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Netflixは、やっぱり新しい。「メッセージ性を強くすることはそこまで考えない」作り手が明かした矜持とは

左上:「クィア・アイ in Japan!」、左下:「愛なき森で叫べ」、右:「全裸監督」

「作品の中に、『今の社会にはこういうものが必要だ』とメッセージ性を強くすることは、そこまで考えていない」

そう話すのは、Netflix Japanでオリジナル作品の制作に携わるコンテンツ・アクイジション部門のディレクター、坂本和隆さんだ。

同社は6月25日、今後配信予定のオリジナル作品を一挙に紹介するイベント「Netflixオリジナル作品祭」を都内で開催。Netflix初参加の園子温監督や蜷川実花監督らスタッフ・キャストが勢ぞろいし、撮影現場の様子や作品に込めた思いについて語り合った。

社会性の強いオリジナル作品を次々と発表し、多くのファンを獲得しているNetflixだが、人の心を掴むヒット作を生む“秘密”は何なのだろうか。坂本さんに聞いた。

コンテンツ・アクイジション部門のディレクター、坂本和隆さん

「クリエイティヴで自由度が高い作品が集まっている」

Netflixは2015年9月に日本進出した。これまでに、ピース・又吉直樹原作の「火花」や、永井豪の名作「デビルマン」を現代風にアニメ化した「DEVILMAN crybaby」など、話題作を手がけてきた。

リアリティーショー「テラスハウス」(制作はフジテレビとイースト・エンタテインメント)などは海外でも大きな反響を巻き起こしている。

2019年以降に配信される“日本発”のオリジナル作品は、より独自性が高いラインナップが並ぶ。園子温監督の「愛なき森で叫べ」(2019年秋配信)や蜷川実花監督の「Followers」(2020年初頭配信)は完全オリジナル脚本だ。

Netflixオリジナルの中でも、クリエイターの皆さんが非常にドライブしている企画である、ということは特徴的かもしれません」。坂本さんはそう話す。

「『全裸監督』は原作がありますが、それを元にかなりストーリーを膨らませています。業界ではなかなかオリジナルストーリーを作るのが難しいと言われる中、クリエイティヴで自由度が高い作品が集まっていると言えると思います」

8月8日に配信される「全裸監督」より

安全な制作現場を作るための「ハラスメント講習」も

日本進出時は映像業界の「黒船」と言われたNetflixだが、制作現場での取り組みも新しい。

2019年8月配信の「全裸監督」を手がけた武正晴監督が、トークセッションの場で驚きをもって明かしたのが、撮影前に実施されたという「ハラスメント・トレーニング(講習)」の存在だ。

Netflixによると、このハラスメント・トレーニングは、制作現場での「安全な環境」をつくることを大きな目的にグローバルで実施。オリジナル作品のスタッフ・キャスト全員が講習を受ける決まりになっているという。

「全裸監督」は“AVの帝王”と呼ばれた村西とおるさんを題材にしており、アダルトビデオ業界を描いている。村西監督作品に出演し、かつて一世を風靡したAV女優・黒木香さん役を演じた森田望智さんは、セックスシーンにも挑戦したという。

武監督はこの講習で「特に女性に対して、とにかくリスペクトを忘れない。そこを気をつけながらやること」を学んだ、と振り返っていた。

映像業界においては、過酷な労働環境やハラスメントなどが問題視されているが、スタッフやキャストが安全に仕事ができる現場を作っていこうとするNetflixの努力が垣間見えるエピソードだ。今後も参加者の反応を見て、学びながらトレーニングの表現や内容を調整していくという。

「全裸監督」でメガホンを取った武正晴監督

「メッセージ性」はそこまで深く意識しない

時代の雰囲気を汲み取り、社会性の強いエンターテインメント作品を多く生み出してきたNetflix。

4月に配信された「リラックマとカオルさん」では、リラックマの愛くるしさだけではなく、現代社会にもまれ、人間関係に翻弄されながら生きるアラサー女性・カオルさんのリアルな毎日も描き、大きな反響を呼んだ。

Netflixの坂本さんは、あくまでも、その作品にあったベストなアプローチを探求している」と話す。

「『リラックマとカオルさん』は私も参加した作品なんですが、2Dなのか、実写がいいのか、ストップモーションがいいのか。議論をする中で、もともとリラックマが持っている癒し”や“ふわふわさ”とか、色々な要素を考えると、ストップモーションアニメで13分という尺がベストだという話になって。さらに、どういう物語を紡ぎ出すかという議論の中で、『カオルさん』の視点を切り取りながら作っていこうと決めました」

「あまり説教がましい企画意義というのは、我々はそこまで話さないというか…作品を通してこうしてほしい、と深くは議論しません。そうなってしまうと、オーディエンスが逆に“気づいてしまう”というか。感情移入がちょっと崩れてしまうかもしれませんし、大上段に『今の社会にはこういうものが必要なんだ』とメッセージ性を強くすることは、そこまで考えていません」

世界に届く「普遍的」なストーリーを

一方で、世界で通用するコンテンツを作るために、作品に「普遍性」を持たせることは意識しているという。

例えば、『全裸監督』だ。一見すると、「テレビでは放送できない」ような奇抜さを意識した企画にも感じるかもしれない。しかし、描きたいものはAV業界の黎明期を駆け抜けていった村西とおるさんの生き様や、周囲の人のストーリーだという。

「私自身が一番興味を持ったのは『村西とおるさんのような方々が日本にいたんだ』、ということです。リーダーシップというものが少し見失われている中で、こうやって突き進んでいる人がいたんだな、と」

「黒木香さんは、わずか数本の出演作でこれまでアダルトビデオに出ていた女優さん達の立ち位置をも含めて覆していった。そして村西さんをメインストリームに持ち上げていった裏の立役者です。こんなにすごい人がいたんだという思いと、男女の人間関係があって物語ができたということに意義を感じました。そういう意味では、これは普遍的な物語で、全世界で楽しめる物語なんじゃないかなと思います」

