねたことがあるのですが、「…」といった感じで、専門外なのになんで聞くんだ、という顔をされました。

父親に同じ質問をしたのですが、3人の共通言語である英語で話しかけることに固執していました。しかし、私はなんだかしっくりこなかったんです。

そこで、ネウボラおばさんに聞いてみようと思ったんです。そしたら、母親は母親の言語で、父親は父親の言語で話しなさいと教えてもらいました。

ーーネウボラおばさんは、なぜ即答できたのでしょうか?

フィンランドでは、私たち家族のように、母語の違うカップルの結婚が珍しくないからだと思います。そもそもフィンランド語とスウェーデン語の2つが公用語ですし、スウェーデン語を母語とする人は、全人口の5~6%ほどいます。

携帯電話会社「ノキア」がまだ繁盛していた頃は、世界中にノキア社員が駐在し、駐在先の人と結婚した人もたくさんいました。

その後、子どもが育てやすいからという理由で、フィンランドに家族を連れて帰ります。だから、ノキアの国際結婚はよくある話でした。

こういう背景もあって、国際結婚したカップルが言葉を含め、子どもをどう育てればいいのか、をネウボラおばさんはよく知っています。

ネウボラの待合室

ーー次男が生まれた時は、「ネウボラおばさん」にどんな相談をしましたか?

「外国人」という同じ境遇のお母さんで、話しやすい人を探していました。その機会はどこに行けば得られるのか尋ねました。

日本と同じように「公園デビュー」をしようとしましたが、そもそも共働きがメインの国なので、平日昼間、子連れの親子に出会うことがほとんどなかった。それに、やはり外国人なのでどこか「浮いた」感じがしていたんです。

それでも、誰かと子育てについて気軽に話したい…。それを叶える場所がないか「ネウボラおばさん」に聞きました。

すると、ケラヴァという街の「家族センター」という施設が、外国人の親と乳幼児が集まれる場所になっている、と紹介してもらえました。

ーー離婚の相談も受けていると聞いたのですが、これはどういうことでしょうか?

ネウボラおばさんは、子どもだけでなく親の健康状態、精神状態もチェックしています。家族の異変や問題に気づかなくてはいけませんから。

フィンランドは父親も育児するのが当たり前なので、夫婦で施設を訪れることが多いのですが、母親がいつも1人で来ているのを見ると、「大丈夫ですか?」と声をかけてくることもあります。最近寝られなくて…という相談から、離婚や夫婦生活の相談につながることもあります。

問題が深刻だと判断すれば、夫婦関係について話を聞くカウンセラーにつなげます。そのカウンセラーも、ネウボラに常駐しているのです。

ーー親や子どもの健康状態をケアする施設で、離婚の相談をするのは、日本の感覚だと不思議に思えます。同じ施設でやる意味はあるのでしょうか?

ネウボラで子どもの健康診断とともに、こうした家族の相談ができることは、とてもいいことだと思います。

カップルが親になり、子育てを巡る価値観の違いが明るみなり、衝突することはよくあることです。

どういう性格の子が生まれるかでも、2人の考えは変わってくると思います。これらは事前にはなかなか予測できないことなので、避けることは難しいでしょう。

だからネウボラでは、健康から家族関係まで幅広く聞ける環境があるのです。

====================

2018年8月、フィンランド外務省が主催する「若手ジャーナリストプログラム」に選ばれ、16カ国から集まった若い記者たちと約3週間、この国を知るプログラムに参加します。

2018年、世界一「幸せ」な国として選ばれたこの場所で、人々はどんな景色を見ているのか。出会った人々、思わず驚いてしまった習慣、ふっと笑えるようなエピソードなどをブログや記事で、紹介します。

#幸せの国のそのさき で皆様からの質問や意見も募ります。

過去の記事は、こちらから


なぜフランスは少子化を克服できたのか。その理由は、日本とは全く違う保育政策だった。

2017年、フランスは先進国の中でも高い合計特殊出生率1.88を示した。その6割が、結婚していない親からの出生ーー。

日本とは異なる視点の家族政策で先進し、少子化対策の効果を上げているフランス。5月上旬、その事例を視察しようと、2人の横浜市議がパリにやってきた。

パリ市役所で「多様化する家族のあり方」についてレクチャーを受けた前編に続き、その多様な家族を支える保育政策の視察の様子をレポートする。

前編》子どもの6割が、結婚していない親の子? フランスの出生率が高い理由

「住居と教育・保育行政は節約しない」

今回視察に訪れたのは、酒井亮介議員と山浦英太議員。ともに民間企業から市議に転身した、40代の父親だ。

山浦氏(左)と酒井氏(右)。保育関係施設の視察で両氏を迎えたのは、パリ市議会の担当議員シャルノーズ氏。

「パリの子育て支援・保育政策を象徴する場所を見たい」。横浜市議の要請に答え、パリ市家庭・児童局がセッティングした視察コースは、パリ市庁舎からスタートした。

19世紀半ばに建造された壮麗な市庁舎、その前で2人の市議を迎えたのは、パリ市議のサンドリーヌ・シャルノーズさんだ。教育・保育政策担当議員として、パリ副市長を補佐している。

最初の見学先は、パリ市庁舎に併設された公立保育園。前市長の任期中、市長公邸のアパルトマンを改造して作られたものだ。

1階は半日利用の一時保育園(定員20名)、2階部分は午前7時半〜午後6時半預かりの終日保育園(定員40名)。一つの敷地を二つの保育スタイルに分けている理由は、「保護者のニーズの多様性に応えるため」だという。

