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LGBTQの候補者、アメリカ中間選挙での多数当選で「歴史的勝利」へ

ネイティブアメリカンで初めて国会議員に当選したシャリス・ダヴィッド氏 。レズビアンを公言している候補者でもあった。(AP Photo/Colin E. Braley)

11月6日に投開票されたアメリカ中間選挙で、多数のLGBTQ、性的少数者の候補者が当選確実となった。こうしたムーブメントは「レインボーウェーブ」と名付けられ、ハフポストUS版などによると、今回は、LGBTQ運動にとって歴史的勝利を収めた中間選挙になったと位置付けられている。

LGBTQをオープンにしている主要な当選者は以下の通り。

コロラド州知事にゲイの男性が当選確実に、オレゴン州知事選ではバイセクシュアル公表現職が再選へ

コロラド州知事に当選確実となったジャレド・ポリス下院議員

今回、最も影響力のある勝利とされているのが、コロラド州知事選だ。ゲイであることを公表している民主党候補のジャレド・ポリス下院議員が、当選確実となっている。

男性の同性愛者が州知事に選出されるのは今回が初めて。

ジャレド議員は、下院議員時代の2011年9月にパートナーの男性とともに息子を迎えたことを公表(代理出産なのか養子縁組なのかについては公表を控えている)。米国議会で初めて、同性愛を公表して親になった人物となった。

一方で、オレゴン州知事選では、バイセクシュアルを公表している現職のケート・ブラウン知事が再選の見込みになった。

ネイティブアメリカンでレズビアンの女性が下院議員に

ネイティブアメリカンで初めて国会議員に当選したシャリス・ダヴィッド氏 。レズビアンを公言している候補者でもあった。

ネイティブアメリカンを先祖に持つ、民主党候補のシャリス・デイビッズ氏はカンザス州の下院3区で当選確実となった。

元格闘技選手であるシャリス氏は、先住民「ホ・チャンク・ネーション」の出身。自身がレズビアンであることを公表している。

ニューハンプシャー州でも、初のLGBTQ議員が誕生へ

ニューハンプシャー州では、民主党のクリス・パッパス氏が下院1区で当選、初のオープンにしている同性愛者の議員となった。

ミネソタ州では反LGBTQ議員にレズビアン候補が勝利

アンジー・クレイグ氏

ミネソタ州では、現職で反LGBTQを掲げた議員にレズビアンの候補が勝利する見通しになった。

下院2区で当選確実となったのは民主党のアンジー・クレイグ氏で、レズビアンであることをオープンにしている。一方、敗れたのは共和党のジェイソン・ルイス氏。

ルイス氏は自身のラジオ番組などで同性愛者を「強姦の犯人」と比較し、同性婚を非難するなどLGBTQに対する攻撃を続けていた。

2人は前回の2016年の選挙でも議席を争っており、前回は2ポイント差でルイス氏が州議会の議席を獲得していた。

候補者数も過去最高に

今回の選挙前の時点で、既にLGBTQの人々からは歴史的勝利を確信する声が挙がっていた。

オープンにしているLGBTQの主要政党の候補者は上院下院合わせて22人で、2016年と比較して29.4%増となり過去最高を記録していた。

また、州知事には7人の立候補者がおり、そのうち4人が主要政党からの指名を獲得していた。

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「Q」の衝撃 匿名掲示板に書かれた「根拠なき陰謀論」がアメリカで広まっている

トランプ大統領の集会で掲げられた「Q」のプラカード=8月4日、アメリカ・オハイオ州

アメリカの上下両院議員と州知事などを一斉に選ぶ中間選挙が11月6日(現地時間)、投開票される。共和党と民主党が激しく競り合う選挙戦の行方は、政権の人気がもろに影響する。

就任から2年目のトランプ大統領は「ラストベルト」(さびついた工業地帯)に暮らす白人貧困層たちの支持を得て当選したが、非常識な言動や自身の関与が疑われるロシア疑惑、セックス・スキャンダルなどにより、かつての人気に陰りが出始めた。