矜持を持って作品づくりを続けているNetflix。挑戦的な企画で、日本のエンターテインメント界をさらに盛り上げてほしい。

「Netflixオリジナル作品祭」登壇者。

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宮野真守さん、『ウエスト・サイド・ストーリー』でミュージカル初主演 「いろんな“初”が目白押しなんです」

ブロードウェイの大人気ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が、2019年11月から上演されることが決まり、主演キャストの1人を声優の宮野真守さんが務めることが分かった。公式サイトが、6月26日発表した

第31回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した声優の宮野真守さん(2018年10月25日撮影)

同公演は2019年11月から約7カ月の長期公演となるため、3つのシーズンに分けられ、それぞれで異なるキャストが登場する。主要キャストは、Wキャストとなっている。

2019年11月から2020年1月まで上演されるSeason1では、トニー役を宮野真守と蒼井翔太、マリア役を北乃きい・笹本玲奈、アニータ役を樋口麻美・三森すずこ、リフ役を小野田龍之介・上山竜治、ベルナルド役を中河内雅貴・水田航生が務める。

今回の公演は、360度回転する円形の客席と、その周りを舞台とスクリーンが取り囲む形で実施される、世界初の試みとなる。

『ウエスト・サイド・ストーリー』は、1957年に初演されて以来、世界中で愛されているブロードウェイを代表するミュージカル。1961年には映画化された。

物語は1950年代後半のニューヨーク。マンハッタンのウエストサイドを舞台に、敵対する2つのギャング団とその関係性の中で育まれるトニーとマリアの禁断の恋や悲劇が描かれる。

2019年11月より公演される『ウエスト・サイド・ストーリー』でトニー役を務める宮野真守さんと蒼井翔太さん(Wキャスト)

声優界で絶大な人気を誇る宮野さんは、今回の公演がミュージカル初主演。初めての挑戦に向け、ファンに向けてコメントを寄せた。

宮野さんのコメントは、以下の通り。

今回、IHIステージアラウンド東京で”世界初演”として上演する ということで、非常にありがたい機会をいただいたと思っています。

僕はミュージカル初主演になりますし、ブロードウェイ・ミュージカルも初なので、いろんな”初”が目白押しなんです。

プレッシャーも大きいですが、ここに居させていただける喜びを感じつつ、仲間と切磋琢磨していきたいです。

僕はあのステージ(*2017〜18年に劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月《下弦の月》をIHIステージアラウンド東京で上演)の経験者ですが、初めてあそこに立ったときに「ある意味今までの経験が参考にならないってこういうことなのかな」と感じたんです(笑)

それぐらい画期的で、まさにエンターテインメントの最先端を行っているステージです。

あの劇場だからこそできることがたくさんあるので、出演者も観客のみなさんも今までに見たことのない経験ができると思います。

僕にとっても大きな大きなチャレンジになります。ぜひ応援してください!

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season1は、2019年11月6日から2020年1月13日まで、IHIステージアラウンド東京で上演される。


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ロンブー田村淳、相方・亮を叱責しつつコンビ続行を宣言 「最後の1人になっても厳しい目を向け続けたい」(声明全文)

「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳(左)と田村亮

吉本興業所属の芸人たちが振り込め詐欺グループの忘年会に出演し、金銭を受け取っていた問題で、お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳(45)が6月25日の深夜にTwitterを更新。謹慎処分となった相方の田村亮(45)を厳しく叱責するコメントを発表した

「実はギャラもらってましたと…亮から聞かされました…ショックでした…」という書き出しで始まるテキストを貼り付けた田村淳の投稿によると、田村亮とは電話で会話をしたという。

「知らなかったとは言え、詐欺集団のパーティーに出て、被害者から騙し取ったお金で支払われたギャラを受け取っておきながら、返金もせず嘘をついて、このままで平気なのか!お前を軽蔑する!」と電話越しに叱責したと明かした。

田村亮の様子については「自分の保身の為に正直に言えずに苦しんでたのは電話越しにも伝わってきた」としながらも、「騙されてる人たちの方が、お前の何倍も苦しいよ。昔の正直者で真っ直ぐなところがなくなったらもう亮じゃない!」と厳しい言葉を伝えたようだ。

写真週刊誌FRIDAYが田村亮らの闇営業疑惑について報じた6月7日には、田村淳はTwitterで「ギャラなどは、一切、一切受け取っていないと言っています。皆さんはどう思われるかわかりませんが、僕は亮の言葉を信じたいと思います」と綴ったメモを貼り付けて投稿。「亮は今まで僕に一切嘘をついたことがないです。なので僕は信じたいと思います」と相方への強い信頼を示していた

14日の投稿では、謹慎処分について「皆様、どうか亮に厳しい目を向けて下さい!反省しているかどうか?行動、言動、全てに厳しい目を向けて下さい」と呼びかけた。

一方、「僕も誰よりも厳しい目を向けたいと思います。最後の1人になっても厳しい目を向け続けたいと思います」と相方を突き放すことなく、最後は「そして、しっかりと反省した亮とまたコンビの活動を続けられたらと思います」と結んだ。

 

田村淳のコメント全文

実はギャラをもらってましたと…亮から聞かされました…ショックでした…知らなかったとは言え、詐欺集団のパーティーに出て、被害者から騙し取ったお金で払われたギャラを受け取っておきながら、返金もせず嘘をついて、このままで平気なのか!おまえを軽蔑する!世間の皆様、所属事務所、番組のスタッフにも正直に全てを話すべきだ!怒りに任せて言いました。自分の保身のために正直に言えずに苦しんでたのは電話越しにも伝わってきたけれど…騙されてる人達の方が、おまえの何倍も苦しいよ!昔の正直者で真っ直ぐなところがなくなったらもう亮じゃない!と叱責しました。相方に嘘をつかれた事が本当にショックでした。今回、遅くなりましたが、金銭の授受を認めて謹慎する事になりました…皆様、どうか亮に厳しい目を向けて下さい!反省してるかどうか?行動、言動、全てに厳しい目を向けて下さい。僕も誰よりも厳しい目を向けたいと思います。最後の1人になっても厳しい目を向け続けたいと思います。そして、しっかりと反省した亮とまたコンビの活動を続けられたらと思います。