「保護者の中には、終日保育が必要でない人たちもいます。現職のアンヌ・イダルゴ市長と市議たちは『6年の任期で市内の保育枠を5000枠増やす』ことを公約にしていますが、ただ数が増えればいいというものではありません。市民の役に立つ質を確保しなければ意味がないんです」

現在パリ市内の保育対象年齢(0〜3歳)の児童は約7万3500人。そのうち53%にあたる保育枠が、740カ所の公立・公営保育関連施設で提供されている。

「保育枠を増やすにも、場所が必要ですよね。日本では今、認可保育所を作る場所自体が足りないんです」

酒井氏がそう漏らすと、シャルノーズさんは間髪言えずに答えた。

「それは政治的意思の問題ね。パリ市でも予算と場所は常に足りなくて、あらゆる点で節約ばかり。でも『住居と教育・保育行政は節約しない』と市政が定めているんです」

「例えば公営住宅を整備する際、1階部分にはまず保育所を作れないかと検討する。商業施設に入ってもらったほうが市の税収は上がりますが、私たちの公約は『保育枠を増やすこと』ですからね」

「大都市には様々なタイプがあり、ロンドンのように、中心部は商業地と定めているところもあります。パリ市政は『中心地にも、家族と子どもに住み続けてもらうこと』を選んでいます」

 

運営の細部まで、データを検証する

シャルノーズさんに案内され、終日利用の保育園を見学する。ここで驚いたのは、園内が土足可能ということだ。

数年前までは土足厳禁だったが、靴の有無によるバクテリア数の比較検査をしたところ、衛生環境に問題が出るほどの差がなかったのだという。逆に靴下の方が衛生面で劣るという結果もあり、0歳児クラス以外は土足保育に切り替えたそうだ。

「そういうことも全て、科学的に検証するのですね」と市議が指摘すると、とシャルノーズさんは語った。

「ええ。パリ市の保育担当局には、保育環境を科学的に検討・検証する部署があるんですよ。設備について考えるのは各保育園ではなく、自治体の役割なんです」

「日本はそれ、各園に任されている部分が大きい」と驚く市議たちが次に目を止めたのは、2歳児クラスのテーブルルームにあるキャスター付きの丸椅子。

保育士が座ったままでテーブル間を移動できるよう、取り入れられたものだ。こちらも土足の検証と同様、子どもとの身長差で腰を酷使する保育士の労働環境を検証し、採用が決められた。

テーブルルームの奥には、卵型の不思議なスペースが。ここは「水遊び部屋」で、毎日30分ほど、児童たちに水着で水遊びをさせている。

長組クラスの一角にあるドーム型のスペース。内部が温度管理された水遊び部屋になっている。

「これはいいんですよ!」と解説してくれたのは、同園の園長モッターギさんだ。

「0歳児はどんな遊びも集中が続かないものですが、水遊びだけは別。小さなコップを数個、目の前に置いておくと、水の移し替えだけで20分以上、じっくり遊べるんです。遊びに集中できることは、子どもの発達には非常にプラスになりますからね」

現在ではパリ市の公立園には、全てこのような水遊び部屋を設置され、児童の健康状態を見ながら活用されているという。

使用済みオムツ廃棄用のゴミ箱は、ペダルを踏むと蓋が回転して開く仕組み。オムツ替え台には階段がついており、児童に自分で上がらせて、保育士の腰への負担を軽減する。

小規模保育を、それが適した家庭に

公立保育園のインフラはパリ市の設備担当局が一貫して管理しており、どこの保育園もほぼ同じ設備が整っている。実際この園の設備は、以前ハフポストで紹介したパリ13区の公立園とほぼ同じだった。

「パリ市の保育福祉を受ける子どもたちには全員、同じものを与えるべきですからね」

どんな親から生まれても、子の権利は同じ。子ども軸で政策を考える姿勢は、保育園の設備管理でも一貫している。その最も象徴的な例が、次に案内された「家族的保育園」だった。

保育ママが集う、家庭的保育園の保育室。各児童の滞在時間は週2回・2~3時間と短いが、団体保育園に準ずる環境が整備されている。

一見、午前中に視察した保育園と同じ作り。園長の元、保育士や母親アシスタント(保育ママ)が、一人当たり子ども3人の配置で保育をしている。だが「家族的保育園」の開園時間は午前8時半〜11時までの2時間半のみで、しかも子どもたちが通園するのは週に2回だけ。

ここの園児は、「家族的保育園」に通園する時間以外(午後と平日の残り3日)は、保育ママの家で過ごしているのだ。

保育ママはフランス最大の保育手段で、託児児童数は団体保育園より多い。小規模で家庭的な保育を受けられるが、保育園とは施設や社会性の獲得の面で差異があるとされてきた。

小規模保育の良さを生かしたまま、「子どもたちには全員、同じものを与えるべき」の原則に即するため、考えられたのがこの方式だ。

「保育ママは自宅が職場。公私の切り替えが難しく、自分の保育方針にこだわってしまう危険もあります。この場所で園長や同業者と一緒に保育することで、私自身、職能をレベルアップできるんです」

そう語るのは保育ママ歴25年の大ベテラン、ファティアさん。この園には彼女を含め10人の保育ママが所属し、全員がパリ市の正規職員だ。

フランスの保育園では、担当保育士の名前と顔写真を入り口近くに掲示する習慣がある。家庭的保育園では所属の保育ママが同様に紹介されている。

保育ママが担当する子どもたちは、パリ市が割り振る。保育ママが、認可園と同等の扱いをされている、ということだ。保育ママを利用する保護者の利用料や支払い方法も、公立の団体保育園に準じている。