そうした状況を反映してか、トランプ氏を輩出した共和党は苦戦を強いられているものの、「救世主トランプ」論がにわかに注目を集め出した

きっかけはインターネット掲示板の匿名の投稿者「Q」の書き込みだった。

国民の危機感をあおる荒唐無稽な内容で、各メディアも陰謀論扱いするが、支持者は徐々に増加。中間選挙がらみの集会にもQを信じる人たちが姿を見せるようになった。

人々をひきつけるQの主張とは何か。改めて紹介する。

「偉大な覚醒」

Qが「出現」したのは2017年10月。元々はインターネットの掲示板「4chan」に、Qというハンドルネームで根拠のない主張が次々と投稿がされたのがきっかけだ。

Qの主張をまとめた動画がYouTubeに投稿されている。タイトルは「Q、それは世界を救う計画」。そこには次のようなことが述べられている。

アメリカは裏の犯罪グループ「ディープ・ステート」によって長年支配されており、世界で起きている戦争や貧困問題などはこのグループが関与している。

ケネディ元大統領はディープ・ステートに立ち向かおうとしたが、巨大な力によって暗殺された。

ロナルド・レーガン氏以降の大統領はすべてディープ・ステートに関わっている。

アメリカにとって選択肢は2つしかない。1つは軍事クーデターを起こすこと。だがそれは失敗のリスクが高く、すでに手遅れでもある。

もう1つの選択肢として、良識ある軍人と世界の同志たちが考えたのが、ドナルド・トランプ氏に大統領になってもらい、国民を危険にさらさない形で合法的に秩序を取り戻す。

ディープ・ステートは北朝鮮も操り、核兵器で世界を脅している。金正恩・朝鮮労働党委員長が突如、和平に前向きになったのはディープ・ステートから解放されたからだ。

テロ組織「IS(イスラム国)」もトランプ大統領が当選した後に掃討された。しかし、道はまだ半ばであり、犯罪者であるヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ前大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領は健在だ。

そこで次の段階に入る。それこそがQだ。アメリカの諜報機関「国家安全保障局(NSA)」にいる善良な人たちが、Qと呼ばれる最高機密情報を流す。

その機密情報こそが、インターネット上の草の根運動「偉大な覚醒」を起動するためのプログラムにほかならない。

それはインターネットのアンダーグラウンドなチャンネルから始まり、次第にメインストリームへと拡散していく。

問題は資本主義か社会主義かでも、民主党か共和党かでも、白人か黒人かでも、イスラム教徒かキリスト教徒かでもない。相手は巨大な力を持った犯罪者集団だ。

動画は「この計画を信じよ」という一文で締めくくられる。

ピザゲートに酷似?

ニューヨーク・タイムズによると、Qの投稿では、大統領選でトランプ氏と争った民主党のヒラリー・クリントン氏や、前大統領のバラク・オバマ氏、投資家のジョージ・ソロス氏はディープ・ステートのメンバーで、国際的な児童買春に関与しているとされている。

また、2016年の大統領選で勝利するため、トランプ氏がロシアに選挙干渉させた疑惑の捜査についても、クリントン氏やオバマ氏らのクーデター計画の内偵を察知されないための偽装工作にすぎないとしている。

闇の犯罪組織に支配されてきたアメリカを救うために出現したのがトランプ氏――。それがQの投稿の核心だ。

アメリカの各メディアは相次いで「事実無根」「錯乱している」と、陰謀論として報道。中には、ワシントンのピザ店を拠点にクリントン氏らが児童買春をしているという偽ニュース「ピザゲート」をほうふつさせると指摘するメディアもあった。

「Q」現る

「我々はQだ」。7月末、そんなTシャツを着た若者たちがフロリダ州であったトランプ大統領の集会に姿を現した。

シンガー・ソングライターのアンドリュー・キレルさんやジャーナリストのアーノン・ルパー氏もTwitterで紹介。Qの支持者たちがネットを飛び出して初めて集会にやってきたとメディアで注目された。

just some extremely normal people at an extremely normal political rally for an extremely normal president https://t.co/0Gxa9sa81Bpic.twitter.com/9Z2pDX9zCg

— Andrew Kirell (@AndrewKirell) 2018年7月31日

CNN interviewed a bunch of QAnon-loving Trump supporters outside the president’s rally in Wilkes-Barre, and I almost feel sorry for these people. They are gravely deluded. pic.twitter.com/CYxw93qCPi

— Aaron Rupar (@atrupar) 2018年8月3日

一方、女優のロザンヌ・バー氏もQへの賛同をツイートしたほか、トランプ氏自身も、YouTubeでQの主張を拡散しているラジオパーソナリティーのライオネル氏と大統領執務室で記念写真に収まった。

There simply are no words to explicate this profound honor.