ロンドンブーツ1号2号田村淳


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「アメトーークとロンハーもう見れないの?」 宮迫博之らの謹慎処分、冠番組の行方に不安の声も

テレビ朝日「アメトーーク!」の公式ページをスクリーンショット

吉本興業の宮迫博之、田村亮ら芸人11人の謹慎処分が発表された件で、Twitter上では宮迫や田村がMCを務める人気バラエティ番組の今後の行方を気にするツイートが相次いでいる。

雨上がり決死隊の宮迫博之は、テレビ朝日の人気バラエティ番組「アメトーーク!」のMCを務めている。同じくテレビ朝日の「ロンドンハーツ」では、ロンドンブーツ1号2号の田村亮がMCを務めている。

Twitter上では、2人の謹慎処分に対する驚きと、番組の打ち切りを心配する声が多く見られた。

まじか…アメトーク好きやのに…

ロンドンハーツとかアメトークどうなるん?

宮迫謹慎でアメトークはどうなるんだろ?なんだかんだで好きな番組だっただけに打ちきりとかだと残念

アメトーークとロンハーもう見れないの?

また、どちらの番組もMCの片方が謹慎を受けることから、今後のMCの行方を気にするツイートも目立った。

あらら…

ロンハーとアメトークが片割れになっちゃう

宮迫謹慎ってことはアメトークはホトちゃんだけでやるのか!?

 

この件をめぐる対応について、テレビ朝日の広報担当者は「検討中」としている。


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「日本人は、人生よりも『仕事』を大事にする」 鈴木敏夫さんがタイで感じた、現代日本人の生き方

『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』などを手がけた、日本が誇るスタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さん。

ジブリの裏側、映画プロデューサーや経営者としての仕事論ーー。これまで数多くの書籍を綴ってきた鈴木さんは2018年夏、自身初のノンフィクション小説「南の国のカンヤダ」を上梓した。 

描いたのは、鈴木さんが都内にあるマンションのエレベーターで出会ったタイ出身のシングルマザー、カンヤダとの交流だ。カンボジアの国境近くにあるのどかな村、パクトンチャイ出身で、仕事に活かせる日本語を学ぶために日本に留学した経験を持つ。

カンヤダは1年でタイに帰ってしまうのだが、帰国後も鈴木さんとの付き合いは続き、その縁は鈴木さんの友人にも広がっていく。鈴木さんはパクトンチャイを訪れ、自由奔放に生きるカンヤダを助けようと、みんなで彼女の職探し・家探しに奮闘する。最終的にはバンコクでジブリ公認のレストランをオープンするまでに至るのだ。 

明日のことは考えず、過去も振り返らない。「いつも、今、ここを生きている」。鈴木さんはカンヤダについてそう書いている。その生き方は、「貧しかった頃の日本人」の姿も重なったという。

鈴木さんは、なぜカンヤダの生き方に惹かれたのか? パクトンチャイで生き生きと暮らすカンヤダたちに、私たちが学べることはあるだろうか。鈴木さんにインタビューした。

ーー本では、自由気ままなカンヤダにたくさんの人が巻き込まれていく様子が描かれます。「赤の他人」同士なのに、深い絆ができていく様子がすごく新鮮でした。

カンヤダは、お金には代え難い体験をさせてくれるんです。

あとは、やっぱりパクトンチャイですよ。そこでの暮らしは特別ですよね。カンヤダの実家に行くと、夕方ちょっと前ぐらいから近所の人たちが集まりだして、庭で酒盛りを始めて、みんなでワイワイしていて。そういうのを見ると、やっぱり安らぎますよね。

日本にいる時とパクトンチャイへ行った時とで呼吸が違う。胸が開いて、顔が緩むんですよ。

朝に日本を出て、パクトンチャイに着くのはだいたい早くて夜の10時とか、ともすると深夜12時を回る時もある。10数時間の長い旅でしょう?けれど降り立って空気を吸った瞬間、大概誰かが言い出すんです、「空気がおいしい」って。最初の深呼吸、これですべて変わってしまうんですよね。

それで一晩経つと、朝は「いや、よく寝ました」ってみんなが馬鹿の一つ覚えみたいに同じことを毎回言うんだよ。(笑)そこにいると体から変わるんです。  

ーー鈴木さんは、パクトンチャイを貧しかった頃の日本に重ねています。懐かしさも感じると。そういう場所はもう日本にはなくなってきていると思いますか?

なかなかないですよね、もう既に。やっぱりテレビとかのメディアの力で、日本中が一つになってるじゃない。 

ところがタイにはそうじゃないところがまだいっぱい残ってる。だからみんな行くんじゃないですか。

ーー日本は貧しかった頃、つまりパクトンチャイみたいに戻るべき、という考えもあるのでしょうか?

というより、僕は、放っとくとそうなるんじゃないかと思って。

昔の日本人は、「お金はないけれど心は豊か、貧しいけれど心は豊か」という生き方をしてきたと思います。それが何でそうじゃなくなったかと言えば、経済が発展して物資的に豊かになったからでしょう?

ーー裕福になる代わりに「心が貧しくなった」と。

でも、その物質の豊かさは今変わりつつあるじゃない?それは、傍から見ていて僕はおもしろいと思いますけれどね。

ーー日本にまた貧乏な時代がやってくると?