パリ市の保育行政を管轄する家族・児童局のコーエンさんは言う。

「保育ママの枠は原則的に、希望する保護者に与えられます。が、未熟児で生まれ体の小さい児童の家庭に、パリ市から勧めることもあります。保育の規模が小さいほど、感染のリスクは下がりますからね」

横浜市の保育行政に詳しい両氏は、頷きつつ、硬めの表情で話を聞いている。

保育ママによる小規模保育は、事故や犯罪が起こった際の懸念がある。個人宅での保育に、行政がお墨付きを与えて良いのか? 何かあったときに、誰が責任を取るのか…。

「パリ市の場合、雇用している保育ママの事故の責任は市が取ります。パリ市が保証人となり、保育ママ全員に保険をかけているんです」

「また保育ママには全員、救急対応の研修を受けてもらっていますし、事故の際の対応マニュアルも細かく設定しています。保育ママは公的機関の認可制ですから」

保育ママの前科は必ずチェックされ、認可元による抜き打ち訪問も定期的に行われている。文字通り行政が「お墨付き」を与え、それに足る体制を整えているのだ。

家庭的保育園の園庭は、園が入っている建物の屋上部分。人工芝を引き、かけっこやボール遊び、三輪車遊びなどを行う。

日本で参考にできること

上記の保育園の他、母子専門の保健所「母子保護センター」を視察した酒井 ・山浦両横浜市議。メモを取り、日本の状況をフランス側にも伝えながら、パリ市の政策を体感した。この経験は今後、横浜市にどのように役立てられるのだろか?

「具体的に取り入れるために、深掘りしたいポイントはたくさんありましたね」

酒井議員がそう感じたのは、保育士の負担を軽減する細かい工夫だ。キャスター付きの椅子、使用済みオムツの即時廃棄システムなどは、費用対効果の分かりやすい改善点だという。制度を大きく変えることなく、保育士への配慮を示せる点も魅力的だ。

山浦議員は「バランスの取れた保育の必要性を伝え、その理解者を増やすこと」を目指す。

「家庭のニーズに合わせて多様な保育を提案し、そこで親子の絆を育んでいるパリのやり方は、保育によって損なわれない親子関係の重要性を示していると感じました。あとはそれを政策に落とし込むために 、粘り強くやって行くしかないかと」

「市民の皆さんには、もっと議員を使って欲しい。切羽詰まった陳情だけではなく、こんなことが良くなったらいい、という意見交換からでも、僕たちにできることはあります」

そう語る2人が、視察の成果をどう横浜市に持ち帰るか。誰もが子育てしやすい環境づくり、保育政策に活かせるのか。「政治家の視察旅行」の意味を考える点からも、注目していきたい。

前編》子どもの6割が、結婚していない親の子? フランスの出生率が高い理由

(取材・文:高崎順子 編集:笹川かおり)


身長77センチの目線に合わせてみたら。よちよち歩きのむすめが私にくれたもの

むすめが歩き始めたのは、1歳2カ月を過ぎたころだった。ついこの間まで、お腹の中にいたはずの我が子が、たったひとりで支えもなく歩いている姿に唖然とした。

もっとゆっくり育ってくれていいのに。そう思った。

ありえないスピード感で時間が過ぎていく

私は、ハフポストで記事広告のディレクションを担当している。企画、営業、制作(取材・執筆・編集)、SNS運用、レポーティングなど仕事の内容はいろいろだ。やればやるほど仕事は増える。

裁量労働制を取り入れているため、子どものお迎えの時間になると退社できるし、リモートワークも認められている。働きやすい職場だといつも感じている。

でも――。

産休、育休を合わせて10カ月ほど仕事を休んでいたためか、復帰直後は仕事のペースを取り戻せずにいた。チームのメンバーに迷惑をかけないように、ペースを乱さないようにと、実際には無理をしていたように思う。

毎日、企画書、原稿、レポートなどの締め切りが迫っている中、新たなタスクも次々と増えていく。

仕事が片付かないまま、保育園のお迎え。家に帰ると、夫と分担しながらタスクをこなす。むすめのご飯、お風呂、寝かしつけ。洗濯を回しながら翌日の保育園の準備……。

適当に食事をとった後、パソコンを開いて仕事の続きをしていたら、深夜にむすめの夜泣きが始まることもある。

なんにも片付かない。

しっかりしなくちゃ。自分に発破をかける。もっと仕事にコミットしなくては。そう思いながら過ごしていると、今まで味わったことがない速さで時間が流れていった。

働きながら子育て。これほど恵まれた環境はない

生後9カ月でむすめを保育園に入れた。区の認可園は全て落ち、このままでは仕事復帰できないと嘆いたが、夫が勤めている企業内の保育施設(認可外保育園にあたる)に運よく入れてもらうことができたのだ。

とってもありがたかった。

子どもを保育園に送り届け、仕事に向かうときは、いつも「この子の将来のためにも、おかあちゃんがんばってはたらくぞーー」そんな気持ちになれる。だから保育園は尊い。

待機児童を受け入れてくれる保育園。

早めの退社、リモートワーク等を認めてくれる会社。

家事も育児もしっかり取り組んでくれる夫。

働く母親にとって、これほど恵まれた環境はない。

それなのに――。

思うように仕事が進まない。子どもと過ごす時間が少ない。それでも子どもはどんどん成長していく。

何もかもが中途半端。

子育てにきちんと向き合えていない自分が、子どもの成長に追いついていないようにも感じていた。

あるとき保育士さんに「〇〇ちゃん、スプーンも上手に使えるようになりましたね」と言われ、絶句した。

スプーンを持たせると、こぼして服も食卓もめちゃめちゃになるのが億劫だったから、家では私が口元にスプーンを持っていき食べさせていた。スプーンを使って食事する保育園での様子を想像して、なんともいえない寂しさが込み上げてくる。