Lionelさん(@lionelmedia)がシェアした投稿 – 2018年 8月月24日午前11時29分PDT

報道機関が相次いでQの主張を「根拠なし」としているのにもかかわらず、信奉者は増加。彼らはQanon(匿名のQたち)と呼ばれる「勢力」を形成、その存在感は増すばかりだ。

ブルームバーグによると、世論調査では中間選挙は共和、民主両党が拮抗しているという。当初は民主党が優勢と言われていたが、終盤にきて共和党が巻き返しを図っている。

共和党の追い上げは、Qの広がりと関係しているのか。選挙後もQを支持する人たちの動向は見逃せない。


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「華氏119」は“21世紀のファシズム”の映画だ。マイケル・ムーア監督がいま日本人に伝えたいこと

マイケル・ムーア監督

友へ

悪い知らせを伝えるのは残念なことだが、昨年(2015年)の夏、ドナルド・トランプが共和党の大統領候補になるだろうと君たちに言った時も、俺ははっきりと伝えていた。そして今や、君たちにとってさらにもっとおぞましい、気の滅入るような知らせがある。それは、ドナルド・トランプが、11月の大統領選で勝つということだ。この浅ましくて無知で危険な、パートタイムのお笑いタレント兼フルタイムのソシオパス(社会病質者)は、俺たちの次期大統領になるだろう。

……

映画監督のマイケル・ムーア氏は2016年7月、ハフポストUS版のブログで、トランプ氏が次期大統領になることを予言していた。多くのアメリカの人々は、初の女性大統領の誕生を確信していたにも関わらずーー。

なぜトランプ大統領は誕生したのか。

11月2日に公開されたマイケル・ムーア監督の最新作「華氏119」は、圧倒的な事実の映像を積み重ねて、その理由を浮かび上がらせる。

私たちはオバマ前大統領の何を見ていたのか。ムーア監督の故郷、ミシガン州フリントの街でオバマ氏は何をしたのか。民主党は選挙で何をしたのか。「ラストベルト」と称される工業地帯の労働者たちは、どう感じていたのか。

事実の点と点をつなぎ、線にして時代を紡ぐムーア監督。大統領選だけでなく、選挙後のアメリカに生まれた新たな希望ーー立ち上がる若者たちや地域住民の姿も、彼のカメラはとらえている。

トランプ大統領の就任後、アメリカに起きた変化とは? 本作で日本の人々に伝えたいことは?11月6日の中間選挙を前に、インタビューを掲載する。

マイケル・ムーア監督

――ムーア監督は、トランプ大統領が就任してからの2年間をどう捉えていますか?

予想よりも悪い事態になった2年間だと思う。

いろいろ小さな変化が常に起こっているが、それに全部目を向けられていないのは悲しい。トランプ大統領がこの国を破壊しようとしている詳細に目が届かないことが……。

――例えば、どんな変化でしょう? もう少し具体例に説明してもらえますか。

例えば、アメリカには環境保護エイジェンシーというのがあって、子どもの環境保護エイジェンシーという部署がある。この部署は、子供の健康を守るための環境、空気や水といった環境を保護する仕事をしている。

トランプ大統領は、この部署のリーダーとスタッフを全員解雇した。

人は、それはちっぽけな事じゃないか、と言うかもしれない。ただ、このような事が毎日起こっている。トランプ大統領は、アメリカ政府の構造自体を破壊し解体しようとしているんだ。