まだ「食えなくて困る」とか、そういうことはないでしょう。でも、いずれそういう問題が出てくると思うんですよ。今はアジアの人に声をかけたら、みんな日本に働きに来てくれる。なぜなら、日本が豊かだと思っているからですよね。

でも、このままいくとどうなるか?日本に来なくなりますよね。

そうすると、日本だけでやっていかなきゃいけなくなる。そして、そうなると多分人は幸せになってくるんだと思います。

ーー貧しくなると「幸せ」になるんですか?

これは本当に難しいんだけれど、物質と心って反比例するんですよね。

何もなくなると、持っていないと、人間は何かしようとする。そうすると人生が大事になってくるでしょう?そういう気がしますよ。

例えば、僕がネットというものがすごいなと思うのは、音楽や映像、本だけじゃなくて、車のシェアみたいに、リアルな世界にも及んできましたよね。毎月7,000円払えば何万着の中から好きな洋服を借りられる、みたいなサービスもある。

ーーシェアリングエコノミーですね。

そう。あれは「お金を使わない」ということでしょう。ある種必然的に生まれてきたものですよね。そして、それは知恵ですよね。本来は、お金があれば全部買えばいい。それができなくなってきたことの証拠でしょう。

色々な会社が、これからどんどん変わっていくと思います。

今までは、世界中に展開するなら大きな会社を作って、各地に支社を作る必要があった。アジアだったら、日本だけじゃなく中国にも東南アジアの各国にも支社を作る、とかね。今はネットの力でそれも減り始めていて、アジアで1支社、ヨーロッパで1支社とか、それくらいで世界を見渡せるようにもなった。そういうことがどんどん増えていくんじゃないかと思います。 

ーーカンヤダの仕事への姿勢も新鮮でした。家族と離れ離れになったり、環境が体に合わなかったりするとすぐ仕事を辞めてしまう。仕事やお金よりも、家族や自分の生活を重視しているように見えました。

この物語は、最後バンコクでレストランを開いて万々歳で終わるんですが、現実では、その後カンヤダはいなくなってしまうですよ。誰にも、何も告げずにパクトンチャイに帰ってしまうんです。

ーーそうなんですか!(笑)

東京であれバンコクであれ、長くいると体調が狂ってしまうようで、「バンコクは私の住むとこじゃない」と言うんですよ。「だから子どもを連れてパクトンチャイに帰る」と。それで本当に帰っちゃうんです。

これが本物のね、「いま、ここで生きる」人ですよ。それで帰ったら「仕事がない」というんだよね。「あなた、あったでしょう?」と思うんですけど、通用しないんですよね。

ここまでたくさんの人に協力してもらって、レストランまで開いて、ある程度の幸せは約束されていたはずなのに。普通はできないですよね。本当うらやましいよねぇ。(笑) 

ーー最近は、日本人の働き方も変わってきています。転勤を望まない若者が増えていたり、2020年卒の大学生を対象にしたアンケートでは、志望企業を選ぶ基準が「やりたい仕事ができる会社」を抜いて「安定している会社」がトップになりました。

昔に戻っているんだと思いますよ。そもそも、仕事に生きがいを見つけるなんて馬鹿な人は誰もいなかったもん。(笑)

ーーなるほど(笑)

仕事は生活の糧を得るための手段でしょう。そこになんで「生きがい」を求めるのか、本音を言うとわからないですよね。

だって大変に決まってるじゃないですか。嫌なことばっかりでしょう。ねぇ。

やっぱり仕事よりも「人生」を大事にした方がいいに決まってるじゃないか、という思いもどこかにあるんですよ、僕。 

ーー人生ですか?

僕の友達に大泉啓一郎(アジア研究者、経済評論家)という人がいて、カンヤダの本を読んで感想をくれたんですが。 

彼に教えてもらってびっくりしたんだけれど、「人間というのは大事なものは常に二つある」と。それは何かと言ったら、「仕事」と「人生」だと。じゃあ今の日本人はどちらを大事にしていると思いますか?

ーー「仕事」でしょうか。

そう、「仕事」でしょう?それが、カンヤダやタイの人は、「人生」なんだよ。だから、人生に対してはどこまでいっても本当に真面目なんです。かたや、仕事はいい加減なの。(笑) 

でも、本来はそういうものでしょうって彼らは思っていますよね。むしろ日本人の方が変なんじゃないですか?と。この話を聞いて、僕はちょっと目からウロコでした。

ーー鈴木さんは、仕事を生きがいにしてバリバリ働いている方、というイメージがあるんですが鈴木さん自身は人生と仕事、どちらを大事にしているんですか?

僕は、人生のための仕事だと思っていました。どこかで、仕事というのは日々の糧を得るための手段であって、本当に大事なのは人生だと思っていましたよ。

思っていたけれど、実現できたかどうかはわからない。

僕は仕事と人生の境界線を曖昧にするのが好きだから、傍から見ると僕はむちゃくちゃ働いてるように見えるんだけれど。その境界線が曖昧になっていることが、やっぱりちょっと悩みではありますね。

ーー鈴木さんもそういうことに悩まれるんですね

やっぱりもう少しね、何とかした方がいいのかともちょっと思いますよ。

ーーカンヤダは、今はフォトグラファーとしての仕事をしている、とも聞きました。

彼女がたまに送ってくれる写真がおもしろかったんですよ。そうしたら、ジブリのある人がこれを『熱風』(ジブリが発行している無料の小冊子)で連載したらどうか、と言い出して、そこからジブリ美術館の写真を撮ってもらうことになったりして。

ーー今でも強い絆があるんですね。

自分のできる範囲のことならしようと思います。幸いなことに、タイでしょう?そんなにしょっちゅう会うわけじゃないしね。(笑)

(聞き手:生田綾、田中志乃、ディスカヴァー・トゥエンティワン/林拓馬 写真:加治枝里子)