私はいつしか、子どもの成長を素直に喜べない母親、「いつまでも赤ちゃんでいてほしい症候群」になっていた。我が子の成長がなによりのよろこびだとよく聞いていたし、それが当たり前だと思っていたのに。

むすめのペースで歩くことで見えたもの

ある雨上がりの休日だった。

いつもの公園に連れて行く。ベビーカーや抱っこ紐を使えば徒歩3分くらいの距離。

むすめが歩けるようになってからは、時には手をつなぎ、時にはてくてく歩くむすめを見守りながら、公園まで続く小道を一緒に歩く。

むすめは、一歩一歩ゆっくり歩く。立ち止まる。途中で座り込む。

時間に追われているときは、スタスタ歩いてくれないむすめにいらだったり、抱きかかえて移動したりすることもあった。

でも今日は休日だ。(もういいや。)この子のペースに合わせよう。

時間を気にせず見守ってみると、むすめは本当にいい表情で、落ち葉を拾ったり、道端に咲く花をツンツンしたり、虫を追いかけたり、目の前に広がる世界を存分に楽しんでいるようだった。

目をキラキラさせながらいろんなものに手を伸ばす。

なかなか前に進まない。徒歩3分の距離を、20分かけてゆっくり移動する。

壁には、(子どものための覗き?)穴が空いている。

雨上がりの綿毛は湿っていてくずれにくい。

消化器の箱の中に、消火器が入っているとは限らない。

まだ子どもが小さいから、なかなか遠出できないとか、出かける場所や時間帯も限られていて不自由であるとか。子育てしていると、どこか閉ざされた狭い世界にいるような気持ちになっていた。

でも、そうではなかった。子どもが、世界を広げてくれる。

落ちているものはなんでも拾う。拾ったものは、なんでもくれる。

身長77センチの目線に合わせて見たら、そこには今まで見えていなかった景色が広がっていた。時間を気にせずむすめのペースでゆっくり歩いてみたら、日々の焦りはどこかに消えていた。

むすめとの散歩は安心できる時間に変わった。

犬の散歩をしている人が、「ママとお出かけいいわねえ」と声をかけてくれたり、近所のご夫婦と挨拶を交わしたりすることも、これまで味わえなかった時間だ。

これからは、むすめの小さな成長を、楽しみながら見守っていきたい。

徒歩3分の道のりも、子どもの歩幅で歩いてみると「アタラシイ時間」に変わりました。見慣れた景色でも、新たな気づきがあることを知りました。

ハフポスト日本版は5月に5周年を迎えました。この5年間で、日本では「働きかた」や「ライフスタイル」の改革が進みました。

人生を豊かにするため、仕事やそのほかの時間をどう使っていくかーー。ハフポスト日本版は「アタラシイ時間」というシリーズでみなさんと一緒に考えていきたいと思います。「 #アタラシイ時間 」でみなさんのアイデアも聞かせてください。


サイボウズ式:子どもの寝顔しか見られないお父さんにはならない。できることを「チーム育児」で分担 ── ノバルティス、 FJ 、サイボウズ 経営者の育児観


外資系製薬会社ノバルティス ファーマ株式会社代表取締役社長・綱場一成さんが、第2子の誕生に合わせて2018年2月から育休を取得すると発表しました。

サイボウズ式ではさっそく綱場さんをお迎えし、先輩パパとして経験豊富なファザーリング・ジャパン代表理事・安藤哲也さんと、父親歴7年で3度の育休を取得したサイボウズ代表取締役社長・青野慶久の経営者3人で、イクメンならぬ”イクボス”による鼎談を行いました。

経営者が育休をするメリットや夫婦の育児分担の悩み、家事やPTAをどのように仕事と結び付けてこなしていくかなど、当事者だからこそわかるテーマで盛り上がりました。


寝顔しか見られない父親は嫌だ。「チーム育児」でお互いにできることを分担せよ

青野:綱場さん、2月から育休を取るとのことですが、普段の働き方はどうされていますか?

綱場:週3日はビジネスディナーがありますので、2日は早めに帰るようにしています。

といっても19時半くらいになりますが。ディナーの日も、子どもが寝る前には帰っていますね。

安藤:寝顔しか見られないお父さんにはなりたくないですもんね。

綱場:そうなんです。寝るところはちゃんと見届けたい。それと、朝は保育園への送りを担当しています。

綱場一成(つなば・かずなり)。ノバルティス ファーマ代表取締役社長。1994年に東京大学経済学部を卒業。2001年に米国デューク大学で経営学修士を取得、米国イーライリリーに入社し営業およびマーケティングの要職を経験。同社日本法人において糖尿病領域事業本部長等の要職を歴任し、同社オーストラリアおよびニュージーランド法人の社長も務める。2017年4月より現職。2018年2月、第2子の誕生日に合わせ2週間の育休を取得予定。

綱場:ところで、イクボスの先輩にお聞きしたいのですが、朝夕の時間は、どの家庭でもあんなに大騒ぎになるんですか? 想像以上にハードだったので……。

青野:おそらく(笑)。僕も保育園の送り担当をしていますが、もう毎日がバトルですよ。

青野慶久(あおの・よしひさ)。サイボウズ代表取締役社長。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。2011年からは、事業のクラウド化を推進。厚生労働省「働き方の未来 2035」懇談会メンバーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)