ミシガン州知事を突撃。人体に有害な鉛が検出されたフリントの水を知事の家に撒き散らすムーア監督。

ーートランプ大統領の暴言やさまざまな問題行動を、野党やメディアは止めることができていません。

僕はその努力を精一杯している。彼をあざ笑っているだけでは打倒できないと思う。

最初は彼を本気にした人はいなかった。僕は彼が本気で大統領になろうとしていると思った。その僕の意見に耳を傾けてくれた人は誰もいなかった。

アメリカの「ビルー・マーハー」というリベラルなテレビのトーク・ショーに出演して、「トランプが選挙に勝つ」といったとき、僕はブーイングにあった。

さらに僕は、ミシガン、ウエスコンシン、ペンシルベニア州で勝つと具体的に指摘した。そして現実的に、トランプはこの3つの州で勝利した。

単にトランプを取り除くためにこの映画を作ったわけではないんだ。この映画のテーマはさらにシリアスなんだよ。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙で、労働者階級や若者の支持を集めたバーニー・サンダース上院議員(左)にインタビューするムーア監督

――この映画で、日本の人たちに伝えたいことは?

この映画は、究極的にはファシズムについての映画だ。それも”21世紀のファシズム”だ。

トランプのような人間が、人を自分の味方につけ、社会を引き継ぐかたちをとっている。それも、人を強制するのではなく、「僕についてきてくれれば、僕は君たちのためにこんなことができる」というかたちなんだ。

非常に危険な事が起こっている。アメリカ以外の国でも同様なことが起こりつつある。

そういう意味で、この映画は日本にむけてのメッセージが多くこめられた映画だと思う。アメリカで起こっているようなことが日本で起こらないための警告だよ。

この映画を観た日本の観客が、首相に「トランプ大統領と距離を置いてほしい」という懇願の手紙を出してくれればと思う。

今のところ、安倍首相はトランプ大統領の親友の一人のように見える。よい事ではないね。

――”21世紀のファシズム”と表現されましたが、映画の中では、ヒトラーとトランプの共通点を指摘していますね。どういう意図でしょうか。

僕は、トランプがヒトラーのようだとは思っていない。その逆だ。ヒトラーはトランプのようだと言っているんだよ。

映画では、トランプの声がヒトラーの口から出てくる。もしトランプがヒトラーのようだと言いたいなら、トランプにハナヒゲやハーケンクロイツや腕章をつけたと思う。それはしなかった。

だが、あの時代のドイツと現代のアメリカには共通点があると思う。教育をうけた文化的な人間が、非常に悪い判断を下した、という点で。

――映画には、中間選挙の「台風の目」として注目される、白人男性候補を破ったヒスパニック系の20代女性も登場します。ムーア監督は、11月6日の中間選挙をどう予想しますか。

まだ分からないが、女性や若者が多く投票して津波のような効果をもたらすかもしれない。

そして共和党を負かすかもしれない。

ムーア監督。立ち上がった若者たちとともに。

逆に、多くの人がトランプ大統領への惨敗を痛感し、とくに(性的暴行疑惑も浮上した保守派の)ブレット・カバナー氏が最高裁判判事に選ばれてたことにあまりに落ち込んで、投票にもいかないかもしれない。

……..


フェイスブックと選挙:「フェイクの洗い出し、他人任せじゃなく自分でやれ」とNYタイムズ社説

米国の中間選挙を前に米司法省は19日、選挙への介入の容疑でロシアの”フェイク工作”の会計責任者を訴追した、と発表した。


By Anthony Quintano (CC BY 2.0)

工作資金の支出先の多くは、フェイスブックだった。

選挙をめぐるフェイクニュース問題は、ロシアなどの”外患”だけではない。米国発のフェイクニュースもまた、中間選挙をめがけて勢いを増す。

フェイスブックと選挙をめぐる問題は、米国以外でも注目を集める。

10月末に決選投票が行われるブラジル大統領選では、フェイスブック傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」を舞台にしたフェイクニュースの氾濫が大きな問題となり、高等選挙裁判所が相次いで削除を命じる事態になっている。