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「“いい人”じゃない役はやっていて楽しい」 殺し屋演じた福士蒼汰さんが見せた新境地

福士蒼汰さん

「最強の殺し屋」が一般人として普通の生活をするーー。「ヤングマガジン」で連載中の人気漫画「ザ・ファブル」(南勝久原作)の実写映画版が6月21日(金)、全国公開を迎える。

主人公・ファブルと対峙するフード役で出演を務めた福士蒼汰さんは、その爽やかなイメージを覆すような”悪役”を好演した。

意外にも、「いい人じゃない役の方が楽しい」と語る福士さん。2018年末には「遅ればせながら、時代に合わせて」Instagramも始めた、とも笑う。福士さんに単独インタビューした。

 

 

イメージを覆すような「悪役」

 ーー『ザ・ファブル』では、福士さんのイメージを覆すような”殺し屋”役を演じています。意識されたことはありますか?

フードは、原作を読んでもいまいち掴みどころがなかったんです。

 ただ、同じ殺し屋という立場として、映画のラストでファブルと闘うことになるので、ファブルと「対極」にいる存在であるべきかなと思って、それを見せることを意識しました。 

ファブルは殺し屋としてのプロ意識が高く、しっかり仕事を全うするような存在です。それに対して、フードはあまり仕事やプロ意識に重きを置いていない存在というか…気楽で楽観的で、ゲーム感覚で殺しをしているようなキャラクターだと思います。

江口カン監督とは、「殺し屋感は出さないようにしよう」とか、「大学生のサークルのノリでいこう」という話をしていました。

 

福士さんが演じたフード。

ーー今回のフードのような悪役は、恋愛・青春モノの”好青年”のイメージとも対極にあると思います。今の心境として、どちらがやっていて楽しい、などはありますか?

ジャンルは関係なく、やっていて楽しいのは、あんまり「いい人」じゃない役です。(笑)

ただの「いい人」だとつまらない部分もある。それに、演じることも難しいですし。

いい人の方が制限がたくさんあって、やっちゃいけないこと、守らなきゃいけないものがたくさんあります。”悪役”はそれがない。お芝居として「何でもできてしまう」というのが悪者の特権でもあるので、やっていて楽しいです。

ーー岡田准一さんとのアクションシーンはいかがでしたか。

大変でした。岡田さんが素晴らしい技術を持っていて、素晴らしいアクションをされるので、自分はそれに食らいついていくことに必死でした。

自分はジークンドー(ブルース・リーが創始した武術)とカリ(フィリピン武術)、USA修斗(初代タイガーマスク・佐山聡が作った総合格闘技流派)をやっているんですが、近距離の銃撃戦のアクションはやったことがなかったので、難しい部分もありました。

 

 

大事なのは、モチベーションを維持すること

ーー日本は平成が終わり、令和の時代に入りました。新しい時代への意気込み、などはありますか…?

 身の回りでの変化みたいなものはまったく感じていません。

「令和になったからよし頑張ろう」と、元号が変わったことを何かのきっかけとしてとらえることもできますが、自分の場合はちょっと違っていて。 

新しい時代に入っても、「相変わらずやってるね」と言ってもらえるために、今やっていることをどれだけできるか、継続できるかということが大事だと思っています。  

ーー福士さんは英語や格闘技など、ストイックに継続されていますよね。自分がやりたいことを継続させるために大事なことは何でしょうか。

モチベーションを維持することだと思います。

チャレンジしていることはたくさんあるんですが、根本にあるのはモチベーションです。「やってやるぞ」という気持ちを常に持つようにする。大変ですけど、必要なことじゃないかと思います。

そのために、熱中したい事柄とうまく距離感を持つことが大事です。近くにいる時、遠くにいる時、そのバランスを自分の中でうまく作れるといいんじゃないかな、と思います。

お芝居もそうなんですが、一つのことにずっと集中して煮詰まった状態にはならないようにした方がいいとも思うんです。違うことも大事にした方がいいですし、自分の世界を広く持つようにすることは意識しています。

  

 

『ザ・ファブル』

 2019年6月21日(金)全国公開

配給:松竹

 


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女性解放を唱えた活動家・田中美津さんを題材にした映画が製作中。映画「この星は、私の星じゃない」

■昭和の女性解放運動を牽引した伝説の活動家・田中美津さんを追う。ドキュメンタリー映画「この星は、私の星じゃない」

昭和の時代、「女性解放」を唱えて多くの女性たちから支持を得た田中美津さん。彼女のこれまでの生き様、そして、今を追いかけたドキュメンタリー映画『この星は、私の星じゃない』が制作中だ。今秋の一般公開を目指し、クラウドファンディングも行われている。

■昭和の“Me Too運動”で女性の思いを代弁

この映画は、監督を務める吉峯美和さんが、田中さんの魅力に惚れ込んだことから制作が始まった。吉峯さんが初めて田中さんに会ったのは、今を遡ること4年前。2015年にNHKで放送された「日本人は何をめざしてきたのか 女たちは平等をめざす」という戦後70年の女性史のドキュメンタリー制作にフリーの映像ディレクターとして参加したのがきっかけだった。

「戦後に活躍したいろいろな女性の方にお目にかかったのですが、田中美津さんはその中でも特別で、強く心に残りました」と吉峯さんは当時を振り返る。

田中美津さんは、今の“#MeToo運動”の先駆けともいえる、昭和の女性解放運動家のひとり。40年以上前に発行され、<言葉にならなかった>女性の思いを的確に表現した著書『いのちの女たちへ とり乱しウーマン・リブ論』は、「世界のフェミニズム名著50冊」にも選ばれている名著だ。