青野:あと、昨年11月に妻が病気で入院しまして。10日間、7歳、5歳、2歳のワンオペにプラスして看病。この時期は本当にきつかったですね。

安藤:それは大変だ。

安藤哲也(あんどう・てつや)。ファザーリング・ジャパンファウンダー/代表理事。NPO法人タイガーマスク基金 代表理事。1962年生まれ。二男一女の父親。出版社、書店、IT企業など9回の転職を経て、2006年にファザーリング・ジャパンを設立。「育児も、仕事も、人生も、笑って楽しめる父親を増やしたい」と年間200回の講演や企業セミナー、父親による絵本の読み聞かせチーム「パパ's絵本プロジェクト」などで全国を飛び回る。

青野:とどめに一番下の子が結膜炎になって、保育園で預かってくれなくなり……。仕方ないので、会社に連れてきて、社員にかわりばんこで見てもらうことで、なんとか乗り切りました。

綱場:うちも昨年は夏場から、手足口病やアデノウイルスなんかで、ずーっと風邪をひきっぱなしで。病院にもよく連れて行きました。

安藤:子育て中の悩みに、病気はつきものですね。最近は、小児科にパパが増えていてよいな、と思いました。パパがしっかり育児にかかわっていけば、子どもが病気のときでもママは朝から出勤できる。

本気で社会が女性活躍を目指すなら、必要なことですよね。

綱場:病児保育といえば、以前サイボウズさんが作られたムービー(※)に、子どもが病気になるシーンがあったじゃないですか。

青野:2014年に公開した動画ですね。

綱場:昨日久しぶりに見直して、はっとして反省したんです。

子育てを「プランニング」と「オペレーション」で考えたときに、「プランニングはすべて妻がやっている!」って。

青野:プランニング、ですか。

綱場:大げさかもしれませんが、例えば病児保育では誰がお迎えに行くかとか、考える部分をやっていなかった。

「半分はやろう」としている部分は、あくまでも「オペレーション」の部分だと気がついて。それも出張が多いので、4割できているかどうかも怪しく……。

安藤:別にそれほど気にしなくていいと思いますよ。家族は同じ船の乗組員。エンジンの整備なり食べ物の準備なり各自が得意なことをやればいい。

綱場:なるほど。

安藤:会社経営と同じで、家族も家族というチームの事だけしっかり考えてやる。プランニングも得意な方に任せていいんじゃないですか。

綱場:確かにこれまでの体制に私も妻も特に不満はなかったんですよ。そうか、「チーム育児」で分けてできればいいんですね。

安藤:1人で子育てをすると、どうしても今日や明日のことだけを考える顕微鏡的な視野になりがちですから。

夫婦でうまく分担して、一方は望遠鏡的な視野を持てるとすごくバランスがよくなりますよ。

「仕事か子育てか」対立軸で考えるとアンバランス。人生は「寄せ鍋型ワークライフバランス」でうまくいく

綱場:僕も妻も、子どもは何人でも欲しい。でも、自分の時間がなくなるのか不安です。日々の運動や趣味の時間は取りづらくなるのかな、と。

安藤:多少セーブするにしても、趣味は封印しないほうがいいですよ。子どもの有無にかかわらずストレス解消は必要ですし。僕はバンド活動をやめませんでしたよ。

綱場:夫婦で何か工夫されたんですか?

安藤:自分が子育てにかかわらない時間をもらうときは、必ず別日には、妻にも自由に過ごしてもらっていました

2人とも息抜きせずに「育児、すごく頑張ってます!」って力を入れすぎていると、疲れちゃいますよ。

綱場:なるほど。青野さんも趣味は続けていますか?

青野:時間がかかってしまうので野球はやめてしまったけど、PTA仲間に誘われて小学校の体育館でバスケットをしています。

1~2時間でさっと帰れて、子どもを連れていけるので。取捨選択で続けられれば、自分のストレス解消はできますね

安藤:「趣味か子育てか」「仕事か子育てか」みたいに、対立軸でバランスをとろうとすると、必ずアンバランスになる。子育てに限らず、人生は「寄せ鍋型ワークライフバランス」がいいんです。

寄せ鍋はいろんな具材が入ることで味が出るでしょう。仕事に育児、趣味、地域の活動やPTA活動なんかもたくさん入れたほうが人生はおいしくなりますよ。

綱場:PTAですか。まだ先のことだと思って、全然考えていなかったですね。

青野:ちなみに僕も安藤さんの勧めでPTAに入りましたよ。

安藤:お金出してMBAの勉強するぐらいなら、PTA会長のほうが無料でよっぽど勉強になりますよね。

青野:まだ下っ端ですけど、確かにおもしろいです。

安藤:PTAの役員はほとんど女性ですが、専業主婦もいれば、働くママもパートタイマーからフルタイムまでさまざま。

会長になると、その異なるライフスタイルの方々をまとめる必要があって、想像以上に大変なんです。

会社とは違った角度からマネジメント能力が鍛えられるので「PTA会長を経験したら、会社は楽勝です!」って、みんな名マネジャーになります。

綱場:なるほど。うちも子どもが大きくなったら、挑戦しようかな。

家事が苦手なすべての人に知ってほしい。「家事は頭が空っぽになる最高のクリエイティブタイムだ」

安藤:「子どもが増えるほど時間制約は確実に増える。すべてに全力投球はできないから、すべて七掛けくらいでそこそこ楽しめばいい」というのが僕の持論です。

仕事も、今までと全部同じようにやるのは難しい。全体の質は高める必要があるけれど、求める完成度は少し下げる。

できないでイライラしちゃったり笑顔になれなかったりすると、子どもにも絶対に伝わりますから。青野さんも1人目のときは、そうだったでしょう?