多くの場合、これらの問題はメディアや研究者、アクティビストたちが指摘してきた。それに対し、フェイスブックが対応する。すると、また新たな問題が――。

「他人任せ」とも映り、後手後手に回るフェイクニュース対応が続く状況に、ニューヨーク・タイムズは20日、ついにこんなタイトルの社説を掲げた。

フェイスブックよ、自分のことは自分でやれ

●米中間選挙も標的

米司法省の発表によると、訴追されたのはロシア人のエレーナ・フシャイノワ被告。

米国やEU、ロシア国内を含む幅広い情報工作「プロジェクト・ラフタ」の会計責任者として、米中間選挙への介入に関わった「共謀罪」で訴追されている。

今回の刑事告訴状によると、「プロジェクト・ラフタ」は米国、EU、ウクライナやロシア国内も含む、選挙に関する情報工作で、2014年ごろから実施されている。

「プロジェクト・ラフタ」の名前は、今年2月、2016年米大統領選へのロシアの介入疑惑を操作している特別検察官、ロバート・ムラー氏が、その工作部隊とされてきた「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」を含む3社と、関連する13人のロシア人を起訴した際の起訴状にも登場している。

※参照:ロシアの「フェイクニュース工場」は米大統領選にどう介入したのか(02/18/2018)

「プロジェクト・ラフタ」の資金源は「プーチンの料理人」の異名を持つ側近でロシアの実業家、エフゲニー・プリゴジン氏の傘下企業「コンコルド」だ。

ここから、「プロジェクト・ラフタ」を通じて、「インターネット・リサーチ・エージェンシー」など10社あまりの工作部隊に資金を提供しているという。

そして「インターネット・リサーチ・エージェンシー」は”フェイクニュース工場”として、フェイスブックなどを通じた各種情報工作を手がける、という構図だ。

その金の流れを管理していたのが、「プロジェクト・ラフタ」の財務部門で会計責任者を務めるフシャイノワ被告ということになる。

ただ、これまでの「ロシア疑惑」で起訴された被告たちと同様、当人はロシアにおり、身柄拘束の可能性はない。

司法省の資料によれば、米大統領選、米中間選挙への介入を含む2016年1月から2018年6月までの「プロジェクト・ラフタ」全体の予算は3500万ドル超(約39億円)。

このうち、米中間選挙も絡む今年1月から6月の予算は1000万ドル超(約11億円)。

2月の起訴状では、米大統領選直前の2016年9月ごろの「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の月額予算は125万ドル超(約1億4000万円)にのぼった、としていた。

「プロジェクト・ラフタ」の予算の使途は、「工作員への支払い、ソーシャルメディアへの広告出稿、ドメイン名登録、プロキシーサーバーの購入、”ソーシャルメディアでのニュース投稿の促進”」とされている。

ただ、米国への介入のために使われたのはそのごく一部だったという。

刑事告訴状に具体的な金額が記されている。

今年1月から6月の予算のうち、フェイスブック広告に6万ドル超、インスタグラムの広告には6000ドル超。さらに「ブロガー」「(ツイッターの)アカウント開発」に1万8000ドル超、とされている。

これを見る限り、大半がフェイスブックに振り分けられている。

介入工作の手法は、大統領選の時とほぼ同じだ。

フェイスブックなどの広告や投稿を通じて、移民問題、銃規制、人種問題、LGBTといったテーマで対立する双方の立場から煽り、社会の分断を図る、という手法だ。

※参照:米社会分断に狙い、ロシア製3500件のフェイスブック広告からわかること(05/14/2018)

例えば、フェイスブックのフェイクアカウント「バーサ・マローン」は、移民問題を取り上げた「ストップAI(オール・インベーダー)」というフェイスブックページを開設した。

2016年12月から2017年8月までの期間に400件を投稿。2017年7月17日からの1週間だけで、138万人にリーチし、13万人から「いいね」やコメントなどのエンゲージメントがあったという。

今回の訴追は9月28日付けで行われていたが、3週間後の19日まで公表されていなかった。

ワシントン・ポストなどによると、翌週から大統領補佐官(国家安全保障担当)のジョン・ボルトン氏が訪ロするのに合わせて、というタイミングだったようだ。

訴追の発表と同じ日、米国家情報長官室が、司法省、連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省(DHS)による共同声明を発表。

