飛行機



着陸時の「ドシン」と「ソフト」はどっちがいいの? 都市伝説の答えは…

飛行機に何度搭乗しても、離陸時と着陸時の緊張感は特別です。特に着陸時に何百トンもの機体が無事に接地した時は安堵感に包まれます。機体が滑走路に接地する瞬間の「ドシン」と「ソフト」について都市伝説があるのを知っていますか?

元日本航空機長・杉江弘さん(DC‐8、ボーイング747、エンブラエルE170に乗務し、2011年にはボーイング747の飛行時間最多の功労によりボーイング社より表彰)に着陸時の”正解”を伺いました。

元はハードランディングの「言い訳」…?

Q都市伝説が生まれた背景は

「昨年、あるテレビ番組で大手航空会社の代表として出演した機長が、『着陸はソフトでなくドシンと接地するのが正解』と解説してスタジオをどよめかしていました。あるジャーナリストや編集者との懇談でも同様の話題になり、その際に『着陸はドシンがいい』が都市伝説化していると言われ、驚きました」

Q最終着陸態勢でパイロットがすることは

「パイロットは着陸最後の数秒間のフレアーという機首の引き起こし操作によって、いかに機体をスムーズに接地させるかという技術が問われ、訓練でももっとも多くの時間をかけています。スムーズに接地することは単に乗客への安心感と快適性を与えるだけでなく、機体に与える衝撃を少なくして、機体の損傷などのトラブルを防ぐ目的があるのです」

Qなぜ「ドシン」と接地する着陸のほうが良いという話が広がったのですか

「20年ほど前からパイロットの間には、ハードランディングをしたときにCAへの『言い訳』のように語る風潮が生まれ、それをCAたちが知り合いなどに話したことを通して、いつの間にか世間に広まっていったと思われます」

Q「ドシン」が一人歩きする理由は

「スムーズな着陸ができなかった際に使われる言い訳は、『ドシンと定点に着陸をしたほうが残りの滑走路の距離が残り、オーバーランの危険性が少なくなる』という理屈です。

定点着陸を優先させるか否かは、滑走路の状態や天候などを考慮して、機長判断で十分対応できます。この場合の定点とは、滑走路端から300m地点から500m付近までを指します(公式には着陸帯は1000mまで)」

Q「ドシン」は航空技能審査も関係しているとか

「以前は、航空技能審査において何回かの着陸を通して、たまに着地点が延びても、着陸操作全体を見て安全な技術を持っていると判断できれば合格とされてきましたが、最近では着陸帯を少しでも超えてしまうと不合格とされる例が増えています。ですが定点着陸にこだわるとハードランディングになりやすいことは明らかで、いたずらに機材に衝撃を与えることは得策ではないと私は考えています」

Q世界の航空業界ではどうなっているのでしょうか

「パイロットとして永年、大型航空機を操縦してきた経験から言うと、着陸には『ドシン』と接地するほうが良いということは飛行マニュアルのどこにも記されていません。また世界の航空界では現在でも『着陸はソフトに』というのが常識だと思います」

Q滑走路の長さと関係するのですね

「羽田空港をはじめとする大空港の滑走路は3000m前後の長さがあり、十分な余裕があるので心配はありません。管制官からかなり手前のところから誘導路に出るように協力を求められているほどです」

Q「ソフト」が良い理由はほかにもありますか

「整備コストの節約にもつながります。CAのケガの防止にもプラスに働くと思います。意外と知られていませんが、CAの座るジャンプシートは薄く、衝撃に弱いつくりなんです。そのためハードランディングによって、腰や首を痛めて病欠になる事例も少なくありません。これも航空会社にとって損失となるはずです」

Q風が強い、強い雨が降っているなど悪天候時の着陸について

「滑走路が雪などで滑りやすいときなどは、できるだけ定点に着陸させたほうが良いのは、以前から常識でもあり異論はありません。その定点着陸をどんな空港の滑走路でも推奨するというのが最近の趨勢となっています。しかし、航空機の性能上、地面がドライ(乾いた状態)の滑走路では定点にこだわらず、多少接地帯が延びてもその間の減速効果もあり、接地後すぐに停止できるものなのです」

Q日本人パイロットの着陸技術は?

「私は長年にわたって、外国人パイロットの教育などもしてきました。なかでもアメリカ人パイロットが一番優秀でした。日本人は動体視力が劣っていることが多く、近年、計器に頼って外の景色を良く見ない傾向が見られ、その結果、ハードランディングになることが増えているように思います。もっと五感を使って技術を伸ばしてほしいですね」


何百人もの乗客乗員と荷物を乗せた大きな鉄の塊が、滑走路に無事着陸した時の安堵感は誰しもが抱くものです。旅客機の安全、安心という観点から「ドシン」「ソフト」について、いま一度議論を尽くしてほしいものです。

(2018年5月6日ウェザーニュース「都市伝説? 着陸時の『ソフト』と『ドシン』はどっちが正解!?」より転載)

【関連記事】



No Picture

ファーストクラスへ“格上げ”されたかったら、どんな洋服を着たらいい?キャビンアテンダントの意見は…

イメージ画像

一度は乗ってみたい、飛行機のファーストクラス。

ファーストクラスへのアップグレードを手にするために、洋服は関係あるのだろうか。

キャビンアテンダントたちが、ファッションサイト「Who What Wear」に語った情報によれば”アップグレードのために着るべき洋服”と言うのは存在するらしい。

彼らは、洋服でアップグレードのチャンスが「間違いなく増える」と述べる。ただ残念ながら、それは楽ちんな服装ではなさそうだ。

アップグレードのチャンスを増やす服装、それは「おしゃれだけど控えめ」で「旅慣れしている」格好だ。

頭からつま先までデザイナー・ブランドに身を包む装いはお勧めしていない。勧めているのは、Zaraの常連客のような格好。女性ならおしゃれできちんとしたパンツとブレザー、男性ならチノパンのシャツの組み合わせといった装いだ。

また、ジーンズやジョガーパンツ、くたびれたトレーナーは避けた方が良いとキャビンアテンダントの一人は言う。ただ、長距離飛行の場合は、上品さより快適さを求めてもいい。

反対意見もある。ファースト・クラスやビジネスクラスをよく利用しているトラベルブロガーのギルバート・オット氏は、洋服で座席がアップグレードされるとは思わないとハフポストUK版に述べた。

「アップグレードはコンピューターによる操作です。もしくは予約会社が他の乗客のために誰かの席を移動させるとか、オーバーブッキングといった理由で行われます」

「とはいえ、私は洋服を気をつけてはいます。大体いつもストレッチジーンズかズボンに、Tシャツとブレザーをあわせ、Vansのようなスリッポンシューズを履いています。だけど、洋服が理由でアップグレードしてもらったことはないし、アップグレードされている人を見たこともない」

オット氏が考える、アップグレードのコツとは?マイレージを使ってのアップグレードできればいいが、それができないなら、こんな方法をお勧めする。

「自分の乗る飛行機がオーバーブッキングされているのであれば、次のフライトへの変更を自ら申し出ましょう。混んでいるフライトを選ぶのと、いつも同じ航空会社を選ぶのが大切。忠誠心が何より大事な要素です」

ハフポストUK版の記事を翻訳しました。


CLOSE
CLOSE