青野:24時間フルで仕事モードでしたね。家事や育児の時間は「仕事ができるのに」って考えていました。

綱場:いま、自分はまさにそんな感じかもしれません。

安藤:でも子どもが1人増えても1+1=2ではなくて減っていくものです。

経験値もあるし、上の子もだんだん手伝ってくれるようになるから負担は減りますよ。

青野:1人目は精神的にきついんですよね。初めてで何も分からないから。2人目になると精神的に余裕はできるけど、今度は肉体的にきつい。空き時間もまったくない。

それが3人目になると、いい意味で「あきらめ」になるんですよ。もう無理って(笑)。

安藤:すべてを完ぺきにはできないし、力の抜き方を覚えてくるんですよね。

青野:時間の使い方が変わりましたね。そういえば安藤さんに教えてもらった「家事は最高のブレーンワークタイム」のアイデアは本当に最高でした。

綱場:なんですか、それ?

安藤:パソコンの前だと作業に集中するし、情報があれこれ入ってくるからあまり考え事には向かないんですよ。

でも家事の時間は、手は動かしても頭は空っぽ。そんなときは、すごくいいアイデアが浮かぶんですよ。

ファザーリング・ジャパンで軌道に乗っている事業のほとんどは、この家事タイムにアイデアが浮かんでいますから。

青野:僕の場合、洗濯物を干す時間がすごく苦痛でした。それが今ではこの10分が、集中して何かを考えるのにちょうどいい

今では洗濯物があったら干したくて干したくて。妻にやらせたくないんですよ(笑)。

育休よりも時短パパ?「働き方のエコシステム」で大介護時代に備える

青野:男性の育休もいいですが、これからは「時短パパ」も流行らせたいんですよ。僕の場合、育休取得よりも時短勤務のほうが、妻はすごく助かったみたいで。

安藤:確かに女性たちからは、よく聞きますね。

青野:それに社内で社長が一番早く16時には帰るから、そのあとに続く、ママ・パパ社員はすごく帰りやすくなって働きやすくなる。

それまでにあった「早く帰るときの気まずさ」が、にじみ出る雰囲気がなくなりました。

安藤:女性たちだけでなく、育休を取る男性やイクボスが増えることも多様性のひとつ。

経営者が率先すると、やっぱり社内の雰囲気はガラッと変わりますからね。社内で仕事の回り方も変わったんじゃないですか?

青野:変わりましたね。重要な会議はすべて16時までに終わるから時短勤務の人も参加ができる。

それに、会社にいない時間が増えると 「仕事の情報共有」が当たり前の文化になる。すると自分が苦手なタスクをほかの人がやってくれる

逆説的ですが、会社にいない時間が増えるほうが、補完関係が強くなって、トータルで見ると効率が上がってるんですよ。

安藤:組織全体で「働き方のエコシステム」ができあがってくるんですよね。これから来る大介護時代の備えにもなりますね

綱場:遅くまで働く日があっても、普段は時短で帰るとかメリハリをつければできますよね。面白そうだなぁ……僕も週2回、16時に帰ろうかな。

安藤:いいですね。育休に続く、すばらしいニュースになりますよ。それに、子育て中は、子育てをしていると、仕事中に急いで歩いているだけでもさまざまな気づきを得られるんです。

子どもの歩調と合わせて歩くと、はじめて見えてくる街の風景ってあるじゃないですか。「沈丁花(ちんちょうげ)のいい香りがするな」とか。

綱場:まだまだその余裕はないですね。子どもを送りに行くときも、ベビーカーに乗せたら最速でいかに早く着けるかばっかり気にしてます。

青野:僕もそうでした(笑)。

安藤:髪を振り乱して走るのは、新米パパも新米ママも同じ。親も子どもといっしょにゆっくり成長していけばいい。焦らなくていい。仕事じゃないんだから。

仕事なら新幹線はのぞみで行くけど、子育てはこだまで行きましょうよ。各駅停車でお弁当買ったり、途中で温泉入ったり、何でもいいからゆっくり楽しめばいい

まあ、僕もこの境地に行くまで3~4年はかかりましたけどね(笑)。

青野:僕も最近になってようやく「ああ、あのとき安藤さんが言ってたのはこれだったのか……」と思う瞬間がありました。

急ぐことをあきらめて子どものスピードに合わせようとしたら、一気に気持ちの疲弊感がなくなって、今この瞬間が楽しめるようになった。カリカリしていたらもったいない。

男性だけが稼ぐ時代なら「仕事と育児の分業」も正解だった

安藤:青野さんが第一子の育休を取得された2010年は、厚生労働省のイクメンプロジェクトができた年です。男性でも育休取得が当たり前になる、そんな新時代の幕開けを予感させましたね。

青野:そうでした。文京区の成澤(廣修)区長が、日本の自治体の長として初めての「男性育休」がニュースになって。ただその後の7年間、企業はあまり続かなかったですね。

綱場:ノバルティスでも、ここ3年以上、国外含めて役員クラス以上で、誰も育休を取得していませんでした。そもそも子どもが生まれるタイミングの役員クラス以上があまりいなかったようですが。

今回、わたしが社長に就任しているタイミングで子どもが生まれるのは、すごく貴重なことかもしれませんね。

育休取得が高くない、と言われている製薬業界でも私に続いてくれる人がいるとうれしく思います。

安藤:青野さんは、経営者が子育てにしっかりかかわるメリットは何だと思いますか?