中間選挙及び2020年の米大統領選に対する、ロシア、中国、イランを含む外国政府による介入への懸念を表明している。

訴追と合わせ、11月6日の中間選挙本番に向けた号砲のようなものだろう。

●選挙対策室の開設

フシャイノワ被告の刑事告訴状では、フェイスブックとツイッターのフェイクアカウントを使った介入事例を取り上げている。

ただ、工作のコストのかけ方を含め、その焦点はフェイスブックだ。

その風圧は、フェイスブックも感じているようだ。

まさにフシャイノワ被告の訴追発表の前日、18日に、フェイスブックの本社内に「選挙対策室」を開設したことを公表している。

脅威インテリジェンス、データサイエンス、ソフトウエアエンジニアリングなど、社内各部署の専門家約20人が常駐し、リアルタイムで介入の兆候を監視しているという。

7月末には、フェイスブックとインスタグラムのフェイクアカウントとページ、32件の削除を発表。その手法からロシアの「インターネット・リサーチ・エージェンシー」との関連が指摘されている。

さらに10月11日には、559のフェイスブックページと251のアカウントを削除した、と発表。

ニューヨーク・タイムズは、この中には、ロシアによる介入の手法を取り入れた、国内発のフェイクニュースが目立ってきている、と報じている。

政治の話題によるフェイクニュースが注目を集めることから、それを広告閲覧に結びつける、というビジネスのが広がっているという。

同様のフェイクニュース発信は、米大統領選の際にマケドニアを舞台に広がったことが明らかになっている。

10月15日には、中間選挙の投票日を別の日付としたり、スマートフォンのアプリで投票できる、といったフェイクニュースを流す「投票者弾圧」の行為についても、削除を強めていく、と表明している。

この手法もまた、米大統領選で「ショートメッセージで投票できる」などのフェイクニュースが出回ったのと同じだ。

さらに、CEOのザッカーバーグ氏は9月、3000語を超す長文の声明を発表。選挙対策の意気込みを述べている。

2016年(の米大統領選の時)には、我々は、今や日常的に直面している組織的な情報工作に対する備えがなかった。だがそれ以来、我々は多くのことを学び、フェイスブックにおける選挙介入を阻止するためのテクノロジーと人材の組み合わせによる最新のシステムを開発した。

一方で、ザッカーバーグ氏はこんなことも述べている。

私が学んだ重要な教訓の一つは、国や文化をまたいで数十億人を結びつけるサービスを構築した時、人々が可能にするあらゆる良い面を目にすると同時に、できる限りの手段を使って、そのサービスを悪用しようとする人々も目にするだろう。

我々が進化すれば、敵もまた進化する。我々はその先手を打ち、民主主義を守るために、改善と協働を続けていく必要がある。

問題は、その「先手」を打つことができているのか、という点だ。

●ブラジル大統領選での削除命令

フェイスブックのフェイクニュースが問題となっているのは、米中間選挙だけではない。

極右・社会自由党のジャイル・ボルソナーロ下院議員と、左派・労働党のフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長による決選投票が10月28日にブラジル大統領選もまた、フェイスクニュース拡散が深刻な問題となっている。

ブラジルでは、フェイスブック、グーグル、さらに24のメディアが連携し、ファクトチェックとフェイクニュース排除のプロジェクト「コンプロバ」を進めてきた

だが、フェイクニュースは、フェイスブック傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」で拡散していたことが、ミナス・ジェライス連邦大学、サンパウロ大学、ファクトチェック機関「アジェンシア・ルパ」の調査明らかになった

ブラジルのニュースサイト「G1」の世論調査では、有権者の44%が、政治や選挙の情報を「ワッツアップ」から得ている、という。

調査では347のグループで拡散していた10万件の画像を検証。

このうち共有の多かった50件の画像を調べたところ、8件は完全な偽造、15件は実際の画像だが別文脈での流用、4件は根拠のない主張で、半数以上がフェイクニュースであることが明らかになった。

この調査グループによるフェイクニュース排除のためのシステム修正要求に対して、「ワッツアップ」の回答は「時間が足りない」だったという。

フェイクニュースは両候補それぞれを攻撃する内容が拡散している、という。

そして「ワッツアップ」も腰を上げたようだ。

ニューヨーク・タイムズによれば、メッセージのグループでの共有の上限を256人から20人への削減し、紙、テレビ、ラジオでの広告キャンペーンを展開。フェイクニュース排除の「コンプロバ」とも連携をとっている、という。

だが、地元紙「フォルハ・デ・サンパウロ」の18日の報道によると、ボルソナーロ氏支持のマーケティング会社が1200万レアル(約3億6000万円)で「ワッツアップ」ユーザーへのメッセージを展開する大規模キャンペーンを計画していることが暴露された。