多くの女性たちの共感を呼んだ田中さんの「便所からの解放」

日本でウーマン・リブ運動が盛んだった1970年代当時。「女性は男性のいうことを聞いていればよい」「女性は社会に出るよりも、家で家事と子育てをしていればよい」というのが、当たり前だった。そんな中、田中さんは、女性であっても自分を大切にし、他者から尊重されるべきであると主張し、多くの女性たちの共感を得た。

「便所からの解放」──ときに、男性の性欲処理の対象と見られていた女性たちの自尊心を取り戻そうと、田中さんが書いた言葉は、時代を象徴する言葉にもなった。

■「ありのままの自分でいい」と気づかされた

ウーマン・リブのリーダーと聞くと、勇ましい女性を想像しがちだ。しかし、吉峯さんの目の前に現れた田中さんは、伝説的な女性解放運動家というよりも、自分の心に素直でかわいらしささえ感じさせる女性だった。飾り気のない言葉でストレートに思いを口にする田中さんに、吉峯さんは、しなやかな感性とおおらかな人柄を感じたという。

「田中さんは、少女のような傷つきやすい心を抱えながら、今の自分をそのまま受け入れて生きてきた人。その頃、自分自身もどこかに“生きづらさ”を感じていた私には、“ありのままの自分でいいんだよ”と教えてくれる存在でした」

田中美津さんの「今」、そして「過去」を映像に残したい

今年76歳となった田中さんは、八王子市に開業する治療院「れらはるせ」で、鍼灸師として現役で働いている。ほかにも、さまざまな講演活動やライフワークでもある沖縄の基地問題にも精力的に取り組むなど、今なお忙しい日々を過ごしている。

そんな田中さんの「今」を映像に残したい。生の言葉を多くの人に伝えたい──。

心の内から湧き上がる強い気持ちでカメラを抱え、吉峯さんが田中さんの日常を追いかける3年にも及ぶ日々が始まった。ときに治療院で施術の様子を、ときに沖縄への旅に同行しながら。田中さんの過去や現在、そして人々との交わりを丁寧にカメラは追いかけていく。

現在は、鍼灸師として多くの人の施術にあたる田中さん

田中さんの治療院には、心が疲弊してうつ症状に悩む人も多く訪れる。彼らの話にじっくりと耳を傾け、言葉をかけながら行われる施術。施術はときに4時間に及ぶこともあり、そのひとりひとりに真摯に向き合う。施術後、体と心を癒やされて明るい表情で治療院をあとにする患者たち。カメラが映し出すのは、そんな患者たちをいたわり続ける田中さんの手だ。

■深い傷を抱えた沖縄の心に寄り添う

 田中さんがライフワークとして、頻繁に沖縄へと足を運ぶようになったのは、1枚の写真がきっかけだった。戦後の沖縄で倒れている女の子を米兵が取り囲んで見下ろしているモノクロ写真だ。

 「これを見たときに、私は、これまで沖縄のことを何も知らなかったという思いにかられて、居ても立ってもいられなくなってしまった」と、沖縄の基地問題に揺れる辺古野に深くかかわるようになったという。

 映画では、そんな田中さんの沖縄への旅の様子も収められている。

「沖縄では、聖地といわれる久高島を訪れたんですが、そのときの光景がとても印象的でした。海辺の朝日の美しさと田中さんの佇まいがオーバーラップして、なんともいえぬ神々しさがあり、とても美しかったですね。ぜひみなさんにも、その映像を観ていただきたいと思っています」(吉峯さん)

沖縄・久高島で海辺の朝日に向かう田中さん

■自分を全肯定することで、生きやすさが見えてくる

 幼少時に受けた性的に嫌な思い出、社会に出て目の当たりにした女性であることの差別。そして、それと戦い続けた日々。そんな田中さんの人生は「生きづらさ」を感じる自分をまるごと肯定することで、乗り越えてきたもの。

 「“自分以外の何ものにもなりたくない”と、田中さんは語っています。誰もが、“どうして自分だけがこんなつらい目に遭うのだろう”と思うことがあるでしょう。私自身、田中さんと話している中で、自分の中に“膝を抱えて泣いている少女”がいることに気づかされました。自分で気づかずにいた痛み、人生への迷いがあったからこそ、田中さんの言葉に心を大きく動かされたのだと思います」(吉峯さん)

 今の自分を認めて、生きる。

「そのうえで、今いる場所が自分のすべてを受け入れてくれるとは限らないという、ある種のあきらめを持つことも必要。そこに気がつけると、ふっと生きることが楽になるんです」と、田中さんは語っている。深い孤独と痛みを抱えながら、なお、しなやかに生きる強さ。

 「この星は、私の星じゃない」──。

映画タイトルにもなったこの言葉には、田中さんのそんな思いが込められている。

生きることの孤独、痛みを抱えながらも、「生きやすさ」を見つけられるという田中さん

「今の環境に馴染めなかったり、生きることがつらいと感じたりしている人は、世の中にたくさんいます。それが何なのか、どうしたらこのモヤモヤとした生きづらさを超えられるのか。この映画から、そのヒントを見つけてもらえると思います」(吉峯さん)

 映画公開に先駆けて、5月には田中さんの著書『この星は、私の星じゃない』(岩波書店)が出版。7月3日には、渋谷で映画の完成披露試写会が開かれることが決まった。スクリーンに映し出される田中さんの3年の日々は、誰の心にも生きる勇気を与えてくれるだろう。

 吉峯さんは7月9日まで、映画制作費の一部をクラウドファンディングで募っている。詳しくはこちら

(工藤千秋)


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『アナと雪の女王2』の日本版特報が解禁 真っ暗な海面を走るエルサの姿も…(動画)

「アナと雪の女王2」日本版特報より

ディズニー映画『アナと雪の女王2』の日本版特報が公開された。ディズニーが公式サイトやYouTubeで6月18日に公開した

同作品は、2014年3月に日本で公開された『アナと雪の女王』の続編。

今回公開された映像は、監督のクリス・バック氏とジェニファー・リー氏のメッセージ付き。前作では主題歌「Let It Go(ありのままに)」が世界中で大ヒットとなったが、新作でも新しい楽曲が登場すると予告している。