青野:育児や家事の経験から学んだことが、すごく仕事に生きますよね。以前の僕はただのコンピューターおたくでしかないんですよ。ソフトウェア業界のことなら分かるけど、他は何も分からない。

それが今では、保育や医療、教育、自治体のことが分かるようになった。週に1回スーパーで買い出しして料理もしますから、小売業もある程度分かるようになる。

安藤:親になると子どもを通して社会を見るようになるので、すごく大きな視野で見られるようになりますからね。

青野:知識が広がれば、さまざまな業界の人と話しができるようになって、さらに知識が広がりますね。

目先の仕事が1時間できなくても、そうやって知識が広がっていくことで、十分取り返せる

以前より社会全体を見通した意思決定ができるようになりました。むしろ今は積極的に、今しか学べないことを学ぼうと思っています。

安藤:僕ね、子どもは地域へのパスポートだと思うんですよ。子どものおかげで地域にネットワークができる。

僕の場合、どんなに子育てにコミットしようとしても、年間100日は出張で家にいない

3.11のとき、横浜で帰宅難民になってしまったきには、地域のパパ友がサポートしてくれてすごく心強かった。

青野:仕事とはまったく違うつながりができますからね。

安藤:出産と母乳を出すこと以外は、男性だって何でもできる。でも、家事も育児も義務としてやると楽しくない。せっかくなら、もっと楽しみたいじゃないですか

青野:「上司の理解が得られない」と聞くのは本当に残念で。

安藤:男性だけが稼ぎ手だった時代は、仕事と育児を分業したほうが時代にマッチしてた。当時はそれも正解だった。

けれども、これからは共働きが当たり前の時代。チーム育児で男性も育児、家事を積極的に行うほうが、青野さんのように視野が広がって仕事にも生きることをボスの立場にある人は、ぜひ理解して認めてもらいたいですね。

今回、製薬業界で綱場さんが育休を取るということで、IT系企業だけでない広がりが生まれた。今度こそ、多くの企業に広がっていくかなと期待しています。

綱場:僕が今回取得するのは2週間。CEOからは「もっと長くとってもいい」と言われていますし、会社で男性の育児、家事への積極参加を促すためには、育休の期間も含め、多様な働き方を考えていく必要があると思います。この点も積極的に推進していきたいですね。

文:玉寄麻衣 編集:松尾奈々絵/ノオト 撮影:栃久保誠


サイボウズ式」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2018年2月20日のサイボウズ式掲載記事子どもの寝顔しか見られないお父さんにはならない。できることを「チーム育児」で分担 ── ノバルティス、 FJ 、サイボウズ 経営者の育児観より転載しました。

産後7時間、ヒールで笑顔? キャサリン妃と自分を比べるママ、世界で続出

ウィリアム王子の妻、キャサリン妃は4月23日、ロンドン市内の病院で第3子となるルイ王子を出産しました。

キャサリン妃は、出産から約7時間後に、赤いワンピース姿でヒールを履いて(!)登場。赤ちゃんを抱えながら笑顔を見せて話題を呼びました。

スタイリストと美容師のサポートを受けて、彼女は美しく輝いていました。

彼女は”完璧”に見えましたが、一方で、産後の女性たちの非現実的なイメージを発信したと考える人もいました。

現実を知らせるために、実際に出産した直後の写真をSNSで投稿する人たちが続々登場したんです。

産後すぐって、実際はこんな感じなんです。疲れてるし、痛いし、眠いし…。キャサリン妃と比べてみたら…? さあ、みんなのユーモアに満ちた写真を見てみましょう。

Yve Jonesさん(@yvejones)がシェアした投稿 – 2018年 4月月24日午前7時00分PDT

Here you go @janegarvey1 – me and Kate 7 hours post-natal…. I’m the one on the right, in case you’re wondering…. @BBCWomansHourpic.twitter.com/6yf3H5a2T1

— Nina Warhurst (@NinaWarhurst) 2018年4月24日

Expectation vs Reality 😩😩😂😂

ruthannieparnellさん(@ruthannieparnell)がシェアした投稿 – 2018年 4月月23日午後1時35分PDT

Here you go @janegarvey1 and @BBCWomansHour here’s my hilarious comparison! I looked bloated and dreadful after 3 days of induced labour ending with an emergency C-section! pic.twitter.com/XXs0bQH5PO

— Sophie Killingley (@PrettySophieK) 2018年4月24日

When Kate steals your style and looks equally as flawless post birth 😏😅@BBCWomansHourpic.twitter.com/qwUimApZik

— rebekahbaker (@rebekahbabbage) 2018年4月25日

So since people are posting pictures comparing to themselves to #katemiddleton after giving birth, we had to join in! Here is @PriscillaQOD! pic.twitter.com/YLnOAiKUQh

— Mix969 (@mix969) 2018年4月24日

Everyone is praising Kate Middleton for being photographed hours after giving birth. It made me go back through old pictures of when I had my first, and it turns out Kate isn’t the only one with #postbirthphotos.