これに対し、「ワッツアップ」は法的措置をとることを明らかにしている。

一方で選挙管理を管轄するブラジル高等選挙裁判所は、10月に入ってからもフェイスブックに絡むフェイクニュース削除判断次々に出している。

また、有権者に向けて、フェイクニュース情報の専用ページを立ち上げる状況だ。

●「自分のことは自分でやれ」

ザッカーバーグ氏は、9月の声明や、同趣旨のワシントン・ポストへの寄稿の中で、選挙に絡むフェイクニュース対策として、企業の枠を超えた連携を呼びかけている。

我々は着実に前進してきたが、巧妙で資金潤沢な敵に直面している。彼らは決してあきらめず、進化し続ける。我々は改善を続け、常に一歩先を行く必要がある。それには、我々にとってはセキュリティへの継続的な多額の投資が必要になる。と同時に、政府、IT業界、セキュリティ専門家たちとの緊密な連携が求められる。この問題は、一つの組織が自力で解決することはできないからだ。

だが、フェイスブックは今、今年だけでも3月に発覚したケンブリッジ・アナリティカ問題での8700万件のユーザーデータ流出、さらに9月に明らかになったシステムの欠陥を突いたサイバー攻撃による3000万件のユーザーデータ流出、と立て続けの逆風の中で、冷ややかな視線を向けられている。

選挙をめぐっても、トラブルが報じられている。

「アフリカ系米国人」「ヒスパニック」あるいは「LGBT」という単語が含まれているだけで、「政治広告」と判断し、次々に広告が削除されている――。

USAトゥデーは17日、独自の検証で、フェイスブック広告の、そんな現状を明らかにしている。

英ガーディアンも、問題続発のフェイスブックにあって、「選挙対策室は機能しているのか?」と疑問を投げかける。

選挙を離れても、フェイスブックにあふれる様々なフェイクニュースが、深刻な問題を引き起こしている事例がメディアや専門家によって相次いで明らかにされている。

ミャンマーでは、少数民族「ロヒンギャ」への弾圧を煽るフェイクニュース拡散の背後に、軍の存在があったことがニューヨーク・タイムズによって報じられた

上述のブラジル大統領選における「ワッツアップ」でのフェイクニュース氾濫の実態は、専門家らの調査によるものだ。

インドでは、「ワッツアップ」で拡散した「児童誘拐」のフェイクニュースが原因で、4月以来、すでに約20人が殺害される惨事になっているという。

この問題を以前から指摘してきたのも、インドのファクトチェックメディアだった

フェイスブックの対策は、いずれも後手に回っていることが、批判を受けている。

そしてニューヨーク・タイムズは20日、「自分のことは自分でやれ」との社説を掲載した。

(フェイスブックやツイッターなどの)企業には、自由に使えるあらゆるツールがあり、まさにジャーナリストたちが発見した事実を見つけ出すべき重大な責任を負っている。だが明らかなように、いまだに、彼らはその責任を果たしていない。現在、(ジャーナリストや専門家ら)第三者が担っている、ユーザー保護やコンテンツ選別といった役割は、社内で容易に受け持つことができるはずだ。そして、ジャーナリストとは違い、これらの企業には、ネット上で問題のある状況をつくりだす動機そのものを変えてしまう力がある。

ザッカーバーグ氏は、フェイクニュースの発信側が「資金潤沢」という。

だがその一方で、まさに世界のネット広告収入の85%をグーグルとフェイスブックの2社が占めている事実を指摘。フェイクニュースの問題を掘り起こす役割を担っているメディアのビジネスの足元を、この2社が脅かしている、という皮肉な構図について、こう述べている。

ソーシャルメディアのプラットフォームは、自らのサイトから流れる有毒情報の濾過作業をジャーナリストに任せる一方で、それについての社会への見返りは何もなしだ。だが、この仕組みには、持続可能なところが全くない。この(フェイクニュースをめぐる)メリーゴーラウンドの仕組みが機能しなくなった時、何が起こるのか。私たちは、とても考えたくはない。

——–

■新刊『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(朝日新書)

(2018年10月21日「新聞紙学的」より転載)


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