これまでに公開されたポスターなどからも、新作では、触れるものを氷に変えてしまうエルサの魔法の力の秘密が焦点となりそうだ。

新たに公開されたシーンでは、舟に乗ったアナとオラフが滝に落ちる場面や、決意を秘めた表情のエルサが荒れ狂う海面に向かって走り出す場面などが次々と映し出される。

「約束して。何があっても私たちは一緒よ」と語りかけるアナの言葉も印象的だ。

「アナと雪の女王2」は11月22日に日米同時公開される。


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『千と千尋の神隠し』の中国版ポスターが美しい。「センスの塊としか言い様がない」と話題に

宮崎駿監督のアニメ映画『千と千尋の神隠し』が6月21日から中国で初の劇場公開されるのに合わせて、公式ウェイボーで新作ポスターが発表された。

「日本のアニメなのに日本のポスターよりすごい」「センスの塊としか言い様がない」とネット上で話題になっている。

黄海さんがデザインした最新版のポスター。中国版の「千と千尋の神隠し」の公式ウェイボーより黄海さんがデザインした最新版のポスター。中国版の「千と千尋の神隠し」の公式ウェイボーより

 ■18年を経て中国で公開

「千と千尋の神隠し」日本などで2001年に公開され、アカデミー賞の長編アニメ賞やベルリン国際映画祭の金熊賞に輝くなど、世界中で人気を博した。18年を経て、ようやく中国本土で上映されることになった。

一方で、中国本土では、これまで政府が海外映画の上映を制限してきたため、ジブリ映画の正式上映が遅れていた

スタジオジブリ作品が中国本土で上映されるのは、2018年12月の『となりのトトロ』に続いて2例目。

■『万引き家族』などのポスターも手がけた黄海さんのデザイン

13日に公式ウェイボーに投稿されたのは、黄海さんがデザインした最新版のポスター2種類。黄海さんは是枝裕和監督の映画『万引き家族』や、『となりのトトロ』のポスターデザインを手がけたことでも知られている。

1枚には劇中に登場する無数のキャラクターが描かれた壁の前にしゃがみこむ、主人公の千尋の姿に、「自分を失わないで」という言葉が添えられている。

もう1枚には「振り向いちゃいけないよ」という文章とともに、水の中の線路を走る千尋が描かれた。どちらも劇中のイメージに合った幻想的な出来映えとなっている。


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ViViの自民党キャンペーン「#自民党2019」は、読者への裏切りではないのか。 元編集スタッフの私が感じたモヤモヤ。

『ViVi』が自民党とタイアップ?

 朝起きると「『ViVi』が自民党とタイアップ」という記事が目に入ってきた。瞬間、何かの間違いじゃないかと思った。『ViVi』と自民党があまりにかけ離れていて、モデルたちの笑顔と自民党とのむすびつきに、違和感があったからだ。

私は1988年から2004年まで『ViVi』編集部にフリーランスのファッションライターとして在籍し、表紙や巻頭ページをはじめとしたファッションページを担当していた。

『ViVi』は『JJ』『CanCam』に代表される“赤文字雑誌”の三番手としてスタートした。講談社は後のりがうまい会社だ。『MORE』が出ると『with』、『POPEYE』が出たら『Hot-Dog PRESS』、『FOCUS』が出たら『FRIDAY』。そういうある種のうまさがあって、プライドよりも実を取る、いい意味で節操がない、そんな社風も嫌いではなかった。

当時から会社に掲げてあるモットーがあった。「おもしろくて、ためになる」。フリー編集者として今でもこの言葉を心に刻んでいる。

さて、今回の問題。私が感じた気持ち悪さとはなんだったのか。

以下、私のTwitterから。

私が作りたかったViVijは、女のこがファッションで自己主張して、いろんなことに関心を持って、人生の一番輝かしい季節を楽しむ雑誌。”社会のことを考えよう”、”動物保護”とか”権利平等”とか語るのはいいけど、政党支持に繋がることは絶対違う。
まして、政党からお金をもらって記事を作るなんて、、

— sayumi gunji (@sgunji) June 11, 2019

昨日からの反響に驚いているのですが、私が言いたいことを補足すると、
1、ファション雑誌が政治について語ることは大賛成。
2、しかし、今回のような一見「みんなで社会問題について語ろう」というキャンペーンに、「#自民党2019 」とあって、よくみると自民党のタイアップだった >続きます

— sayumi gunji (@sgunji) June 11, 2019

3,#PR と書いてあるということは自民党から一定の広告料金が支払われている
4、参院選前のこの時期に、読者にバイアスをかけてしまうこと
5、ファッション雑誌もメディアとしての矜持を持つべき
6,いち政党の「若者を取り込んでおけ」的な流れに利用されている
7、しかもモデルを使って
>続く

— sayumi gunji (@sgunji) June 11, 2019

8、モデルたちはこのことを自覚しているのだろうか?
9、政治をファッション雑誌が語るなら、もっとかっこいいやり方があったはず
10,編集者も悩んだと思うけど、それを通してしまう会社のゴリ押し感が見え隠れする
です。
私自身、アンチではないけどこのやり方で自民党を嫌いになりそう。
以上。

— sayumi gunji (@sgunji) June 11, 2019

 なぜ自民党とのタイアップを決めたのか

 確かに雑誌の広告収益は毎年下がる一方だ。私が在籍していた2003年当時の『ViVi』は最高50万部を発行していた。表紙の常連は浜崎あゆみや安室奈美恵。

日本の雑誌の総売上がピークを迎えた頃だ。1号あたりの広告費は数億円になることもあり、“赤文字雑誌”はまさに出版社のドル箱だった。しかし、2009年以降スマホが普及し、TwitterやInstagramなどのSNSが雑誌の役割を奪うと、雑誌の部数は減少する一方になり、当然広告収益も下がった。

18歳選挙権が実現したいま、若者ターゲットを伸ばして、SNSで支持層を獲得したい自民党からタイアップ広告記事のアプローチがあれば、それは美味しい案件だったと想像に難くない。

今回モデルたちには、ViVi girlというインフルエンサーたちを起用している。私が今まで他媒体で経験している例で考えると、この規模でも大体グロスでトータル800-1000万円くらいの広告料だったのではないかと推測できる。

では、『ViVi』=講談社は金額で自民党とのタイアップを決めたのだろうか?