Who’s the princess now??? #royalbabypic.twitter.com/vdtvpAaYXu

— Anna Kruk Corbin (@annabanana0626) 2018年4月24日

This is me and my wife, about 2 hours after our son was born. Poor thing, she was exhausted. pic.twitter.com/Tp7PjNNmaR

— Helen Reeve (@Helen_Reeve_) 2018年4月24日

Kate Middleton 7 hours after giving birth Vs Me seven hours after giving birth 😂

I mean, I know she had help to look that good but I would’ve needed a mortician that specialises in putting make up on corpses and industrial quantities of sanitary wear #KateMiddletonpic.twitter.com/UHjK85gYLm

— Rachel Williams (@MrsRJWill) 2018年4月24日

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。


No Picture

ひとり目とふたり目、子育ての仕方は全然違う? ママがユーモラスに説明

二人の子供を育てるウェン・チェンさんが描く育児漫画は、親だけではなくみんな笑える。

シアトルでゲーム開発の仕事をしながら、漫画を描くウェンさん。特にお気に入りのテーマは「ひとり目とふたり目の、子育ての違い」だ。

「妊娠中」

最初の子:生まれてくる子どもの健康を考えて、高たんぱく質、低炭水化物の食品しか食べない。

ふたりめの子:食べたいものは何でも食べる。

「最初の子どもの時は、舞い上がって全力を尽くすのですが、その後はそういった気持ちが薄れてしまいます。でもそれは、ふたりめ以降の子どもに対する愛が少ないからではありません」

「ふたりめ以降は、親はもっとリラックスして子育てできるし、親としても成長している。それに子育てですごく疲れている上、お金がない場合もある」と、ウェンさんはハフポストUS版に語った。

「おもちゃ」

最初の子店員「私たちの製品はヨーロッパでデザインされた輸入物です。自然素材で作られ、化学物質BPAは使用されていません。一枚板で作られた高品質の…」

ウェンさん「説明わかりました!買います!」

ふたりめの子:捨てられているおもちゃを見て「見て!いいもの見つけた!」

ウェンさんは、漫画をウェブサイトFacebookに投稿している。ただ、育児のおもしろい面だけが描かれているわけではない。

ウェンさんの夢は漫画家だった。しかし、子供が生まれると、その夢を一時的に諦めなければならなかった。

「子供を持ったことで人生は変わりました。もっと働いたり考えたりするようになり、成長しました。それに睡眠時間が減りましたね」

「子どもの成長」

最初の子:積み木でロケットを作った子供に。「見て!私たちの子供は天才かもしれない」

ふたりめの子:立派なロケットを作った子供に。「いいのができたね。はい、もう夕ご飯にするよ」

以前は、日々の母親業を精神的につらいと感じることもあった。しかし、ストレスの多い生活を客観的に見るようになってから、変わった。前より子育てがつらくなくなったという。

「物事はおかしく感じるようになり、みじめな気持ちが減りました」とウェンさんは話す。

「衛生状態」

最初の子:「赤ちゃんの手が届くところにあるものは、全て洗って、消毒して、空気乾燥させなければ」

ふたりめの子:夫「見て、床を舐めてるよ」

ウェンさん「ハハ。面白いことしてるね」

2016年に再び筆をとったウェンさんは、漫画に親としての経験を生かすことにした。育児で感じたユーモアを笑える漫画にして、定期的に投稿している。

その理由をこう語る。

「以前は、漫画は子どものために描いていると思っていました。成長の記録であり、子ども達が自分や母親を理解するためのものだと思っていたのです」

「だけど、もし子ども達が読まなくても、私は描き続けると思う。漫画は私自身にとって大切なものです。山登りをする人にとって山が大切であるように、クマのプーさんにとって森が大事であるように」

「妊娠中の私の立場」

最初の子:女王様のように大切にされる

ふたりめの子:使用人のように働く

「子どもの初登校日」

最初の子:「あの子がこんなに大きくなったなんて信じられない。学校でちゃんとやっていけるかな。私たちのことが恋しくなったりしないかな」

ふたりめの子:「ついに解放された~~!」

「食事」

最初の子:毎日、オーガニックの新鮮な食材でご飯をつくる。「私の赤ちゃんの体に入るものは、一番いいものでなくちゃ」

ふたりめの子:「これ、冷蔵庫にあったから温めて見たよ。変な味がしたら、泣きなさい」

「洋服」

最初の子:夫「本当にそんなにたくさんの洋服必要なの?」

ウェンさん「ええ。毎日可愛い洋服を着せなきゃいけないもの」(まだ生まれていない)

ふたりめの子:夫「この子に、新しい服を買ってあげたほうがいいんじゃない?」

ウェンさん「まだいいよ。お姉ちゃんの洋服がもうすぐ着られるようになるから」

「育児」

最初の子:テレビは悪影響があるから禁止。ママがおもちゃで遊んであげる。

ふたりめの子:子ども達「機関車トーマスが見たいよお」「マイリトルポニーがいい」

ウェンさん「順番に、10分ずつ交代で見なさい!」

「母乳」

最初の子:「どうして十分に母乳が出ないのかな。なぜ、ちゃんとくわえてくれないの?痛むのはなぜ…?でも、踏ん張らなくちゃ!」

ふたりめの子:「母乳がたくさんでないの。悪いけど、ミルク飲んでね」

「熱が出た」

最初の子:「急いで!お医者さんに電話して!救急車!」夫「落ち着いて」

ふたりめの子:「39度4分になったら、お医者さんに電話しなきゃ。38度8分だから様子を見よう」

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

人生の数だけ家族のかたちがあります。ハフポスト日本版ライフスタイル「家族のかたち」は、そんな現代のさまざまな家族について語る場所です。

あなたの「家族のかたち」を、ストーリーや写真で伝えてください。 #家族のかたち#家族のこと教えて も用意しました。family@huffingtonpost.jp もお待ちしています。こちらから投稿を募集しています。


CLOSE
CLOSE