上記Twitterで指摘しているように、私は「1. ファション雑誌が政治について語ることは大賛成」だ。ミレニアルズと呼ばれる20代女性たちにもっと政治的関心をもち、語り合える場所がファッション誌発信でSNSで広がれば、もっと選挙に参加する若者が増えるのではないか。ローラや渡辺直美など自分の意見をはっきりSNSで発信するロールモデルも出て来ている。

ただし、これが「#自民党2019 をタグつけしてね!」だから、私はモヤモヤしてしまったのだ。

やるなら「覚悟」を持って欲しかった

 雑誌には、編集部が自分たちで企画して考える「オーガニックな記事」と、お金を出す企業や団体の意向を聞きながらつくる「タイアップ広告記事」がある。タイアップ広告記事では、たとえば、モデルたちが企業の商品を紹介することで企業からスポンサー料をもらう。最近では雑誌だけでなくInstagramなどでも見られる広告手法だ。

今回の自民党の企画は後者の「タイアップ広告記事」だ。ここで登場しているViVi girlsたちも報酬をもらって投稿する#PR記事に慣れていて、メイクアイテムの宣伝をするように、今回の仕事を受けたのかもしれない。

このタイアップ広告記事では、「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」というタイトルがつけられ、ViVi girlの楽しそうな表情の写真が並ぶ。彼女たちやこの記事に関わったスタッフに対して、きちんと編集部からの説明を受けないまま、議論を経ることなく仕事を受けているでのはないか? だからこそ、編集部の罪は重いように感じる。

そして、何よりも釈然としないのは、彼らが読者や社会に対して、きちんと説明責任を果たせていないということだ。講談社は「政治的な背景や意図はまったくない」と言った

自民党とのタイアップに政治的背景がない、というのであれば、講談社は自民党を政治団体と認めていないことになる。あまりに稚拙な釈明を読み、これを書いた人の顔を想像し、嘆息をする。編集部なのか、会社なのか、この程度の浅さなのだ。

一般的に雑誌では、編集部の責任者がオーガニック記事とタイアップ広告記事の両方をチェックしている。今回の企画の意図や、社会からの反応もある程度予想できたはずで、編集者であればこのタイアップが出ることの反響も分かって腹をくくっているべきではないか? そのくらいの気骨を持ってこのタイアップを受けたのなら、それはそれで編集部の意思を感じるが、この釈明からはそのような思いの一つも見えてこない。やるなら、覚悟を持ってやって欲しかった。

『ViVi』が好きだから『ViVi』の情報を信じる読者がいる

 大好きな『ViVi』を編集していた当時の私たちが一番大事にしていたのは、今を生きる女の子たちにたくさんの選択肢を与えることだった。ファッションで変われること、好きなメイクで変われること、恋人を選ぶこと、仕事を選ぶこと、人生を選ぶこと。全てを能動的に、人生で一番輝いている20代を一緒に楽しめる雑誌でありたいと思っていた。

雑誌は毎号750円という金額を出してくれる読者によって支えられている。そこには『ViVi』が好きだから『ViVi』に掲載されている情報を信じる、というロイヤリティが高い読者との蜜月が存在している。

だから作り手にも強い矜持があったのだと思う。 

なのに、今回『ViVi』はそれを捨ててしまった。

きちんと説明責任も果たさぬまま、読者に政党の支持を促すようなことをしてしまった。

タイアップの広告費で講談社が手にしたものは金額では大きかったが、『ViVi』読者との関係に泥を塗ってしまった罪は重い。

 20代を甘く見てはいけない

 雑誌は部数売上ではとても維持できないメディアだ。だからこそ広告が必要になり、時にはクライアントに寄りそわなくてはならない。だからと言って、この参院選前の明らかに政治的にバイアスがかかるような時期に読者を誘導をしてはいけないのだと思っている。 

20代を甘く見てはいけない。年金も期待できない、低賃金で、ジェンダーギャップ110位の国に生きる彼らは、私たち以上にこれからの日本を憂いている。思っている以上に国や社会自体に期待を持てない若者は多い。それを「おしゃれな見た目でTシャツプレゼントでもすれば、乗ってくるよな」みたいなこのタイアップの画面が気持ち悪い。

「オンナ・子ども」といまだに政治家は、私たちをバカにしているように思える。あるいは読者を軽んじていたのは、『ViVi』編集部だったか。

私たちが絶対やりたくなかったことを今の講談社はした。

とはいえ、現場の元仲間の編集者たちは悩んでいるのだと信じている。

大げさに聞こえるかもしれないけど、大きな出版社が、大きな資金力を持つ大きな政党と組むことはプロパガンダと言われても仕方がない。

今回のことをちゃんと声を上げて、ダメ!と言わなくては、本当にこの国は若者にとって夢もない国になってしまう。

この一件をちゃんと考え、ここから議論を始めよう。

じゃあ、どうやったら『ViVi』読者が政治に関心を持つのか? こんなやり方じゃないところから会話を始めるのが、読者との関係を修復する最善の手段だと思っている。

雑誌が売れない時代だからこそ、今ある読者との信頼関係を取り戻さなくてはならない。

今でも私は『ViVi』と『ViVi』読者を愛している。


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